[ワンポイント講座]休日出勤を命じられた日に年休の請求はできるか
早いもので今年もあと2か月を残すところとなりました。総務担当者の方々は、年末調整の準備が始まり、これから年末にかけて忙しい時期を迎えられるのではないでしょうか。そのような繁忙期には休日出勤が必要となることもあるのではないかと思いますが、その際、休日出勤をしたくない従業員から年次有給休暇(以下「年休」)の請求があったとしたら、その年休取得を認めなければならないのでしょうか。今回は、休日出勤を命じた従業員から年休の請求があった場合の対応について取り上げたいと思います。
まず、休日と年休の関係について整理しておきましょう。休日とは、元々労働義務のない日のことを指します。これに対して、年休は労働義務がある日において、特別にその労働義務が免除されるものです。年休の付与については、労働基準法第39条第1項にその規定がありますが、そこでは「使用者は、~(中略)~10労働日の有給休暇を与えなければならない」とあります。このように労働基準法には「10日」ではなく、「10労働日」と規定されているのです。このことから分かるように、年休は労働義務のある日、つまり所定労働日において取得することができるものですから、元より労働義務のない休日については、年休の取得ができないという結論にたどり着きます。しかし、ここで疑問が生じるのは休日出勤命令を出した時点で、休日であっても所定労働日と同様に労働の義務が生じるのではないかということです。
確かに、時間外・休日労働の協定(いわゆる36協定)を締結しており、就業規則等の定めに基づいて有効な休日出勤命令をおこなった場合に、従業員には労働義務が生じます。しかしながら、そもそも労働日ではない休日に労働を命じるわけですから、この場合の労働義務は例外的なものであって、そこで年休を請求することができないということが労働局などによる実務的な取扱となっています。この取扱いについて明確に規定した通達等が存在しないことから様々な解釈がされる余地はありますが、実務としては休日出勤を命じられた日については年休の請求はできないという対応を基本に据えていただければ結構です。
[関連法規]
労働基準法 第36条第1項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
労働基準法 第39条第1項
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
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(佐藤和之)
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