平成23年3月31日で終了する定年後の継続雇用制度の対象者基準に係る特例

lb01392 平成18年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業においては65歳までの安定した雇用を確保するために、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じる義務が課せられました。


 このうちの継続雇用制度を導入する際、労使協定を締結することにより継続雇用の対象者を選別的に定め基準を設定することができるとされています。よってこれまで多くの企業がこの労使協定を締結してきましたが、労使協定を締結するために協議を行い労使で努力したものの、その協議が整わない場合については、就業規則その他これに準ずるものにより対象者基準を定めることができるとされていたために、中小企業においては就業規則に対象者の基準を規定されているところも少なくありません。


 しかし、この就業規則に継続雇用制度の対象者基準を設けるという取扱いは、協議が整わない場合のあくまで特例措置であり、労働者数300人以下の企業についても平成23年3月31日で終了となります(労働者数301人以上の企業については平成21年3月31日に既に終了)。そのため、対象となる企業において、従来と同様の選別的な基準をもって引き続き「継続雇用制度の導入」をする場合には、平成23年3月31日までに労使協定を締結する必要があり、平成23年4月1日以降、労使協定が未締結の場合は高年齢者雇用安定法に違反することとなります。


 なお、この労使協定そのものは労働基準監督署へ届け出る必要はありませんが、労使協定により基準を設定した旨を就業規則その他これに準ずるものに定め、その就業規則の変更を労働基準監督署に届け出なければならないため、注意が必要です。
 
 上記の内容について詳しく解説したリーフレット「定年後の継続雇用制度の対象者基準に係る特例が平成23年3月31日で終了します」および「継続雇用制度における選定基準等に関する協定書」のテンプレートを以下よりダウンロードすることができますので、是非ご利用ください。
リーフレット
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50965640.html
協定書テンプレート(Word、pdf)
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51220945.html


[関連法規]
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 第9条(高年齢者雇用確保措置)
 定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という)のいずれかを講じなければならない。
1.当該定年の引上げ
2.継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ)の導入
3.当該定年の定めの廃止
2 事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第2号に掲げる措置を講じたものとみなす。


高年齢者等の雇用の安定等に関する法律附則 第5条
 高年齢者雇用確保措置を講ずるために必要な準備期間として、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成16年法律第103号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日から起算して3年を経過する日以後の日で政令で定める日までの間、事業主は、第9条第2項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わないときは、就業規則その他これに準ずるものにより、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入することができる。この場合には、当該基準に基づく制度を導入した事業主は、第9条第1項第2号に掲げる措置を講じたものとみなす。
2 中小企業の事業主(その常時雇用する労働者の数が政令で定める数以下である事業主をいう。)に係る前項の規定の適用については、前項中「3年」とあるのは「5年」とする。
3 厚生労働大臣は、第1項の政令で定める日までの間に、前項の中小企業における高年齢者の雇用に関する状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、当該政令について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。


高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行令 附則
4 法附則第五条第一項の政令で定める日は、平成二十一年三月三十一日とする。
5 法附則第五条第二項の政令で定める数は、三百人とする。
6 法附則第五条第二項において読み替えて適用する同条第一項の政令で定める日は、平成二十三年三月三十一日とする。



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参考リンク
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正のお知らせ」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/index.html 


(福間みゆき)


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