継続雇用の基準制度廃止を提言した労政審建議のポイント

建議 大きな注目を浴びている高年齢者雇用対策ですが、平成23年9月から職業安定分科会雇用対策基本問題部会において、希望者全員の65歳までの雇用確保措置等について検討が行われてきました。先週、労働政策審議会は、これらの検討を行った結果を取りまとめ、厚生労働大臣に対し、「今後の高年齢者雇用対策について」の建議を行いました。本日はそのポイントについて取り上げることとしましょう。

希望者全員の65歳までの雇用を確保するためには、法定定年年齢を公的年金支給開始年齢と合わせて引き上げることも考えられるが、現在60歳定年制は広く定着し機能しており、法律による定年年齢の引上げは企業の労務管理上、極めて大きな影響を及ぼすこと、60歳以降は働き方や暮らし方に対する労働者のニーズが多様であることなどを踏まえると、直ちに法定定年年齢を65歳に引き上げることは困難である。この問題に関しては、年功的な要素が強い賃金制度や退職金制度、さらには、高齢者の人事管理の在り方など、企業の労務管理上の様々な課題に関する環境整備の状況を踏まえて、中長期的に検討していくべき課題である。
現行制度では65 歳までの希望者全員の雇用を確保することとなっていない。これにより、2013 年度からの老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに伴い、無年金・無収入となる者が生じることのないよう、意欲と能力に応じて働き続けることが可能となる環境整備が求められており、雇用と年金を確実に接続させるため、現行の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は廃止することが適当である。その際、就業規則における解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する者について継続雇用の対象外とすることもできるとすることが適当である(この場合、客観的合理性・社会的相当性が求められると考えられる)。
老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の段階的引き上げを勘案し、雇用と年金を確実に接続した以降は、できる限り長期間にわたり現行の9条2項に基づく対象者基準を利用できる特例を認める経過措置を設けることが適当である。
継続雇用制度の基準を廃止する場合であっても、就労を希望する高齢労働者が増加していくことを考えると、同一の企業の中だけでの雇用の確保には限界があるため、(1)親会社、(2)子会社、(3)親会社の子会社(同一の親会社を持つ子会社間)、(4)関連会社など事業主としての責任を果たしていると言える範囲において、継続雇用における雇用確保先の対象拡大が必要である。

 このように以前からの報道の通り、基準制度の廃止による希望者全員の雇用確保を進めるという内容となっています。これにより60歳以降の職務や労働条件の整備が従来以上に重要になりますが、同時に現役世代の社員に対する人事管理の向上も望まれます。これまでは問題がある社員であっても、トラブルを避けるため、定年までは雇用し、定年のタイミングで継続雇用を拒否するという対応を行っているという企業が少なからず見られましたが、今後は人事評価結果などによる継続雇用拒否が認められなくなります。よって問題社員については現役のうちから十分に指導を行い、改善を求め、場合によっては解雇などの選択肢も検討しなければならない状況が増加することでしょう。

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2011年8月2日「高年齢者雇用安定法の全体像がよくまとめられた石川労働局のガイドブック」
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2011年6月9日「希望者全員の65歳までの継続雇用の方針が示された厚労省の報告書」
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2011年3月30日「継続雇用制度の労使協定がない事業所における定年退職者の雇用保険離職理由は事業主都合扱いに」
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2010年12月17日「平成23年3月31日で終了する定年後の継続雇用制度の対象者基準に係る特例」
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参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会建議-今後の高年齢者雇用対策について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001zl0e.html

(大津章敬

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