最低賃金減額特例許可の改正と障害者にかかる最賃減額申請のポイント

最低賃金減額特例許可の改正と障害者にかかる最賃減額申請のポイント 2008年1月29日のブログ記事「改正最低賃金法における適用除外規定廃止と減額特例の新設」でも紹介させていただきましたが、平成20年7月の最低賃金法の改正により、すべての労働者に最低賃金法を適用することが原則とされました。そのため以前の適用除外許可規定が廃止され、最低賃金を減額して適用する為の最低賃金の減額特例許可規定(最低賃金法第7条)が新設されました。


 最低賃金の減額特例許可とは、
精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
試みの使用期間中の方
基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
軽易な業務に従事する方
を雇用する使用者は、最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出、許可を得ることによって地域別最低賃金や産業別最低賃金を減額した賃金で労働者を雇用することが可能になるという制度です。今回は、この申請書の許可について、厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課長から各都道府県労働局長に向けて出された「最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアルの一部改正について」という通達(基勤勤発0324第1号 平成22年3月24日)から、「精神又は身体の障害により著しく労働能力が低いもの」の改正部分=申請書作成時の重要ポイントをご紹介しましょう。



(1)改正の趣旨
 精神又は身体の障害により著しく労働能力が低い者について、減額対象労働者の労働能率が一定している場合に、当該者の作業実績を把握するための期間を短縮することを可能とするとともに、減額率の上限となる数値の算出に当たって配慮すべき事項を具体的に記載することとしたものであること。


(2)改正の内容
Ⅳ減額対象労働者の区分別の調査に当たっての留意事項
1精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者(新法第7条第1号関係)
(4)最低賃金の減額の率(則第5条)
イ則第5条の表による率の算出

 このため、実地調査時には労働能率が低い事実を客観的に証明する資料として使用者から過去2週間程度の減額対象労働者及び比較対象労働者の作業実績に関する資料の提出を求めるとともに、その内容を確認すること。ただし、減額対象労働者の労働能率が一定している場合には、当該者の作業実績を把握するための期間を短縮しても差し支えないこと。また、比較対象労働者の作業実績を把握するための期間については、1日として差し支えないこと。なお、減額対象労働者と比較対象労働者の労働能率を比較するに際しては、例えば、物品の製造、修理又は加工の場合には、1日の作業終了後に合格水準に到達しているものの個数の割合、また清掃等の役務の提供の場合には、その内容が一定水準に到達するまでに要する時間数(例:清掃等が完了したと認められるまでの時間数)等を勘案すること。


 障害者雇用納付金制度の対象事業主が平成22年7月1日に常用雇用労働者201人以上まで拡大されました。また平成27年4月には常用雇用労働者101人以上の事業主まで拡大される予定です。企業が果たすべき社会的責任として障害者雇用はますます重要視されるようになってきています。現在はまだあまり申請したケースは聞きませんが、今後障害者雇用が増え、障害者雇用が一般的になってくれば、健常者とのバランスが議論され、障害者の最低賃金の減額特例の申請が増加していくことも考えられるのではないでしょうか。
「最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアル」のダウンロードはこちら
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T100910K0760.pdf



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2008年05月19日[改正最低賃金法]減額の特例における減額率
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2008年1月29日「改正最低賃金法における適用除外規定廃止と減額特例の新設」
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参考リンク
厚生労働省「最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアルの一部改正について(平成22年3月24日基勤勤発0324第1号)」
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T100910K0760.pdf


(中島敏雄)


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