3年連続で過去最高を更新した精神障害の労災請求 新通達の影響はこれから
2011年12月28日のブログ記事「精神障害の労災認定基準が遂に見直されました」で取り上げたとおり、昨年末に精神障害の労災認定基準が見直されました。精神障害の労災申請については、年々注目を浴びるようになっており、毎年発表されている「脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況」と共に注目されています。先週の金曜日、それらの平成23年度の状況が厚生労働省から発表されました。
今回の精神障害に関する事案の労災補償状況にかかる発表のポイントをまとめると以下のとおりとなりますが、労災請求件数が3年連続で過去最高を更新するという結果になりました。
・労災補償の「請求件数」は1,272件で、前年度比91件の増。3年連続で過去最高。
・労災補償の「支給決定件数」は325件(同17件の増)で、過去最高。
・業種別(大分類)では、請求件数、支給決定件数ともに、「製造業」(216件、59件)、「卸売業・小売業」(215件、41件)、「医療,福祉」(173件、39件)の順に多い。中分類では、請求件数は「医療業」(94件)、支給決定件数は「総合工事業」(22件)が最多。
・職種別(大分類)では、請求件数は「事務従事者」(323件)、「専門的・技術的職業従事者」(318件)、「販売従事者」(167件)の順で多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」(78件)、「事務従事者」(59件)「販売従事者」(40件)の順に多い。
・年齢別では、請求件数、支給決定件数ともに「30~39歳」(420件、112件)、「40~49歳」(365件、71件)、「20~29歳」(247件、69件)の順に多い。
・出来事別の支給決定件数は、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(52件)、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」(48件)、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(40件)の順に多い。
今回は、新通達が出された後、初めての状況発表であり、その影響が注目されていましたが、新通達が発出されたのが昨年末であったこともあり、極端な請求件数・決定件数の増加にはなっていません。ただし、2012年4月25日のブログ記事「精神障害労災認定の新通達を解説した最新リーフレットが公開」でも取り上げたように新通達の周知が進むことで、請求件数等は増えてくることが想像されます。
精神障害の出来事別決定および支給決定件数を確認してみると、具体的な出来事として「上司とのトラブルがあった」という項目がもっとも多い202件になっています。企業の対策としては長時間労働のみではなく、このような対人関係、ハラスメントにも目を配っていく必要があるでしょう。
[グラフの解説補足]
※1 決定件数は、当該年度内に業務上又は業務外いずれかの決定を行った件数で、当該年度以前に請求があったものを含む。
※2 支給決定件数は、決定件数のうち「業務上」と認定した件数である。
関連blog記事
2012年4月25日「精神障害労災認定の新通達を解説した最新リーフレットが公開」
https://roumu.com
/archives/51926052.html
2011年12月28日「精神障害の労災認定基準が遂に見直されました」
https://roumu.com
/archives/51900102.html
2011年6月27日「脳・心臓疾患にかかる労災支給決定件数の84%は80時間以上の時間外労働」
https://roumu.com
/archives/51856370.html
2011年6月22日「精神障害にかかる労災支給決定件数と高い相関関係を持つ「職場での対人関係トラブル」」
https://roumu.com
/archives/51854929.html
2011年6月16日「精神障害にかかる労災支給決定件数 前年比1.3倍の308件と急増 意外と低い長時間労働との相関関係」
https://roumu.com
/archives/51853899.html
参考リンク
厚生労働省「平成23年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002coxc.html
(宮武貴美)
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