飲食店店長労務管理超基礎【第4回】飲食店店長ならば外国人労働者活用のポイントを理解する

 飲食店においては、少数の社員と多くのパート・アルバイトで店舗が運営されていることが通常です。しかし、昨今は少子化・労働力人口減少の流れを受け、パート・アルバイトとして採用できる労働者の絶対数が減少しており、採用に苦戦する飲食店が増えています。パート・アルバイトを採用できなければ、社員への負担が増加し、社員の長時間労働という問題も招くことにもなり、最終的には店舗運営が滞り、店を閉めざるを得ないといった問題にまで行き着いてしまうこともあります。そこで多くの飲食店が考えるのが、外国人労働者の活用です。しかし、入国管理法などの知識もなく、日本人と同様に考えるのはトラブルの元となります。以下では外国人労働者活用の際の基本ポイントについて解説します。


 外国人労働者の採用でもっとも経営者の頭を悩ませるのは、「どのような外国人労働者を雇ってよいのかよく分からない」ということでしょう。この点に関する最重要ポイントは、その外国人の在留資格を確認するということとになります。我が国の外国人労働者に対する基本的な姿勢は、専門人材は積極的に受け入れ、単純労働者は原則受入れないとされていますので、それぞれの状況について見ていきましょう。
専門人材
 専門人材については、2011年2月18日の東京地裁判決(中華料理の専門的な技能があることを理由に在留資格を得ていた中国人男性が、ラーメン店勤務を理由に資格を取り消されたのは不当だとして国を相手に行った訴訟で勝訴)が話題になりましたが、専門的な技能を有し、飲食店で調理を行うような専門的な人材は「技能」の在留資格を有しています。しかし、本国で数年にわたる飲食店勤務が求められるなどその条件は厳しく、飲食店においては日本人を雇用するよりもハードルが高いというのが実体です。よって多くの飲食店における外国人労働者の活用といえば、ほとんどがパート・アルバイトなど単純な業務となるでしょう。


単純労働者
 飲食店でパート・アルバイトとして働くことができる在留資格は「永住者」「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」の4つと、あとは資格外活動許可を受けた「留学生」が挙げられます。外国人をパート・アルバイトとして採用しようとする場合には、必ず在留資格を確認し、これらいずれかであれば働かせることができると思っておけばよいでしょう。もしも在留資格を確認することなく外国人を採用して、外国人を不法就労させてしまうと、不法就労助長罪として3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(入管法73条の2)とされることがあります。採用面接の際には、必ずパスポート、外国人登録証明書、資格外活動許可書の原本で在留資格と在留期間を確認するようにしてください。ただし、この資格外活動許可を受けた「留学生」については、本来の来日目的以外で働いているため、就労可能時間について、1週間28時間以内、長期休業期間中は1日8時間以内という制限(入管法施行規則19条5項)があります。例え本人が望んだとしてもこの時間以上働かせることはできませんので、シフトを組む際には注意が必要です。


 これらのことを理解しておけば外国人労働者の採用を進めることができますが、同じく重要なのはその後の活用です。外国人労働者を活用する際には、「外国人労働者は日本人ではない」という当たり前の事実を意識することが求められます。すべての店長は「忙しければお互いに助け合ってうまくお店を回していこう」と考えますが、こうした考え方はなかなか通用しないことが多いようです。外国人の場合は、自分の役割を果たすことが仕事という認識が強いので、他の従業員が忙しくしているときは、自分の直接の役割を超えて手伝わなければならないといったことを伝えておかなければ、自分の役割だけをこなして、時間がくれば、他の従業員が忙しいのもおかまいなしに帰ってしまいます。また、多くの日本の飲食店では、仕事に入るときには「おはようございます」と挨拶をします。しかし、何も知らない外国人労働者は、「おはようございます」は朝の挨拶と習っているのでそれが理解できません。現場の責任者である店長が、外国人労働者は日本人ではないということを強く意識し、日本人の常識は外国人労働者にとっては常識ではないことを理解し、指導することが大切です。


 既に都市部の飲食店やコンビニでは、外国人労働者の活用が当たり前のようになっていますが、知らず知らずのうちに法違反を犯していたり、無用なトラブルを生んでいる例が少なくありません。まずは以上のような注意点を理解し、効果的に外国人を活用できるような環境を整備したいものです。



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(中島敏雄)


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