注目の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」報告書が公開されました
精神障害の労災請求件数の大幅増加に伴い、厚生労働省では平成22年10月から「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催し、審査の迅速化や効率化を図るための精神障害の労災認定のあり方について検討を行ってきましたが、昨日、遂にその報告書が取りまとめられ、公表されました。今回はこの注目の報告書の概要について取り上げましょう。
今回の報告書のポイントは以下の3点となっています。
分かりやすい、業務による心理的負荷(ストレス)の具体例を記載した新たな心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)をまとめたこと
セクシュアルハラスメントやいじめ等が発病前おおむね6か月(評価期間)以前から続いている場合は、開始時からの行為を一体として評価するとしたこと
これまで全事案について精神科医の専門部会による合議にかけていたものを、判断が難しい事案のみに限定したこと
実務家の間で特に注目されているのは、業務による心理的負荷(ストレス)の評価基準の改定ですが、中でも労働時間に関する以下の事項は心理的負荷評価が「強」とされており、今後の労働時間管理に大きな影響を与えることが想定されます。
(1)1か月に80時間以上の時間外労働を行った
・発病直前の連続した2か月間に、1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった
・発病直前の連続した3か月間に、1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった
(2)2週間以上にわたって連続勤務を行った
・1か月以上にわたって連続勤務を行った
・2週間(12日)以上にわたって連続勤務を行い、その間、連日、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行った
(いずれも、1日あたりの労働時間が特に短い場合、手待ち時間が多い等の労働密度が特に低い場合を除く)
今回の報告書は精神障害にかかる労災の審査の迅速化や効率化を目指すものであることから、こうした形式的な基準を満たした場合には従来よりも労災認定が出易くなるのではないかと言われています。労災認定の迅速化による救済という趣旨は歓迎すべき部分もあろうかと思いますが、それにより企業の安全配慮義務違反などがより厳しく問われることは確実です。今後はこの新しい評価表に基づく、現場への労務管理の指導が求められることになりそうです。
なお、厚生労働省では、この報告書を受け、今後、精神障害の労災認定の基準を改正していく予定としていますので、当ブログでは継続的にこの内容に関し、チェックしていきたいと思います。
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参考リンク
厚生労働省「「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」報告書を本日公開」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001u5d4.html
(大津章敬)
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