[平成19年健康保険改正]健康保険の任意継続被保険者制度改正のポイント
今回は健康保険の資格喪失後に加入できる任意継続被保険者制度に関して、その概要と平成19年4月に改正された内容を確認しておきましょう。
[質問]
勤続3年になる社員が5月15日付けで退職することになりました。健康保険の任意継続を行いたいとの申出がありましたが、今年の4月に改正された健康保険法では、任意継続被保険者に関しても改正があったと聞きます。改正内容も含め、退職者に説明すべき点を教えてください。
[回答]
今回の改正では、今まで任意継続被保険者のメリットとして考えられていた給付面の見直しが行われています。改正前後を比較すると、従来手厚かった私傷病や出産に対する給付が削減されており、注意が必要です。
任意継続被保険者になるための要件
任意継続被保険者になるためには、資格喪失の前日まで継続して2ヶ月以上の被保険者期間が必要です。そして、資格喪失日から20日以内に自宅の住所地を管轄する社会保険事務所に申請する必要があります。
任意継続被保険者の被保険者期間
任意継続被保険者の被保険者期間は、資格喪失要件に該当しない限り、任意継続被保険者となった日から2年間とされています。市区町村の健康保険に加入する、もしくは家族が加入した健康保険の被扶養者になるといった理由では資格喪失できません。
保険料の額
原則として、資格喪失時の標準報酬月額から算出された保険料の全額を負担する必要があります(通常は、資格喪失前の[健康保険料+介護保険料]を2倍した額です)。ただし、標準報酬月額が28万円を超過していた場合は28万円で計算されます。なお、この上限額は毎年見直されます。
主な保険給付
原則として、資格喪失前と同様の給付を受けることができますが、今回の改正により任意継続被保険者に対する給付が廃止されました。これにより任意継続被保険者が、傷病手当金及び出産手当金の支給要件に該当しても給付が受けられなくなっています。
[まとめ]
以前は、療養の給付の負担割合に差があり、メリットを感じることのできた任意継続被保険者制度。今回の給付の見直しに伴い、被保険者が受けられるメリットは相当小さくなったように感じます。ポイントは資格喪失時の標準報酬月額であり、他の制度に加入した場合の保険料負担と比較して加入を検討する必要があるでしょう。
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参考リンク
社会保険庁「健康保険任意継続被保険者のしおり」
http://www.sia.go.jp/infom/pamph/dl/kempo4.pdf
社会保険庁「平成19年4月からの医療保険制度改正・政府管掌健康保険の介護保険料
率について(事業主・被保険者向け)」
http://www.sia.go.jp/infom/pamph/dl/iryo1904_ji.pdf
(宮武貴美)
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