厚労省が策定した「望ましい働き方ビジョン」に見る今後の非正規雇用対策の方向性

望ましい働き方ビジョン いわゆる非正規労働者が全労働者の3分の1を超えるようになり、有期労働契約法制や社会保険の被保険者範囲の拡大など、様々な非正規雇用対策が打ち出されています。そんな中、厚生労働省は、2012年3月27日に「望ましい働き方ビジョン」をとりまとめ、公表しました。今後、厚生労働省は、このビジョンを今後の非正規雇用対策の指針として、具体的な取り組みを進めるとしています。そこで今回はこのビジョンの中で見られる施策の具体的方向性について取り上げることとしましょう。

若者に雇用の場を確保
・学校での働くことやルールの意識付け・啓発、キャリア教育の一層推進
・新卒者支援体制の構築
・求職者支援制度の活用、企業の雇入れ支援強化
・ニート対策の強化
・「若者雇用戦略」で、労使、教育界、政府一体で推進
正規雇用・無期雇用への転換促進
・外部労働市場や同一社内での正規雇用に向けた支援の充実
・短時間労働者の正社員転換の推進
・派遣労働者の派遣先での無期直接雇用の推進
・有期労働契約の無期雇用化の促進等
中立的な税・社会保障制度の構築
・厚生年金、健康保険の適用範囲の拡大・配偶者控除、社会保険の被扶養者認定の仕組み(103万円、130万円)の見直し
・社会保障・税の所得再分配機能の強化
公正処遇の確保・合理格差の解消
・事業主への助成、労働関係法令等遵守の周知・指導等の着実実施
・集団的労使関係システムの整備
・ハローワーク等での相談援助体制の構築
・企業評価の仕組み
・最低賃金の引上げ
・有期契約労働者の不合理な処遇の解消
均等・均衡待遇の効果的促進施策の具体的方向性
・「同一価値労働同一賃金」の考え方を尊重(性差別等を生じさせない)しつつ日本的な「均衡」によりアプローチ
・派遣労働者の均衡に配慮
・職務評価・職業能力評価の一層活用
・短時間労働者の均等・均衡待遇の一層促進
職業キャリアの形成の支援
・企業内訓練の強化
・キャリア・コンサルティングの活用促進
・ジョブ・カード制度の活用など社会全体での職業能力開発機会の確保
・求職者支援制度や公共職業訓練の推進(成長分野のほか、「ものづくり分野」も注目)
雇用のセーフティネット強化
・雇用保険の適用拡大、求職者支援制度の円滑な実施
・雇用調整助成金の活用
・福祉施策との連携による早期の再就職支援(特に住居・生活困窮者。多様な就労機会の確保も検討)
・統計の整備充実

 このように非常に多岐に亘った内容となっています。今後、各方針の具体的実施事項や助成金などの情報が出てくるかと思いますので、当ブログでは継続的にそうした動きをチェックしていきたいと考えています。


関連blog記事
2012年3月21日「厚労省特別部会で示されたパートタイマーへの社会保険適用拡大の基準と影響緩和措置」
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2012年3月18日「有期労働契約にかかる労働契約法改正法律案要綱 概ね妥当との答申」
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2012年3月2日「労政審に行われた「有期労働契約法制」諮問のポイント」
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2011年12月27日「有期労働契約5年で無期労働契約に転換されること等が検討される有期労働契約の在り方」
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参考リンク
厚生労働省「「望ましい働き方ビジョン」をとりまとめました」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025zr0.html

(大津章敬

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