[医療福祉労務管理連載(5)]雇止め法理の法定化
前回は、労働契約法の改正により定められた3つの新たなルールのうち、無期雇用契約への転換について解説しました。今回は2つ目のルールである、「雇止め法理の法定化」について解説します。
有期雇用契約は、あらかじめ契約期間の満了日が設定されており、満了日到来の際に契約が更新されなければ当然終了します。このように事業主が契約を更新しないという意思決定を行い、契約期間の満了により雇用を終了させる行為のことを雇止めと呼びます。
雇止めに関しては、裁判において有期労働契約が形骸化してしまっており実質的には無期契約であると判断されるような場合には、雇止めが無効と判断されることがあります。これがいわゆる「雇止め法理」であり、裁判上も既に確立されたルールとなっていましたが、今回の法改正により、この裁判上のルールが法律として明文化されました。法文では、雇止め法理の対象となる有期雇用契約は、以下のとおりであるとされています。
有期雇用契約の更新手続きが形骸化し、実質的に無期雇用と変わらない状態等、過去に反復更新された有期雇用契約で、雇止めを行うことが無期雇用契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
事業主(代表だけでなく、所属長等も含む)から「引き続き次回もよろしく」と言われる等、有期雇用契約が更新されるものと労働者が期待することについて、合理的な理由があると認められるもの
このような場合は、正当な理由なく雇止めをすることはできず、解雇と同様に、客観的に合理的な理由が必要とされています。職員から有期雇用契約の更新の申込がされた場合には、従前と同一の条件で、有期雇用契約が更新されることになります。なお、この雇止め法理に該当するかどうかの判断基準は、画一的なものがあるわけではなく、雇用の状況や契約更新の回数、通算の雇用期間、雇用継続の期待を持つような言動の有無等を総合的に考慮して、個別に判断されることとなります。
なお、この雇止め法理の法定化は、既に裁判で確立されたルールが法律上、明文化されただけで、その内容や適用範囲が従来と変更になったわけではありません。しかし、法定化されたことによって、職員がこの雇止め法理を根拠として、更新の申込みを行ってくることも予想されます。事業主の都合による雇用契約の打ち切りが従来よりも難しくなることが考えられるため、医療機関・福祉機関において有期雇用契約の職員を雇用する場合は、次の点に注意しましょう。
【チェックポイント】
□有期雇用契約を何度も繰り返している場合、業務内容が恒常的なものとなっていないか
□更新時に、雇用契約を書面で取り交わしているか
□更新時に、期間満了時の更新予定の有無や、更新を行う際の判断基準についてしっかり説明を行っているか
□更新のない場合や未定の場合は、日頃から雇用の継続を期待させる言動をしていないか
(雇用契約を行う事業主や人事担当者だけでなく、所属長等に対しても徹底が必要)
関連blog記事
2014年6月7日「[医療福祉労務管理連載(4)]有期雇用契約者の無期雇用契約への転換」
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2014年5月25日「[医療福祉労務管理連載(3)]労働契約法とはどのような法律か?」
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2014年4月12日「[医療福祉労務管理連載(2)]有期雇用契約を結ぶ際の注意点」
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2014年3月21日「[医療福祉労務管理連載(1)]医療機関・福祉施設における有期雇用契約の現状と抱える課題」
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(小堀賢司)
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