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東京都産業労働局「賃金制度と労使交渉に関する実態調査」の調査結果

 少しネタとして取り上げるのが遅くなってしまいましたが、4月26日に東京都産業労働局が産業・就業構造の変動の中で、変わりつつある賃金制度と労使交渉の実態を調査した結果が発表されました。今日はそのポイントをご紹介したいと思います。

1)成果主義賃金制度導入事業所は3割、年俸制導入事業所は2割
□成果主義賃金制度を導入している事業所は31.7%。導入率は企業規模によって格差が大きい。導入した時期は、2000年以降が6割を超えている。
2)定期昇給制度は6割以上の事業所にあるが、半数は見直し予定
□定期昇給制度の見直し予定事業所は49.4%、見直し提案を受けている労働組合は31.0%。
□見直しの方向は「定期昇給の自動的昇給部分を引き下げ、職務・成果に応じた部分を増やす」が41.8%で最も多く、次いで「定期昇給制度は廃止し、成果や業績による賃金決定を考えている」が31.7%となっている。
3)賃金制度を見直したのは5割弱。見直し後の評価は労使とも不満足の方が多い
□2000年以降、賃金制度を見直したのは、事業所調査では46.5%、労働組合調査では、49.8%となっている。
□見直しの理由は「従業員の成果や業績の評価を明確にするため」が事業所調査、労働組合調査とも6割で最も多い。
・見直し後の評価は、「ほぼ満足している」のは事業所調査で35.9%、労働組合調査では26.0%にとどまり、「満足していないが現状ではやむを得ない」も含めると、労使とも6割以上が満足していない。
4)人事考課・査定は7割の事業所で行っており、過半数はほぼうまくいっていると評価
□人事考課・査定は71.4%の事業所で行っており、現在の人事考課・査定について、過半数はほぼうまくいっていると評価している。
□人事考課の方法は、「一次評価は絶対評価、最終評価は相対評価」が37.1%で最も多い。人事考課の評価基準□項目は、一部公開と全部公開を合わせて7割近くが公開されている。

 

 概ね予想通りの内容ではありますが、面白かったのは人事考課・査定に関する苦情処理制度についての設問。「苦情処理制度がない」が65.8%で、何らかの形で苦情処理制度がある事業所は全体の13.9%(105事業所)という結果となっていました。この調査のコメントとしては、苦情処理制度の導入が少ないと書かれていたのですが、私から見れば「14%もあるんだ!」といった感じ。セミナーなどではいつも「人事評価制度のユーザーは被評価者である社員。社員の納得度を高めるためには人事評価フォロー表などの仕組みが必要。」と話をしているのですが、実際にこれを導入している企業は極めて少ないのが実態です。それだけに14%というのは私には非常に多く感じられました。社員への説明責任や評価に対する納得性の確保という点から、本当の意味で人事評価を機能させたいのであれば、評価のフィードバックと同時に、苦情処理の仕組みを導入することが望まれます。要は社員を不満を聞く訳ですから、会社側としてはなかなかしんどいとは思います、是非ご検討をお勧めします。

 

 なお、より詳細な調査結果の概要についてはこちらをご参照下さい。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2005/04/60f4q201.htm

 

(大津章敬)

中小企業の育児休業に100万円の助成金~2006年度から厚生労働省方針

 今日の日本経済新聞夕刊1面に「育児休業 中小企業に支援金~厚労省来年度から取得者出れば100万円」という記事が掲載された。これによれば、厚生労働省はこれまでに育児休業の取得実績のない従業員100人未満の中小企業を対象に、新たに育児休業を取得する社員が出てきた場合に100万円程度、2人目の取得社員に関しては70万円程度を助成する制度を設ける方針を打ち出したそうだ。期間は2006年度から5年間の予定。かつては時短奨励金や中小企業基盤人材確保助成金など、比較的金額が大きな助成金が多く、「助成金バブル」のような状況になっていた時期もあるが、最近は支給額の大きな助成金の見直しが進められていた。そんな中、久し振りの給付額が7桁の助成金であり、また一定の投資というような条件も今のところなさそう。今回は育児休業というなかなか企業側でコントロールが難しい内容ではあるが、本当に価値のある使われ方をして欲しいと願わずにはいられない。


(大津章敬)

「総務・人事部門のための個人情報保護法対策」セミナービデオ 5,000円引きの先行予約を開始

20050425ビデオ 先日4月25日に名古屋商工会議所で開催しました「「総務・人事部門のための個人情報保護法対策」のセミナービデオですが、本日より受付を開始しました。今回も早期割引を設定しており、5月23日(月)までにお申し込みいただいたみなさまには、早割として5,000円引きとさせて頂きます。


