中国で相次ぐ最低賃金の引上げ
現在、中国各地で最低賃金の引上げが相次いでいます。まずは主要都市の2007年と2008年の最低賃金の推移をまとめてみましょう。
この表から見ると、増加率が最低の北京で約10%、深センの特区外にいたっては、20%もの上昇率となっています。この要因は、労働者保護にあり、今年1月より施行された労働契約法にしても、2008年3月より実施された個人所得税の基礎控除額の引上げ、現在検討が進んでいる賃金改定条例についても、労働者保護の目的という点で、同様といえます。
これだけ、労働者保護を訴える裏には、それだけ労働者を取り巻く環境が厳しくなっていることがあります。具体的には、インフレが進んでいること、最近のドル安・元高の影響から輸出型企業の業績悪化が進み、雇用環境も悪くなりつつあります(その一方で、大型休暇の後に、帰省した従業員が戻ってこない、という状況もあるのですが…)。当然、これらの改正は現地に進出している日系製造業が直面する問題です。多くの雇用者を確保している製造業の場合、臨時工や最低賃金ラインの労働者を多く抱えているため、その影響を大きく受けることになるでしょう。また、法令整備も進み、上海近郊では、社会保険の適用も厳しくなってきており、今後社会保険料も含めた人件費関連コストは右肩上がりで上昇することが予想されます。
従来は、製造さえクリアできれば、一定ラインの売上・利益を確保できたものが、今後は世界的な原材料高に加え、中国特有の人件費増を考慮すると、利益確保は難しくなる一方といえます。今後は、製造工程の見直しにより効率をどれだけ上げることができるか、高付加価値製品をどれだけ作り出せるかが大きな鍵となるのは間違いありません。
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(上海名南企業管理咨詢有限公司 近藤充)
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