70歳までの就業機会確保努力義務化に関する建議が行われました

 70歳までの就業機会確保を努力義務化する件については、2019年9月27日以来、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会で検討されてきましたが、先日(2019年12月25日)、厚生労働省に対して建議が行われました。以下ではそのポイントを取り上げます。


(1)70歳までの就業機会の確保を図る措置としては、以下のいずれかを講ずることを事業主に対する努力義務とすることが適当である。
a.定年廃止
b.定年延長
c.継続雇用制度の導入
d.特殊関係事業主以外の企業への再就職に関する制度の導入
e.フリーランスや起業による就業に関する制度の導入(個人とのフリーランス契約への資金提供・個人の起業支援)
f.社会貢献活動への従事に関する制度の導入
(2)雇用によらない措置(上記ef)による就業機会確保を図る場合には、事業主が制度の実施内容を明示して労使で合意し、労働者に周知するよう努めること
が適当である。
(3)65歳以降の高年齢者については、体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況がより多様なものとなるため、今般の努力義務を設けるに当たり、事業主が講ずる措置について、対象者の限定を可能とすることが適当である。
(4)高年齢者の特性に応じた活躍のための多様な選択肢を用意することが重要であることや雇用によらない措置には労働関係法令による規制が及ばないことなどを踏ま
えると、70歳までの措置の適切な実施を図るためには、労使での十分な話し合いを行うことが求められる。
(5)事業主が複数の措置を講ずる場合において、個々の労働者にどの措置を適用するのかに関する話し合いについては、個々の労働者の希望を聴取することを指針において明示することが適当である。
(6)現行の65歳までの雇用確保措置においては特殊関係事業主で雇用を継続している場合、70歳までの措置については、60歳まで雇用していた事業主が、法律上、措置を講ずる努力義務を負うと解することが適当である。
(7)複数の措置を組み合わせることにより70歳までの就業機会を確保することも、努力義務を満たす措置を講ずるものであると解することが適当である。
(8)事業主の履行確保を図るため、厚生労働大臣は高年齢者等職業安定対策基本方針に照らして必要があると認めるときに、措置の実施について必要な指導及び助言をすることや、措置の導入に関する計画の作成及び提出、計画の変更や適正な実施を事業主に対して求めることができるようにすることが適当である。
(9)現行の再就職援助措置に係る努力義務及び多数離職の届出に係る義務の対象者について、事業主が70歳までの措置を講じない場合に 70 歳未満で退職する高年齢者及び事業主が対象者を限定した制度を導入した場合に当該制度の利用を希望しつつもその対象とならなかった高年齢者を加えることが適当である。
(10)事業主が国に毎年1回報告する「定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況」について、70歳までの措置に関する実施状況を当該報告の内容に追加することが適当である。
(11)措置の導入に向けた労使による話し合いや労働者への事前の周知に一定の期間を要することが見込まれるため、過去の高年齢者雇用安定法の改正時の例も参考としつつ、適切な準備期間を設けることが適当である。

 厚生労働省は、この建議の内容を踏まえ、法案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問することになります。引き続き、このテーマについては重点的に取り上げたいと考えています。


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2019年12月3日「労政審部会で示された70歳までの就業機会確保の基本的方向性」
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2019年11月18日「概要が見えてきた70歳までの就業機会確保義務の検討状況」
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2019年6月6日「未来投資会議が案を示した70歳までの就業機会確保努力義務化の方向性
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参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会建議:高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08658.html

(大津章敬)