[給与計算業務の改善]固定手当の日割計算方法を見直してみよう

 先日より不定期連載している[給与計算業務の改善]シリーズですが、今回は少し視点を変えて、賃金の計算ルールを簡素化することによる業務改善の手法について取り上げることとします。



[質問]
 当社では、20歳未満の子女を扶養する社員に対し、月額10,000円の家族手当を支給しています。その運用においては様々な課題があるのですが、もっとも対策を打ちたいと思っている課題が、家族手当の日割計算方法です。すべての社員を公平に取り扱うため、子女が生まれた日によって支給額を日割しているのですが、届出が遅れてしまうこともあり、なかなか適切な時期に正確な計算ができていません。どうすればこの課題が解決できるでしょうか?ちなみに当社では、毎月15日締めの当月末日支払で給与計算を行っています。
■例
5月21日に生まれた場合
 10,000円÷31日×26日分(5月21日~6月15日)≒8,387円
  →6月30日に支給
6月1日に生まれた場合
 10,000円÷31日×15日分(6月1日~6月15日)≒4,839円
  →6月30日に支給


[回答]
 多くの企業の給与計算の現場を見ていると、必要以上に細かいルールを作成し、結果的に多くの手間を掛けて業務を行っているという場面に遭遇します。給与計算を行う管理部門としては社員に対して十分なサービスを行うことが求められていますが、それが高コストの過剰サービスになっていないかを検証することが重要です。今回のケースでは「そもそも日割計算を行う必要があるか?」というところから検討する必要があるでしょう。子女の出生というそれほど頻繁に発生しない取り扱いですので、支給ルール自体を見直し、日割りは行わずに、出生の月の翌月から手当を支給するという方法も考えられるでしょう。この場合、質問の例に関しては以下のような取扱いを行うことになります。
■改定案
5月21日に生まれた場合
 10,000円を7月31日支給の給与から支給
6月1日に生まれた場合
 10,000円を7月31日支給の給与から支給


 確かに日割計算を行うことで社員にはより公平な取扱いを行うことが可能です。しかし、現状の方法では給与計算の工数を増大させ、更にはミスを誘発することにもなりかねません。従って、改定案のようにルールをシンプルにし、日割り計算は行わず、月単位での支給判断を行う方が良いでしょう。この場合、子女の出生の日によって最大10,000円の差異が発生しますが、その発生頻度の低さと給与計算業務の管理コストの削減の必要性を総合的に勘案すれば、社員に十分理解を求めることができる範囲ではないでしょうか。


[まとめ]
 上記のようなルールの変更を行うときには、就業規則(賃金規程)の変更も必須となります。また、今回のケースは社員に子女が出生するときにのみ発生する問題であり、不利益の程度が小さいと判断できますが、その程度が大きいときには、社員の同意を取り付ける必要があるでしょう。



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(宮武貴美)


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