産業医選任義務の従業員数50名に派遣労働者は含めるのか
最近は労働基準監督署による安全衛生に関する調査が増えていますが、今日はそれに関し、顧問先様から質問のあった内容を取り上げてみましょう。
【質問】
当社も従業員が増えてきており、来年の新卒入社社員を含めると48人となります。先日、50名を超えた場合は産業医の選任が必要だということをブログで読みました。派遣社員が5名おり、この50名のカウントに派遣社員も含めるとなると、産業医の選任義務が発生するのことになります。このカウントに派遣社員を含めなければなりませんか?
【回答】
常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、業種の如何に関わらず、常時50人以上の労働者を使用するに至ったときから14日以内に、産業医を選任し、遅延なく所轄労働基準監督所長に届出ることが義務付けられています。今回のご質問はこの50人のカウントにおいて、派遣労働者を含める必要があるのかということですが、産業医の選任を行なう場合の基準には派遣労働者を含める必要があります。
派遣労働者は派遣元の事業主との間に雇用契約関係があり、労働基準法をはじめとした労働関連法の義務付けは派遣元事業主に課しています。しかしながら一方で派遣労働者は派遣先事業主から指揮命令を受け労務提供をしているため、これらの労働関連法の適用について特例措置を設け、派遣先事業主にも責任を分担しています。今回の質問における産業医の選任については、この特例に該当しており、派遣労働者も含めた人数により選任の義務が行なわれることになっています。したがって、来年の新卒入社社員を受け入れる際には産業医の選任を行い、届出を行なう必要があります。
【まとめ】
この産業医の選任については、派遣先事業主と派遣元事業主の両方に義務付けています。派遣先で人数をカウントした労働者について、派遣元でもカウントする必要があります。どちらか一方でのカウントではないことに注意が必要です。
[関連法規]
労働安全衛生法 第13条(産業医等)
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
3 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。
4 事業者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 第45条(労働安全衛生法 の適用に関する特例等)
労働者がその事業における派遣就業のために派遣されている派遣先の事業に関しては、当該派遣先の事業を行う者もまた当該派遣中の労働者を使用する事業者(労働安全衛生法 (昭和四十七年法律第五十七号)第二条第三号 に規定する事業者をいう。以下この条において同じ。)と、当該派遣中の労働者を当該派遣先の事業を行う者にもまた使用される労働者とみなして、同法第三条第一項 、第四条、第十条、第十二条から第十三条(第二項を除く。)まで、第十三条の二、第十八条、第十九条の二、第五十九条第二項、第六十条の二、第六十二条、第六十六条の五第一項、第六十九条及び第七十条の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。この場合において、同法第十条第一項 中「第二十五条の二第二項 」とあるのは「第二十五条の二第二項 (労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)第四十五条第三項の規定により適用される場合を含む。)」と、「次の業務」とあるのは「次の業務(労働者派遣法第四十四条第一項に規定する派遣中の労働者(以下単に「派遣中の労働者」という。)に関しては、第二号の業務(第五十九条第三項に規定する安全又は衛生のための特別の教育に係るものを除く。)、第三号の業務(第六十六条第一項の規定による健康診断(同条第二項後段の規定による健康診断であつて厚生労働省令で定めるものを含む。)及び当該健康診断に係る同条第四項の規定による健康診断並びにこれらの健康診断に係る同条第五項ただし書の規定による健康診断に係るものに限る。)及び第五号の業務(厚生労働省令で定めるものに限る。)を除く。第十二条第一項及び第十二条の二において「派遣先安全衛生管理業務」という。)」と、同法第十二条第一項及び第十二条の二中「第十条第一項各号の業務」とあるのは「派遣先安全衛生管理業務」と、「第二十五条の二第二項」とあるのは「第二十五条の二第二項(労働者派遣法第四十五条第三項の規定により適用される場合を含む。)」と、「同条第一項各号」とあるのは「第二十五条の二第一項各号」と、同法第十三条第一項中「健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下」とあるのは「健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(派遣中の労働者に関しては、当該事項のうち厚生労働省令で定めるものを除く。第三項及び次条において」と、同法第十八条第一項中「次の事項」とあるのは「次の事項(派遣中の労働者に関しては、当該事項のうち厚生労働省令で定めるものを除く。)」とする。
関連blog記事
2008年2月13日「平成20年4月施行 改正安衛法における定期健康診断等の項目改正」
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2008年2月7日「平成20年4月スタート!メタボの「特定健康診査」と「特定保健指導」の概要」
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2007年12月6日「定期健康診断で「所見あり」とされた場合に受給できる二次健康診断給付」
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2007年10月12日「健康診断を受診させる必要のあるパートタイマーの条件」
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参考リンク
厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うために」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kaisei/dl/ukeoi.pdf
(宮武貴美)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。