雇用保険の失業手当はどのような人がもらえるのですか?

 社労士として開業してからなかなか長期の休みは取れない大熊であるが、今回のお盆休みは5連休を取ることができ、ゆったりした気分で過ごすことができた。



福島さん:
 大熊先生、こんにちは。
大熊社労士:
 こんにちは。お盆休みはどこか出かけられましたか?
福島さん:
 はい、両親と一緒に父親の故郷へ帰省しましたよ。久々に会う親戚と楽しく過ごすことができました。
大熊社労士:
 そうでしたか、リフレッシュできましたね。
福島さん:
 えぇ・・・、まぁ・・・。
大熊社労士:
 おやっ?どうかしましたか?
福島照美福島さん:
 実は、親戚の一人がこの不況でリストラにあってしまったということで・・・、なんか大変なんだなぁと実感したんです。そのときに「失業手当をもらって頑張るぞ!」とその親戚が言っていたのですが、ふと考えると、私は高校を卒業してすぐに当社に入社したので、雇用保険の仕組みは知っていても、どうやって失業給付をもらうかって分からないなぁ、なんて仕事のことを思い出してしまったんです。
大熊社労士:
 おやおや、仕事熱心ですね(笑)。
宮田部長宮田部長:
 福島さん、自分で失業保険をもらって、実践で勉強しようってのはなしだからね!
福島さん:
 はい。大熊先生、宮田部長もそう言っていますので、教えていただけませんか?(笑)
大熊社労士:
 分かりました。それでは順番に説明していきましょうね、雇用保険の給付には色々ありますから、まずは基本手当の仕組みから説明していきましょうか。
福島さん:
 大熊先生、福島さんのためにも基本的なところからお願いしますね。
大熊社労士:
 そうですね、宮田部長のためにも基本的なところから進めましょう(笑)。
宮田部長:
 よろしくお願いします!
大熊社労士:
 まず雇用保険には「失業等給付」という括りがあります。この中には失業をした場合に受けられるものをまとめた「求職者給付」や労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に受けられる「教育訓練給付」などがあります。一般的に「失業手当」と呼ばれることが多いのが、求職者給付の中の「基本手当」というものです。
宮田部長:
 失業手当って正式名称ではないんですね。
大熊社労士:
 はい、そうなんです。基本手当という表現はなんとなく違和感があるのでしょうね、私も一般的な説明のときは失業手当と言っていますよ。
福島さん:
 確かに何の基本なんだろうって思いますね(笑)。
大熊社労士:
 あはは、確かにそうですね。さて、この基本手当ですが受給するためには失業者が自らハローワークに出向く必要があります。
福島さん:
 そのときに私がいつも作成する離職票を持っていくのですよね。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、そうですね。離職票の賃金額を記載する書類は3枚複写ですよね。1枚目は事業主控、2枚目は職安控、3枚目は本人交付になっています。この3枚目の離職票2にあわせて発行される離職票1と印鑑等を持って失業者がハローワークに行くことになるのです。
福島さん:
 離職票がないと、失業手当の手続きができないので、なるべく早く発行してあげる必要があるのですね。
大熊社労士:
 そうですね。離職票の発行が遅れれば遅れるほど、失業者本人が失業手当を受けられる時期も遅くなりますからね。
宮田部長:
 離職票を職安に持っていけば誰でも失業手当をもらえるのですか?
大熊社労士:
 いい質問ですね。実はそうではありません。離職票の中身になると少し話がややこしくなるのでは、その点は次回に回しましょう。失業手当を受けるためにはいくつかの要件をクリアする必要がありますが、そのひとつに失業の状態にあること、というのがあります。
宮田部長:
 会社を退職したんだから、みんな失業の状態なのではないですか?
大熊社労士:
 そうですね、一般的にはそれを失業と呼んでいるかと思いますが、実は雇用保険でいう「失業」は若干異なるのです。
宮田部長:
 ふ~ん、そうなんですね。どうなると失業なんですか?
大熊社労士:
 はい。まず就職したいという積極的な意思(気持ち)があること。そして、いつでも就職できる能力(健康状態、家庭環境等)があること。更に職業に就くことができないこと。最後に積極的に求職活動を行っている状態にあること。この4つの条件が必要になります。
福島さん:
 単純に会社を辞めたというだけではダメということですね。
大熊社労士:
 はい、おっしゃるとおりです。失業手当は次の職業に就くまでの生活の安定と再就職のための給付なので、就職の意思がないような人にまでは支給されないのです。
宮田部長:
 当たり前といえば当たり前かな。
福島さん:
 大熊先生、4つの条件を考えると、出産のために退職したような人はもらえないということになるんですよね?
大熊社労士:
 そうですね。まもなく出産するのに就職活動というのは一般的にはおかしいですよね。そのような一定の理由が
ある方については延長の申請ができますよ。
福島さん:
 もらう時期を遅らせるということですね。
大熊社労士:
 はい、そうです。その部分は次回、説明することにしましょうか。
福島さん:
 はい、よろしくお願いいします。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回の不況では、雇用調整助成金等の対策が速やかに行われたこともあり、できるだけ雇用維持に努めた企業が多く、失業者の驚くほどの急増まではいきませんでしたね。収入が途絶えた中での失業手当は、失業者にとっては非常に大きなものですから、事業所としても速やかに手続きが行えるようにしなければなりません。



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(宮武貴美)


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