 このセミナーは非常にタイムリーな内容だったこともあり、会場は超満員となりました。就業規則の具体的見直しポイントの解説もありますので、以下のような内容について疑問に思われる場合には、是非ご覧頂きたいと思います。
■採用選考時の履歴書ってどう取り扱えばいいの?
■労働者名簿や健康診断台帳は個人情報なの?
■退職者から情報の破棄を求められたときはどうすればいいの?
■懲戒処分の公表って違法なの?
■派遣社員がいるんだけど、特段の対策は必要?
■就業規則に個人情報保護法についてどう記載すればいいの?
■人事評価結果を社員に見せろって言われたんだけどどうすればいいの?
■社員から個人情報保護規程遵守の誓約書をとりたいんだけど?
■情報漏洩防止のため、社員のメールをチェックすることは問題ないの?
■労働組合に個人情報って教えていいの?


 なお、お申し込みは以下よりお願い致します。


https://roumu.com/video/video20050425.html


(大津章敬)

日産 適年の積立不足2280億円を現金で穴埋め

 今朝の日経1面のトップに「日産、企業年金に現金2280億円拠出・債務を前倒し処理」という記事が大きく取り上げられていた。同社は2004年度(2005年3月期)決算に関し、連結当期純利益が前年度比1.7%増で過去最高の5,123億円を達成したのであるが、その中から2280億円の現金を一括拠出し、企業年金の財務を健全化するそうだ。今時点では同社ホームページにこの件に関する情報が掲載されていないので、詳細は分からないが、7月に適年と厚生年金基金を柱とする企業年金制度を再編するようで、その際に信託銀行で退職給付信託を新たに設定するという手法をとる模様。

 

 多くの中小企業からすれば自社とは関係がない大企業の話と片付けられてしまいそうだが、できればこのニュースを見て、自社の退職給付の問題を考えるきっかけにして頂きたい。確かに2280億円の現金を用意するなんていうのはまったく想像もできないようなレベルの話であるが、企業年金を中心とした退職給付債務の問題は、退職金制度を有するすべての企業にとって、深刻な問題である。これはいつもセミナーなどでお話していることであるが、この問題を放置すれば傷口が広がることさえあれ、勝手に問題が解決するということはありえない。最悪の場合には退職金制度によって倒産に追い込まれる危険性さえある、重大な企業経営リスクである。まずは現状の把握から始め、早急に対策の立案を進めて頂きたいと願っている。

 

 なおroumu.comでは以前より「退職金制度診断システム」というExcelの簡単なシミュレーションを無料配布している。こちらも是非ご利用頂きたい。

 

(大津章敬)

中退共 適年引継退職金試算プログラム(WEB版)を更新

中退共シミュレーション 4月19日の当blog記事「中退共 適年引継退職金試算プログラムバージョンアップ」において、適年の資産を中退共に引き渡す場合のExcelで制作されたシミュレーションの配布が開始されたという話を紹介したが、本日、そのWEB版が公開された。


 先日のExcel版はExcelのアドオン機能「分析ツール」をインストールする必要があるなど、若干面倒であったが、今回のWEB版はインターネットに接続されている環境であれば、すぐに利用することができる。是非ご利用頂きたい。


(大津章敬)

今春の新入社員の会社や社会に対する意識調査結果~日本能率協会

 社団法人日本能率協会は、今春入社の新入社員に対して「会社や社会に対する意識調査」を行い、先日その結果を発表した。そのポイントをいくつか挙げて、コメントをつけてみたいと思う。
将来担いたい役割(理想)と将来担っていると思われる役割(現実)
 将来、理想として自分が担いたい役割について見ると、「専門能力を発揮して仕事をしたい」(48%)、「バイタリティのあるマネジャーとして仕事をしたい」(18%)が全体の中で大きな割合を占めており、「指示された仕事をこなすサラリーマン」は6%に止まっているのだが、現実となると「専門能力を発揮して仕事をしたい」の占める割合が下がり、「指示された仕事をこなすサラリーマン」が27%に急増するという結果となった。新卒くらいもっと野望を持って欲しいものである。最終的には1人1人の個人のキャリア選択ではあるが、指示された仕事をこなすサラリーマンの労働市場における価値はますます低下し、年収500万にも満たなくなる時代は目の前に来ている。

 

就職活動に臨んだ気持ち
 就職活動に臨んだ気持ちについて見ると、「気に入った会社や仕事よりも、就職することを最優先に考えた」の比率が圧倒的に高く、70%に達している。また、昨年度との比較で見ると、6ポイント上昇しており、「やりたい仕事」以前に「まず就職」という意識が根付いていることがうかがえる。もっとも最近のニートやフリーターの問題に比べれば、まだ良いと思うが、逆に仕事の現実に幻滅して短期で離職する者が増えないか心配ではある。

 

(大津章敬)