精神障害の労災認定基準が遂に見直されました

精神障害の労災認定基準が遂に見直されました 精神障害の労災認定基準の見直しについては、2011年11月9日のブログ記事「注目の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」報告書が公開されました」でも取り上げているところですが、先日(12月26日)、この新しい基準が厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知されました。

 近年、精神障害の労災請求件数が大幅に増加しており、認定の審査には平均約8.6か月を要しています。今回の基準の見直しはこうした背景から、審査の迅速化や効率化を図り、精神障害の労災請求事案について、6か月以内の決定を目指すとしています。以下ではそのポイントについて見ていくことにしましょう。

 精神障害における労災認定については、以下の3つのいずれの要件も満たすことが求められています。
対象疾病を発病していること。
対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

 今回の基準の見直しでは、このうちの業務による心理的負荷の強度の判断基準の具体化がなされています。ポイントとしては、精神障害発病前おおむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務によるどのような出来事があり、また、その後の状況がどのようなものであったのかを具体的に把握し、それらによる心理的負荷の強度はどの程度であるかについて、「業務による心理的負荷評価表」を指標として「強」、「中」、「弱」の三段階に区分しています。その上で、総合評価が「強」と判断される場合には、上記2の認定要件を満たすものとしています。

 実際の心理的負荷評価表については以下のリンク先(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」平成23年12月26日 基発1226第1号)を確認して頂ければと思います。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001z43h.pdf

 ちなみに、労災認定で頻繁になる長時間労働については、発病日から起算した直前の1か月間におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合等には、当該極度の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を「強」とするとしており、従来以上に過重労働への具体的対策が求められる内容となっています。


関連blog記事
2011年12月27日「厚生労働省ワーキンググループがまとめるパワハラの定義と行為類型」
https://roumu.com
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2011年11月9日「注目の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」報告書が公開されました」
https://roumu.com
/archives/51887161.html

2011年6月28日「セクハラによる労災認定 基準見直しの方向性」
https://roumu.com
/archives/51856724.html

参考リンク
厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html

(大津章敬)

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