労政審報告書骨子案に見る企画業務型裁量労働制規制緩和の方向性

企画業務型裁量労働制規制緩和の方向性 今週は、先週金曜日に開催された第122回労働政策審議会労働条件分科会において公表された「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)」の中から、2016年4月に予定される労働時間法制改革の方向性についてお伝えしています。昨日はフレックスタイム制の規制緩和について取り上げましたが、本日は今後のホワイトカラーの働き方に大きな影響を与えていくであろう企画業務型裁量労働制の規制緩和について、その方向性を解説します。


労働時間法制報告書骨子案短期連載の過去記事もご覧ください
2015年1月21日「労政審報告書骨子案に見るフレックスタイム制規制緩和の方向性」
https://roumu.com
/archives/52062506.html

2015年1月20日「労政審報告書骨子案に見る年次有給休暇取得義務化の方向性」
https://roumu.com
/archives/52062500.html

2015年1月19日「労政審報告書骨子案に見るホワイトカラーエグゼンプションの骨子」
https://roumu.com
/archives/52062485.html

2015年1月18日「注目の労働時間法制改革の報告書骨子案が公開されました」
https://roumu.com
/archives/52062331.html


 そもそも今回の労働時間法制改革は、産業のホワイトカラー化に対応し、対象労働者の健康確保を図り、仕事の進め方や時間配分に関し、労働者が主体性をもって働けるようにするということが大きな目的となっています。それを促進するため、今回は裁量労働制の拡大が計画されています。
企画業務型裁量労働制の新たな枠組
・企画業務型裁量労働制の対象業務要件のうち、現行では「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」とされている部分について、近年のホワイトカラーの働き方の変化を踏まえ、以下の新たな類型を追加する。
①法人顧客の事業の運営に関する事項についての企画立案調査分析と一体的に行う商品やサービス内容に係る営業の業務
※具体的には、例えば「取引先企業のニーズを聴取し、社内で新商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた課題解決型商品を開発の上、販売する業務」等を想定。
②事業の運営に関する事項の実施の管理と、その実施状況の検証結果に基づく事業の運営に関する事項の企画立案調査分析を一体的に行う業務
※具体的には、例えば「全社レベルの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その過程で示された意見等をみて、さらなる改善の取組計画を企画立案する業務」等を想定。
・新たに追加する類型の対象業務範囲の詳細(肯定的要素及び否定的要素)に関しては、法定指針で具体的に示すことが適当。否定的要素として掲げる内容は、例えば「企画立案調査分析業務と組み合わせる業務が、個別の製造業務や備品等の物品購入業務、庶務経理業務等である場合は、対象業務とはなり得ない」といったものが考えられる。
・企画業務型裁量労働制の対象労働者の健康確保を図るため、同制度の健康・福祉確保措置について、一定の措置を講ずる旨を決議することが制度上の要件とされているが、その健康・福祉確保措置としては、現行の法定指針に例示されている事項(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの健康窓口の設置、配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を参考にしつつ、長時間労働を行った場合の面接指導等を追加することも含め検討の上、省令で規定する。
手続の簡素化
・企画業務型裁量労働制が制度として定着してきたことを踏まえ、①労使委員会決議の本社一括届出を認めると共に、②定期報告は6か月後に行い、その後は健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類の保存を義務付ける。
裁量労働制の本旨の徹底
・裁量労働制を導入しながら、出勤時間に基づく厳しい勤怠管理を行う等の実態があることに対応するため、始業・終業の時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを法定し、明確化する。

 以上のように、従来の企画業務型裁量労働制を見直し、その手続きを簡素化すると共に、いわゆるコンサルティング営業や品質管理業務などにも適用範囲を拡大するという方向性が示されています。営業職については事業場外みなし労働時間制の運用厳格化の動きがあり、裁量労働制を適用できないかというような意見もありますが、今回の改正においては一般的な営業職についての適用は難しいという印象を受けます。但し、ホワイトカラーエグゼンプションによる適用除外についてはより厳しい要件が設定されることを勘案すれば、今後、ホワイトカラーの柔軟な働き方を促進するためには裁量労働制の更なる緩和が予想されるところではないでしょうか。より効率的な働き方の推進と共に、時間ではなく仕事や成果で評価する人事諸制度の重要性が高まることは間違いありません。


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2014年11月14日「年次有給休暇 取得義務化の場合の「一定日数」の水準はどうなるか?」
http://blog.livedoor.jp/otsuakinori/archives/41275450.html
2014年10月3日「内閣府が目論む来年9月の9連休と年次有給休暇の取得促進」
http://blog.livedoor.jp/otsuakinori/archives/40478549.html

参考リンク
厚生労働省「第122回労働政策審議会労働条件分科会資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000071225.html

(大津章敬)

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