[ワンポイント講座]過半数代表者に一定の任期を設定することはできるか

 36協定や就業規則の届出など、これからの時期は従業員の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という)を選任する場面が多くあるのではないかと思われます。この過半数代表者は、投票や挙手などの手続きによって選出することになりますが、例えば今年は4月1日に労働基準法改正、6月30日に育児介護休業法改正が行われるため、就業規則の改定一つとっても、その都度選任手続きをとることが煩雑になることが予想されます。そこで今回のワンポイント講座では、過半数代表者をその都度選任するのではなく、一定の任期を設定することはできるのかというテーマについて取り上げてみたいと思います。


 過半数代表者の選出は、労働基準法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者でないこと、法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であることという二つの要件を満たす必要があるとされていますが、原則として、過半数代表者は協定等を締結する日における従業員数を基礎として定めるべきものであるため、その都度選任するものであると考えられています。ただし、過半数代表者の選任についての規程等を定め、従業員側の同意を得たうえで選任したのであれば、任期制としても差し支えないと解されています。この点について法令には明確な定めは存在しませんが、労働局等の見解としては過半数代表者の任期を事前に周知して、選出すれば任期を設定できるしています。


 なお、以下がその規程例となります。このような就業規則や社内規程を従業員側に明示し、一定の合理的な期間(通常1年程度)を明白にしたうえで、過半数代表者の選任手続をとることが重要になります。
[規程例]
第○条(過半数代表者)
 過半数代表者は投票により選出するものとし、法令に定める「従業員の過半数を代表する者」としての職務を行う。
2 事業所は過半数代表者の選任の通知を受けたときは、所定の周知方法に従い従業員に周知する。また、その変更についても同様とする。
3 過半数代表者の任期は毎年4月1日から3月末日までの1年間とする。
4 過半数代表者は、法令に基づく協定の締結または意見の提出、その他所要の行為を行う。


[関連法規]
労働基準法施行規則 第6条の2
 法第十八条第二項 、法第二十四条第一項 ただし書、法第三十二条の二第一項 、法第三十二条の三 、法第三十二条の四第一項 及び第二項 、法第三十二条の五第一項 、法第三十四条第二項 ただし書、法第三十六条第一項 、第三項及び第四項、法第三十八条の二第二項 、法第三十八条の三第一項 、法第三十八条の四第二項第一号 、法第三十九条第五項 及び第六項 ただし書並びに法第九十条第一項 に規定する労働者の過半数を代表する者(以下この条において「過半数代表者」という。)は、次の各号のいずれにも該当する者とする。
一  法第四十一条第二号 に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
二  法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。


[関連通達]
昭和63年1月1日 基発1号
「労働者の過半数を代表する者」は当該事業場の労働者により適法に選出されなければならないが、適法な選出といえるためには、当該事業場の労働者にとって、選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていることが必要というべきである。


平成11年3月31日 基発169号
問 則第6条の2に規定する「投票、挙手等」の「等」には、どのような手続が含まれているか。
答 労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する。



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(佐藤浩子)


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