未払い残業代を精算支給した場合の所得税の取り扱い

 2010年11月13日のブログ記事「「景気低迷で減少も依然として高水準にある賃金不払残業の労基署是正指導の状況」でもご紹介しましたが、未払い残業問題は依然として人事労務の大きな問題となっています。労働基準監督署の是正勧告などに基づき、実際に未払い残業の存在が明らかとなり、遡及して支払うこととなった場合に問題となるの源泉所得税の問題です。この取り扱いに関しては、国税庁のタックスアンサーに記載がありますので、逆に払いすぎた給与の返還を受けた場合とあわせてご紹介しましょう。



[残業代の追加支給があった場合]
Q1

 当社では、過去3年間の実労働時間に基づく残業手当と実際に支払った残業手当との差額を、本年一括して支払うこととしました。この場合、残業手当の課税年分はいつになりますか。


A1
 本来各支給日に支払うべき残業手当が一括して支払われたものと認められますので、本来支給すべきであった支給日の属するそれぞれの年分の給与所得となります。なお、給与規程等の改訂が過去に遡って実施されたため、残業手当の差額が一括支給されるような場合には、その差額について支給日が定められているときはその支給日、支給日が定められていないときはその改訂の効力が生じた日となります。(所基通36-9)


[払い過ぎた給与の返還を受けた場合]
Q2
 当社の従業員Aに支給した昨年分の給与計算に誤りがあり、給与を払い過ぎていたことが判明しました。この払い過ぎた給与についての返還を本年に受けましたが、返還を受けた給与は、いつの年分の収入金額を減額すればよいですか。


A2
 昨年分の給与の収入金額を減額します。返還を受けたのは本年ですが、昨年の本来の支給日において給与を払い過ぎていたことによる給与の返還ですので昨年分の給与の収入金額を減額します。(所基通36-9)



 未払い残業問題が発生した場合には、その支払いはもちろんのこと、対応や事務手続き等の業務が発生します。まずは労働時間管理を適正に行い、未払い残業支払いのリスクをできる限り低くすることが企業に求められています。



関連blog記事
2010年11月13日「景気低迷で減少も依然として高水準にある賃金不払残業の労基署是正指導の状況」
https://roumu.com
/archives/51798199.html

2010年10月25日「監督署是正指導による未払い残業代の支払いが大幅減」
https://roumu.com
/archives/51792776.html

2010年3月26日「4月1日に改正される労働時間等見直しガイドラインのポイント」
https://roumu.com
/archives/51712938.html

2009年10月26日「平成20年度のサービス残業是正支払額は1,553社で196億円」
https://roumu.com
/archives/51642201.html


参考リンク
国税庁(タックスアンサー)「No.2509 給与所得の収入金額の収入すべき時期」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2509_qa.htm


(宮武貴美


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