東日本大震災に伴う労働基準法Q&A 第2版が公開[引用・転載歓迎]
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の発生により、被害を受けた事業場においては、事業の継続が困難になり、または著しく制限される状況にあります。また、被災地以外に所在する事業場においても、原材料、製品等の流通に支障が生じるなどしています。
このため、厚生労働省では今回の震災に関連し、労働基準法の一般的な考え方などについてQ&Aを取りまとめ、3月18日に第1版を公開しましたが、昨日、この第2版が公開されました。第2版では、派遣労働者の雇用管理、解雇、採用内定者への対応、一年単位の変形労働時間制について9つのQ&Aが追加されています。以下は今回は公開されたもののうち、の一つですが内容を取り上げておきましょう。
■Q3-1
今回の震災を理由に雇用する労働者を解雇・雇止めすることはやむを得ない対応として認められるのでしょうか。
□A3-1
震災を理由とすれば無条件に解雇や雇止めが認められるものでは、ありません。また、今回の震災の影響により、厳しい経営環境に置かれている状況下においても、出来る限り雇用の安定に配慮していただくことが望まれます。
解雇については、法律で個別に解雇が禁止されている事由(例:業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)等)以外の場合は、労働契約法の規定や裁判例における以下のようなルールに沿って適切に対応する必要があります。
期間の定めのない労働契約の場合
労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています。
また、整理解雇(経営上の理由から余剰自認削減のためになされる解雇)については、裁判例において、解雇の有効性の判断に当たり、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履践、(3)被解雇者選定基準の合理性、(4)解雇手続の妥当性、という4つの事項が考慮されており、留意が必要です。
有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の場合
※パートタイム労働者や派遣労働者に多く見られる雇用形態です。
労働契約法第17条第1項では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇するこができない。」と規定されています。
※有期労働契約期間中の解雇は、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断される点に留意が必要です。
また、裁判例によれば、契約の形式が有期労働契約であっても、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約である場合や、反復更新の実態、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合は、解雇に関する法理の類推適用等がされる場合があります。個別の解雇・雇止めの当否については最終的に裁判所における判断となりますが、これらの規定の趣旨や裁判例等に基づき、適切に対応されることが望まれます。
なお、個別の事案につきましては、各都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナーにおいて、民事上の労働問題に関する相談・情報提供等を行っておりますので、必要に応じてご活用ください。
(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html)
また、今回の震災に伴う経済上の理由により事業活動が縮小した場合に、解雇をせずに、従業員の雇用を維持するために休業等で対応される場合には、休業についての手当等が支払われ、雇用保険の適用事業所であるなど他の要件を満たせば、雇用調整助成金及び中小企業緊急雇用安定助成金が利用できます。これらの助成金の詳細については、Q1-3・A1-3をご覧ください。
その他のQ&Aは以下でもダウンロードすることができます。
「平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第2版)」について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016u30-img/2r98520000017esn.pdf
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参考リンク
厚生労働省「「平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第2版)」について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016u30-img/2r98520000017esn.pdf
(宮武貴美)
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