飲食店店長労務管理超基礎【第5回】飲食店店長ならば学生アルバイトをうまく活用する
飲食店は通常、少数の社員と多くのパート・アルバイトにより、店舗が運営されています。そのため、質の高いパート・アルバイトを安定的に確保することは飲食店経営にとっての生命線といっても過言ではありませんが、この点においては学生アルバイトをうまく活用することが重要となります。そこで以下では学生アルバイトを活用するための法律上の注意点と安定的に確保するためのポイントについて解説します。
学生アルバイトを活用する際にはまずは年齢確認を徹底しましょう。というのも、満18歳に満たない年少者については労働基準法において様々な規制が設けられており、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えての労働や深夜労働は原則として認められていないのです。とはいえ、応募時に様々な書類の持参を条件とすると、応募のハードルを上げることとなり、十分な数の求職者を集めることが難しくなる恐れもあります。よって実務としては、面接の際に学生証の原本で生年月日を確認し、18歳未満であれば、採用時に住民票記載事項証明書を提出させることがよいでしょう。
また学生アルバイトの社会保険については、雇用保険と社会保険(健康保険・厚生年金保険)に分けて考える必要があります。雇用保険の加入要件は1週間に20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがあることとされていますが、大学生などの昼間学生であれば、それだけ働いていたとしても加入する必要はありません。一方、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入資格においては学生という身分は考慮されませんので、1日または1週間の労働時間が正社員の概ね4分の3以上、1ヶ月の労働日数が正社員の概ね4分の3以上という2つの要件を満たせば加入する必要があることには注意が必要です。もっとも学生の本分は勉強でありますし、社会保険の負担を考えれば、学生アルバイトの労働時間は正社員の4分の3未満に抑えるべきでしょう。
学生アルバイトは、定着すれば、よほどのことがない限り卒業まで働いてくれる飲食店店長にとっては非常にありがたい人材です。さらにその学生が後輩を紹介してくれる流れを作ることができれば、採用コストをかけることなく質の高い人材を安定的に確保することができます。こうしたよい循環を生むためには、自らの知恵を後輩に伝えることまでが仕事であるという認識を学生アルバイトに持たせる必要があります。これは決して簡単なことではありませんが、店長はそのような循環を作り出すためのあらゆる努力をする必要があります。どれだけ自分の技術を後輩に伝えたかを時給に反映することも方法の一つでしょう。一度自分の跡継ぎを育てる文化をつくることができれば、あとは自然に、アルバイト卒業に向けてできる限り自分の知恵を残そうという行動が増えてきます。労働基準法などの違反がないかのチェックも同時に行うことで、学生アルバイトを安定的に確保する流れを確立したいものです。
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(中島敏雄)
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