海外派遣者の社保取扱い(3)協定相手国の年金を申請する際の留意点

 先日より短期連載をしている「海外派遣者の社保取扱い」ですが、第3回目は前回2010年3月6日のブログ記事「海外派遣者の社保取扱い(2)社会保障協定とは」で取り上げた「社会保障協定」(以下、「協定」という)を締結している国の年金を、実際に申請する際の留意点についてお話します。


 まず日本に在住している者が、協定相手国の年金を請求しようとする場合、協定締結以前は、直接相手国の実施機関へ申請しなくてはなりませんでした。しかし、協定の締結により、日本の年金事務所へ申請書類を提出することができるようになりました。この場合、申請書類は日本年金機構本部を経由して、協定相手国の実施機関に送付されることとなります。ここで注意すべきなのが、年金の消滅時効です。日本の年金制度における消滅時効は5年であるため、手続きが遅れた場合でも、原則として5年まで遡って受給することができます。しかし、協定相手国の年金制度によっては、過去に遡って受給することができない場合もあるため、受給権が発生したら早めに申請する必要があります。


 次に協定相手国の年金の受取方法ですが、協定相手国の実施機関の年金支給の取扱いによって異なり、多くの場合、振込や小切手等の郵送という手段が取られます。例えばドイツの場合は、毎月1回支払いが行われ、日本に在住している者については、以下の3通りの方法から選択することができます。
日本円による、日本国内の銀行口座への振込み
ユーロによる、ドイツ国内の銀行口座への振込み
ユーロ、米ドル、または日本円の小切手による日本の住所への郵送


 最後に、現在も協定相手国に在住しているなど、日本の年金事務所でなく、協定相手国の実施機関に直接年金を申請する場合があります。原則として、協定相手国の年金申請書を提出しますが、中には日本の年金加入期間の証明が必要となることがあります。その際は「保険期間確認請求書」を添付することにより、協定相手国の実施機関が日本年金機構に確認を行ないます。その後、日本年金機構からの回答により、協定相手国の実施機関は年金の支給決定を行い、年金の支払いを行うこととなります。


 以上、これまで数回にわたって海外派遣者の社会保険の取扱いについてお話してきましたが、次回からは、海外派遣者の労働保険の取扱いについて取り上げます。



関連blog記事
2010年3月6日「海外派遣者の社保取扱い(2)社会保障協定とは」
https://roumu.com
/archives/51702751.html

2010年2月27日「海外派遣者の社保取扱い(1)健康保険・厚生年金保険の適用」
https://roumu.com
/archives/51701697.html

2009年7月25日「今年6月にチェコ共和国との社会保障協定が発効」
https://roumu.com
/archives/51593122.html

2007年12月3日「カナダとの社会保障協定 平成20年3月より発効」
https://roumu.com
/archives/51184510.html

2007年7月13日「海外派遣者の社会保険・雇用保険・労災保険の取り扱い」
https://roumu.com
/archives/51017702.html


参考リンク
厚生労働省「社会保障協定」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/shakaihoshou.html
日本年金機構「社会保障協定」
http://www.nenkin.go.jp/agreemant/index.html


(佐藤浩子)


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