[最低賃金の計算方法その1]月給者に関する最低賃金の確認方法
9月19日・9月21日と平成19年の最低賃金の速報をお伝えしてきました。その中で「そもそも最低賃金はどのように計算するの?」という質問をいただきましたので、今回から3回にわたり、計算方法や注意点を取り上げたいと思います。第1回目の本日は、月給者に関する最低賃金の確認方法です。
[質問]
当社では、全員日給月給制で給与を支給しています。今年は最低賃金の大幅引き上げが行われるそうなので、入社間もない社員は給与もさほど高くないため、最低賃金以下にならないかと心配をしています。月給者について最低賃金をクリアしているかどうかの確認方法を教えてください。なお、当社の労働条件と賃金の例は以下のようになっています。
年間所定労働日数 255日 1日の所定労働時間 8時間
月給 182,000円
※内訳 基本給 122,000円 皆勤手当 20,000円 家族手当 20,000円 通勤手当 20,000円
[回答]
今回のケースでは、月給を時間給換算すると、約 717.6円となり、適用される都道府県によっては最低賃金を下回る可能性があります。(東京の最低賃金は今回719円に引き上げられます)
ポイント1 時間当たりの金額算出式
月給で給与が支払われる場合、給与額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金額と比較をする必要があります。この計算は、以下の計算式で行います。
月給額×12ヶ月÷年間総所定労働時間
※年間総所定労働時間=年間所定労働日数×1日の所定労働時間
ポイント2 最低賃金の対象となる賃金
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金に限られます。具体的には、基本給と諸手当(ただし、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などを除く。営業手当などは含まれます)が対象となります。逆に、以下の賃金は最低賃金の対象から除外されます。
1)最低賃金の対象から除外される賃金
2)臨時に支払われる賃金
3)1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
4)所定労働時間を超える期間の労働に対して支払われる賃金
5)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金
6)精皆勤手当、通勤手当および家族手当
それでは今回の質問のケースで考えてみましょう。
最低賃金の対象となる賃金の確認
□対象となる賃金
基本給 →122,000円
□対象とならない賃金
皆勤手当・家族手当・通勤手当 →合計60,000円
年間総所定労働時間の算出式
255日×8時間=2,040時間
時間あたりの金額の算出式
122,000円 × 12ヵ月 ÷ 2,040時間 ≒ 717,64 円
従って、この例における時間当たり賃金は717,6円となります。
[まとめ]
最低賃金は時間給で設定されているため、月給者については気にかけていない場合も多々ありますが、最低賃金の対象にならない賃金もあるため、今回の大幅引き上げに際しては具体的に計算し、最低賃金を下回っていないかの確認を行うべきでしょう。また、近年、賃金制度で見られるようになってきた月給者に固定残業を払う仕組みですが、当然ながら、固定残業分を除いた額で最低賃金を満たす必要があります。それでは次回は、歩合給のケースを取り上げることにしましょう。
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2007年9月21日「【速報】平成19年度地域別最低賃金公示(大阪など14都道府県追加)」
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2007年9月10日「平成19年度地域別最低賃金改正の答申出揃う~東京・愛知は20円の引き上げ」
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2007年7月17日「最低賃金 大幅引き上げの方向」
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参考リンク
東京労働局「最低賃金の基礎知識」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-09.htm
東京労働局「しっかりマスター最低賃金法」
http://www.roudoukyoku.go.jp/topics/2007/20070518-chingin/chinginhou.pdf
(宮武貴美)
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