衛生委員会ではどのようなことを行えば良いのでしょうか?

 服部印刷では現在、社内の安全衛生管理体制の見直しを行っており、これまで衛生管理者や産業医の説明を受けてきた。今回はそれに引き続き、安全委員会・衛生委員会の検討を行うこととなった。



大熊社労士大熊社労士:
 従業員が50人以上になることによって、どのような安全管理体制をつくっていかなければならないのかをしばらくお話してきました。それでは引き続き、安全委員会・衛生委員会について解説しておきましょう。
宮田部長:
 はい、よろしくお願いします。
大熊社労士:
 まず、基本を押さえておきましょう。委員会には安全委員会と衛生委員会がありますが、この委員会を設置しなければならない規模・業種は次のとおりとされています。
安全委員会:屋外的業種で50人以上、工業的業種で100人以上
衛生委員会:全業種50人以上
宮田部長:
 当社の場合、安全委員会を設置しなければならない工業的業種に該当しますが従業員が50人ですので、いまのところは安全衛生委員会を設置する必要はなさそうです。ということは衛生委員会をつくらなければならないということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。当面は衛生委員会の開催が必要ですね。将来的に従業員が100人以上となれば2つの委員会を設置することになります。
宮田部長宮田部長:
 なるほど。さっそくですが、衛生委員会の委員とはどのような者がなればよいのでしょうか。以前話のあった衛生管理者や産業医の他にどのような者を参加させれば良いのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、この委員会においては、まず総括安全衛生管理あるいは統括管理する者が議長になる必要があります。そして委員会を構成する者としては、衛生管理者や産業医を必ず入れることになっており、この他、衛生に関し経験を有する者、作業環境測定士(※任意)となっています。議長と産業医以外の者については、衛生管理者を含めて、その半数を従業員側の意向によって指定する必要があります。労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合、組合がなければ労働者の過半数を代表する者の推薦に基づいて指名を行なうことになっています。
宮田部長:
 委員会の人数については、何か定めがあるのでしょうか。
大熊社労士:
 人数は決められていません。また、委員会を設置しない場合には罰則(労働安全衛生法第120条にて50万円以下の罰金)があります。
宮田部長:
 この委員会は具体的にどのようなことをするのでしょうか。
大熊社労士:
 そうですね、健康障害を防止するための対策を検討したり、労働災害の原因や再発防止の対策を打ったりといったことが主たる役割となります。実際に従業員から意見を聞きながら、働きやすい職場環境にしていくことが何より大切ですね。また、平成18年4月1日より衛生委員会の調査審議事項が4つ追加されています。
危険性・有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること(衛生部分)
安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること(衛生部分)
長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること
福島照美福島さん:
 そうしたら健康診断についても対象になりますね。しかし、健康診断の結果はプライバシーの問題があるので、委員会のメンバーが結果を見ることに問題がありませんか。
大熊社労士:
 そうですね。どの程度の診断資料までを委員会に出すのか、難しいところです。通達(昭和47年9月18日 基発601号の1)において、「職場の健康管理対策に資することができる内容のものであればよく、受診者個々の健康診断は含まれない」とされています。やはり、健康診断については特別な配慮が必要ですね。また、上記の追加された項目③にあるように、1ヶ月の時間外労働が100時間を超えて医師による面談を行った際、その医師から講ずべき措置を指導された場合、会社としては必要に応じて衛生委員会にも報告をしておくことが望まれます。
宮田部長:
 なるほど。産業医を選任して、うまく連携をとっておくことの重要さがよく分かりました。委員会の運営に関して、この他に守らなければならないことがありますか。
大熊社労士:
 委員会は、毎月1回以上開催することになっています。そして、議事で重要なものについては記録を作成することになっていて、3年間保存することになっています。
宮田部長:
 わかりました。早速、メンバーの選定を行ない、従業員が安全な環境で健康に働けるような職場にしていきたいと思います。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、衛生委員会を取り上げてみました。ここでは、安全衛生教育について、補足しておきましょう。従業員を雇い入れた際および作業内容を変更した際には、教育を行うことになっています。実施事項については、以下の8項目が義務づけられています。
機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
作業手順に関すること
作業開始時の点検に関すること
当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
整理、整頓及び清潔の保持に関すること
事故時等における応急措置及び退避に関すること
前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項


 ただし、労働安全衛生法施行令2条3号の業種※については、上記の教育を省略してもよいことになっています。
※安衛令2条の業務区分
1号 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業
2号 製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業
3号 その他


 また、近年、勤務形態として増えている在宅勤務についても労働安全衛生法が適用となり、安全衛生教育を行なう必要があります。在宅勤務を行なう労働者の健康保持に努めるにあたっては、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日 基発0405001)等に留意する必要があり、労働者にもこの内容を周知しておくことが求められます。


[関連法規]
労働安全衛生規則 第22条(衛生委員会の付議事項)
 法第十八条第一項第四号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。
一 衛生に関する規程の作成に関すること。
二 法第二十八条の二第一項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
三 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
四 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
五 法第五十七条の三第一項第五十七条の四第一項 の規定により行われる有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
六 法第六十五条第一項又は第五項の規定により行われる作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
七 定期に行われる健康診断、法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行われる臨時の健康診断、法第六十六条の二の自ら受けた健康診断及び法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
八 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
九 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
十 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
十一 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。


労働安全衛生規則 第23条(委員会の会議)
 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。
2 前項に定めるもののほか、委員会の運営について必要な事項は、委員会が定める。
3 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によって労働者に周知させなければならない。
一 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
二 書面を労働者に交付すること。
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
4 事業者は、委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存しなければならない。



関連blog記事
2008年3月17日「産業医にはどのような役割があるのですか?」
https://roumu.com/archives/64852408.html
2008年3月10日「衛生管理者が長期で休んでしまったら、どうすれば良いのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/64834167.html
2008年3月3日「従業員50名以上になったときに求められる安全衛生管理体制とは?」
https://roumu.com/archives/64834156.html


参考リンク
厚生労働省「改正労働安全衛生法」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/060401.html
厚生労働省「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/03/h0305-1a.html
香川労働局「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
http://www.kagawa-roudou.jp/jigyousya/5-5.html
厚生労働省「在宅ワークの適正な実施のために」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/josei/zaitaku/index.htm


(福間みゆき)


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