[ワンポイント講座]在宅勤務者の労働時間はどのように取り扱うのか

テレワーク人口倍増アクションプラン 水曜日恒例となりました「人事労務ワンポイント講座」ですが、今日はその第6回です。近年、企業が積極的に在宅勤務制度を導入する動きがみられています。そこで今回は、在宅勤務者の労働時間における注意点についてお話しましょう。


 テレワーカーが就業者人口に占める割合は10.4%(2005年時点)となっていますが、国の施策として2010年までにテレワーク人口を倍増するという方針(画像はクリックして拡大)が出されています。この背景には、育児・介護などの社員の抱える事情が多様化する中において、在宅勤務がワークライフバランスを図る上で有効な働き方の一つとして考えられていることがあります。こうした動きも後押しし、今後、在宅勤務を行う労働者が増加することが予想されていますが、問題となるのがその労働時間の取り扱いです。


 在宅勤務者の労働時間については、自宅で勤務が行われることから勤務の時間帯と日常生活の時間帯が混在せざるを得ない状況が見られ、その労働時間を合理的に算定し難いことから、労働基準法の第38条の2の事業場外労働のみなし労働時間制を適用することが通常です。ただし、そもそも事業場外みなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事している、使用者の具体的な指揮監督が及ばない、労働時間の算定が困難な業務であるという3つの要件すべて満たしていることが前提となりますが、更に在宅勤務については、通達(平成16年3月5日基発第0305001号)が出されており、更に以下の3つのの要件をすべて満たしている場合にみなし労働時間制が適用されます。
当該労働時間は、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと


 そのため、在宅勤務者が自宅内に仕事部屋を持っており、午前10時から12時までを勤務時間と定めるなど、勤務の時間帯と日常生活の時間帯が混在することのないように取り決めがなされているような状態で、会社の具体的な指示に基づいて仕事が行われているのであれば、労働時間を算定しがたいとは言えず、そもそもみなし労働時間制は適用されないということになります。


 なお、在宅勤務者にみなし労働時間制を適用する場合であっても、在宅勤務者に仕事を行った時間を業務報告書などに記録してもらうなどして、会社は在宅勤務者の労働時間の状況を把握しておく必要があります。そして、みなし労働時間の時間数と実際の労働時間との間に乖離があれば、所定労働時間数の見直しや業務量・内容の調整等を行うことが求められています。実際に在宅勤務を導入していく場合においては、どのような取扱いにするのかを労使でじっくり協議を行うことが必要でしょう。



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参考リンク
厚生労働省「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改訂について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/03/h0305-1.html
厚生労働省「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」パンフレット
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/pamphlet.pdf
首相官邸「テレワーク推進に関する関係省庁連絡会議」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/others/telework.html


(福間みゆき)


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