育児休業制度の内容と注意点を教えてください

 先日来、産前産後の基本的な知識を改めて勉強している宮田部長であるが、本日は産前産後休業の延長線上にある育児休業について、大熊社労士に質問してみることにした。



宮田部長:
 育児休業は、少子化対策として育児が必要な社員に会社が休業をさせなければならないというものでしたね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね、実務的にはそういうことになりますが、法律が目的としているところは、育児を行う労働者の職業生活と家庭生活の両立が図られるよう支援することによって、その福祉を増進するとともに、あわせて我が国の経済及び社会の発展に資することとしています。法律の話ですから、ちょっと硬い表現ですけれども。
宮田部長:
 ワークライフバランスでしたっけ?仕事と家庭との両立という言葉は最近よく耳にしますね。ところで育児休業を与えなければならないのは、産後休暇が終わった日から1年間でしたか?
大熊社労士:
 いいえ、育児休業の期間は子が出生した日から子が1歳に達する日までとなります。この1歳に達する日というのは、1歳の誕生日の前日になりますので、注意してくださいね。
宮田部長:
 1歳の誕生日までではないのですね。間違わないようにしないと(汗)。
大熊社労士:
 ただし、1歳に達する日までというのは原則で、例外として1歳6ヶ月を迎える日まで育児休業を延長することができます。その条件は、保育所に入所を希望しているものの入所できないようなケースです。また、配偶者が亡くなったり、病気になるなどの事情で1歳を超えてもその子の面倒をみることが困難になった場合も該当します。
宮田部長:
 この間に入所できる保育所などが見つかれば良いのですが、見つからない場合もあるでしょうね。
大熊社労士:
 そうですね。その場合は希望外であっても保育施設などを見つけなければならないでしょう。厚生労働省も保育所入所を希望する待機児童の数を減らすように対策を講じており、待機児童数そのものは減ってきてはいますが、まだ多数の児童が待機しているという調査結果も出ているようです。(参考リンク厚生労働省「保育所の状況(平成18年4月1日)等について」)
宮田部長:
 育児休業はパートタイマーには与えなくても良いのでしたか?
大熊社労士:
 以前はパート等の期間を定めて雇用されている者は育児休業の対象外でしたが、現在では雇用の継続が見込まれるなどの一定の条件を満たす場合には、育児休業が取得できることとなりました。具体的には、次のイ~ハのいずれにも該当する場合は育児休業の対象となります。
イ.入社1年以上であること
ロ.子が1歳を超えてからも引き続き雇用されることが見込まれること
ハ.子が1歳を超えてから1年の間に労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
宮田部長:
 なるほど、仮に正社員でなくとも入社1年以上で引き続き雇用継続の見込みのあるようなパートなどは育児休業をとれるということですね。
大熊社労士:
 はい、基本的な理解はそれでOKです。なお、次のような社員に対しては労使協定を結ぶことで、育児休業の申し出を拒むことができます。
入社1年未満の社員
職業に就いておらず子を養育できる配偶者(産前産後休業期間中の者は除く)がいる社員
休業申し出の日から1年以内に雇用契約が終了することが明らかな社員
1週間の所定労働日数が2日以内の社員
宮田部長宮田部長:
 ①~④の社員を対象外にするには労使協定が必要なのですね。ところで、先ほどから「申し出」という言葉を使われており気になっていたのですが、育児休業においても社員からの申し出が必要ということですね?
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。育児休業の申し出は休業開始の少なくとも1ヶ月前までに行ってもらう必要があります。急に申し出を受けても、代わりの人材の手配などができませんから、法律もその申し出手続きについて定めているのです。なお、1歳から1歳6ヶ月までの育児休業のいわゆる延長部分については、1歳誕生日の少なくても2週間前までには申し出てもらうことになります。
宮田部長:
 育児休業の内容はよく分かりました。ちょっとすっきりしました。
大熊社労士:
 実は、育児休業に関しては、これ以外に申出の撤回や休業期間の変更、時間外労働・深夜業の制限、勤務時間の短縮措置など関連事項がたくさんあります。これらについても知っておく必要はありますが、とりあえずはいま説明した基本的な内容を理解しておいていただければよいでしょう。
宮田部長:
 育児休業に関する規程を、就業規則とは別にしている会社が多いと聞きましたが、そうした方がよいのでしょうか?
大熊社労士:
 就業規則の中に入れてしまうこともできますが、先ほど説明しましたように内容が複雑でボリュームがあり、さらに介護休業も取り扱いが似ているためそれとあわせる形で「育児・介護休業規程」として別規程にしている会社が多いですね。なお、別規程にするとしても、育児休業は、就業規則の絶対的必要記載事項に含まれていますので、一体のものとして考える必要があります。
宮田部長:
 わかりました。ありがとうございます!


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は育児休業に関することについて取り上げてみました。再チャレンジや次世代育成支援といった政策の後押しもあり、育児・介護休業に関する法律や取り扱いは今後も改正が頻繁に行われていくことでしょう。なお、直近の育児・介護休業法の改正は、平成17年4月1日施行されていますので、みなさんの会社の規程が最新の状態になっているのかを確認してください。会社にとって育児休業による負担は重いように思われますが、その間は派遣社員を活用することも可能です。長い目で見れば、優秀な社員の離職を防止し、家庭を優先して考える若年層の採用を有利に展開できるので、会社にとってはプラスにすることができるという面もあるということをご理解ください。今後到来する本格的な人材不足時代には、これまで出産や育児などの理由で会社を離れてしまっていたような社員の有効活用が非常に重要になってきます。



関連blog記事
2007年9月10日「医療機関に支払う分娩費が少なくなるのですか?」
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2007年9月3日「出産に関する健康保険の給付について教えてください」
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2007年8月27日「産前産後休暇は社員からの請求が必要なのですか?」
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2007年4月5日「育児・介護休業規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/53549062.html
2007年4月6日「育児・介護休業に関する労使協定」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/53549165.html
2007年4月10日「育児・介護休業申出書」
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2007年4月11日「育児・介護休業取扱通知書」
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2007年4月12日「育児休業/育児のための時間外労働制限/育児のための深夜業制限/育児短時間勤務 対象児出生届」
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2007年4月13日「育児・介護休業期間変更申出書」
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2007年4月16日「育児・介護休業撤回届」
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2007年4月17日「育児・介護短時間勤務申出書」
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2007年4月18日「育児・介護短時間勤務取扱通知書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/53734603.html


参考リンク
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=1334
厚生労働省「保育所の状況(平成18年4月1日)等について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/09/tp0915-1.html


(鷹取敏昭)


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