[ワンポイント講座]育児短時間勤務制度利用者に育児時間は与えなくてもよいのか

育児短時間勤務制度利用者に育児時間 2009年12月15日のブログ記事「[正式決定]改正育児・介護休業法 短時間勤務義務化などの施行日は平成22年6月30日」でもお伝えしたとおり、改正育児・介護休業法の施行日が平成22年6月30日に決定しました。今回の改正の主要点として、3歳までの子を養育する労働者に対して、事業主は「育児短時間勤務」制度の措置を講ずることが義務化がされたことがあります。この「育児短時間勤務」を利用している従業員から、もし「育児時間」の請求があった場合には「育児短時間勤務」とは別途に「育児時間」を与えなければならないのでしょうか。「育児時間」も「育児短時間勤務」と同趣旨の制度である以上、両制度を併用することについて疑問が生じるのではないかと思います。そこで今回のワンポイント講座は「育児短時間勤務」と「育児時間」の併用が可能かどうかについて取り上げてみましょう。


 現在、育児・介護休業法に基づき、事業主は、3歳までの子を養育する従業員(男女を問わない)について、「育児短時間勤務」、「フレックスタイム制」など定められたいくつかの措置の中から一つ以上の措置を講じなければならないとされており、いわば選択性のある義務となっています。今回の改正では、その選択肢の一つであった「育児短時間勤務」が単独で義務化される(中小企業については猶予措置あり)ことになります。
 
 これに対して「育児時間」とは、母性保護の観点から労働基準法第67条に基づき、生後満1年に達しない生児を育てる女性が、労働基準法34条の休憩時間(通常の休憩時間)のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができるというものです。「育児時間」の与え方については、通常の休憩時間と異なり、従業員が「育児時間」を勤務時間の始めまたは終わりに請求してきた場合であっても、その時間に与えなければなりません(昭33.6.25基収4317)。また、1日2回各々少なくとも30分以上とは、1日の労働時間が8時間の勤務態様を想定しており、1日の労働時間が4時間以内であるような短い場合には、1日1回の育児時間の付与でよいとされています(昭36.1.9基収8996)。


 どちらの制度も1日の所定労働時間が短くなることは同じですので、どちらか一方の制度を利用することができれば、目的は達成されており、両制度の併用を認める必要はないのではないかと考えがちです。しかしながら、両制度は制度趣旨、対象者、対象期間等が異なるため、どちらの法律においても、両制度の併用を調整する規定が存在しません。この点について、行政解釈では「…育児時間と~短時間勤務の制度は、その趣旨及び目的が異なることから、それぞれ別に措置すべきものであること」(平成21年12月28日 職発第1228第4号 雇児発第1228第2号)とされています。今回の「育児短時間勤務」措置の義務化により、今後このようなケースが増えてくることが予想されますので、従業員から「育児時間」の請求があった場合には、併用を認めなければならないことを押さえておく必要があります。 


[関連法規]
労働基準法 第67条
 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。


育児・介護休業法 第23条
 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する労働者のうち、その一歳(当該労働者が第五条第三項の申出をすることができる場合にあっては、一歳六か月。以下この項において同じ。)に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものにあっては労働者の申出に基づく勤務時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置(以下この項及び次条第一項において「勤務時間の短縮等の措置」という。)を、その雇用する労働者のうち、その一歳から三歳に達するまでの子を養育する労働者にあっては育児休業の制度に準ずる措置又は勤務時間の短縮等の措置を講じなければならない。



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(佐藤和之)


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