間違いやすい70歳以上の社員に支給する賞与における社会保険料取扱いと社会保険届出
先日のメインブログ「2008年6月の「人事労務のお仕事カレンダー」」をご覧になった方から高齢者に賞与を支給する場合の注意点に関する質問をいただきましたので、今日はこの質問を取り上げましょう。
[質問]
当社では、たくさんの高齢者に活躍していただいています。つい先日の6月1日が誕生日で、70歳になった社員がいます。厚生年金保険の資格喪失手続きは先日届出しました。ところで、当社では毎年6月の夏季賞与を支給しているのですが、この社員の社会保険料はどのように取り扱えばよいですか?また、社会保険事務所への届出は通常の賞与支払届のみで問題ありませんか?
[回答]
6月に支給する賞与からは健康保険料のみ控除が必要です。届出に関しては、通常の賞与支払届のほか、70歳以上の被保険者専用の賞与支払届の提出が必要になります。
社会保険料について
70歳到達時の厚生年金保険資格喪失日は、70歳に到達した日(=70歳の誕生日の前日)です。この方の誕生日は6月1日ですので、資格喪失日は前日の5月31日となります。また、厚生年金保険料については、資格喪失した月はかかりませんので、5月分から不要となり、6月に支給される賞与にもかかりません。この社員の賞与にかかる社会保険料の取扱いをまとめると、以下のようになるでしょう。
健康保険料 控除必要
介護保険料 控除不要
厚生年金保険料 控除不要
雇用保険料 控除不要
届出について
社会保険の被保険者に賞与を支給した場合には、「健康保険 厚生年金保険 被保険者賞与支払届」を支給日から5日以内に提出しなければなりません。また、70歳以上の被保険者に賞与を支給した場合には、この届出のほか「厚生年金保険 70歳以上被用者 算定基礎・月額変更・賞与支払届」を別途提出する必要があります。
[まとめ]
70歳以上の在職老齢年金は平成19年4月より開始されました。このため、「厚生年金保険 70歳以上被用者 算定基礎・月額変更・賞与支払届」の提出が必要となる方は、昭和12年4月2日以後生まれで70歳に到達している方となります。対象となる方を選別し、忘れずに届け出ることが求められます。また、今年の4月から後期高齢者医療制度が開始され、原則75歳以上の被保険者については健康保険の被保険者資格も喪失するため、健康保険料も不要になります。こちらも控除間違いがないように注意する必要があります。
関連blog記事
2008年6月1日「2008年6月の「人事労務のお仕事カレンダー」」
https://roumu.com
/archives/51342264.html
2007年12月13日「70歳以上の被用者に関して求められる社会保険の諸手続」
https://roumu.com
/archives/51194280.html
2007年6月12日「賞与計算における社会保険料取扱い注意事項2 健康保険標準賞与額累計申出書」
https://roumu.com
/archives/50989909.html
2007年6月11日「賞与計算における社会保険料取扱い注意事項1 標準賞与額変更・支給月喪失者の取り扱いなど」
https://roumu.com
/archives/50989861.html
2007年4月10日「[平成19年健康保険改正]標準賞与額の上限額改正に伴う賞与支給時の健康保険料に関する注意点」
https://roumu.com
/archives/50940442.html
参考リンク
群馬社会保険事務局「事業主のみなさまへ 70歳以上の被用者に関する各種届書の提出のお願い」
http://www.sia.go.jp/~gunma/hoken/1904_70saiijyou_kakushutodokede/70saiijyou_kakushutodokede.html
社会保険庁「平成19年4月より、厚生年金保険の新しい仕組みが始まります」
http://www.sia.go.jp/infom/pamph/dl/1904seido.pdf
(宮武貴美)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。