海外派遣者の労保取扱い(2)労災保険の特別加入制度

 先日より短期連載をしている「海外派遣者の労保取扱い」ですが、第2回目の今回は、2010年4月3日のブログ記事「海外派遣者の労保取扱い(1)労災保険・雇用保険の適用」で取り上げた「労災保険の特別加入制度」についてお話します。


 そもそも労災保険は、国内にある事業場に適用され、そこで就労する労働者が給付の対象となる制度であるため、海外の事業場で就業する者は対象となりません。したがって、国内の事業場で就労していた者が、海外の事業場へ派遣された場合についても、通常はその国の災害補償制度の対象となります。しかし、外国の制度の適用範囲や給付内容が十分でないこともあることから、海外派遣者についても、日本の労災補償制度の給付が受けられることにしたのが、「海外派遣者の特別加入制度」となります。


 海外派遣者として特別加入をすることができる範囲についてですが、派遣の形態や派遣先での職種、あるいは派遣先事業場の形態、組織等にかかわらず、以下のとおりとなります。
日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣されて、海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業等海外で行われる事業に従事する労働者
日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣されて、海外にある別表1に定める数以下の労働者を常時使用する事業に従事する事業主及びその他労働者以外の者
※派遣される事業規模の判断については、海外の各国ごとに、かつ企業を単位として考慮
[別表1 中小事業と認められる事例]
業 種  労働者数
金融業  50人以下
保険業  50人以下
不動産業 50人以下
小売業  50人以下
卸売業  100人以下
サービス業 100人以下
上記以外の業種 300人以下


独立行政法人国際協力機構等開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する者


 その加入手続きですが、海外派遣元の事業主は、所轄の労働基準監督所長を経由して、都道府県労働局長に「特別加入申請書(海外派遣者)」を提出することになります。このとき、派遣先において従事する業務の内容及び派遣予定期間を記入する必要があります。「業務の内容」については、実際に災害が発生したとき、労災保険の対象となるか否かを判断するため、「派遣予定期間」については、特別加入者としての身分を有している期間を確定するために必要となります。


 なお、海外派遣者の場合、実際に労働者が海外へ派遣される前に特別加入が承認されることが多いことから、申請書に記載した者が現実に派遣先の事業に従事することになった時点で、「海外派遣に関する報告書」を遅滞なく提出する必要があるため、注意が必要です。



関連blog記事
2010年4月3日「海外派遣者の労保取扱い(1)労災保険・雇用保険の適用」
https://roumu.com
/archives/51715621.html

2010年3月13日「海外派遣者の社保取扱い(3)協定相手国の年金を申請する際の留意点」
https://roumu.com
/archives/51707885.html

2010年3月6日「海外派遣者の社保取扱い(2)社会保障協定とは」
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2010年2月27日「海外派遣者の社保取扱い(1)健康保険・厚生年金保険の適用」
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2009年7月25日「今年6月にチェコ共和国との社会保障協定が発効」
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2007年12月3日「カナダとの社会保障協定 平成20年3月より発効」
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2007年7月13日「海外派遣者の社会保険・雇用保険・労災保険の取り扱い」
https://roumu.com
/archives/51017702.html


参考リンク
厚生労働省「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-7.html


(佐藤浩子)


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