育児休業期間中の社会保険の取り扱いについて教えてください

 大熊の説明を聞き、育児休業についてかなり詳しくなってきた宮田部長。この問題について更に興味が沸いて来て、社会保険や雇用保険についての取り扱いについて質問してみることにした。



宮田部長宮田部長:
 わが社では産前産後休業中もそうですが、育児休業期間中には給与を支給しないことになっています。この場合、育児休業期間中、保険料はかからないと記憶しているのですが間違いないでしょうか?
大熊社労士:
 はい、まず雇用保険は毎月のの給与支給額に対して雇用保険料率を乗じて算出する仕組みですので、給与額が0円であれば当然保険料は発生しません。それだけではなく雇用保険からは育児休業を行う者に対して、一定の条件を満たせば育児休業に対する給付金を受けることができます。
宮田部長:
 そのことでしょうか、給付金で家計がかなり助かったという話を聞いたことがあります。でも、実際どの程度もらえるのですか?
大熊社労士:
 休業期間中は「育児休業基本給付金」として賃金の30%、職場に復帰して6ヶ月経過後に「育児休業者職場復帰給付金」として賃金の20%、合わせると賃金の50%が支給されることになります。具体的に計算してみると、月額20万円の給料をもらっていた人の場合、例えば10ヶ月間育児休業をした後、職場に復帰し6ヶ月経過するといくらになるか。単純化して計算してみると総額では、20万円×10ヶ月×50%(30%+20%)=100万円となります。
宮田部長:
 ほぉー、結構な支給額になりますね。家計が助かるというのも納得できます。
大熊社労士:
 支給額が大きいので、くれぐれも申請手続きを忘れないようにしてください。支給申請の時期を過ぎた場合は、支給されなくなります。なお、支給期間は子が1歳に達するまで。特別に必要と認められる場合は1歳6ヶ月までです。
宮田部長:
 この特別な事情とは、育児休業のところでお聞きした内容と同じと考えてよいですか?
大熊社労士:
 はい、それで結構です。なお、職場復帰給付金は育児休業が終わって休業前と同じ会社に復帰し、引き続いて6ヶ月以上雇用されているときに支給されますが、育児休業者が現実に職場復帰していない場合でも、その会社に在籍し6ヶ月が過ぎれば支給申請をすることができます。
宮田部長:
 健康保険や厚生年金保険の保険料の取り扱いはどのようになりますか?
大熊社労士:
 健康保険や厚生年金保険ですが、雇用保険とは仕組みが異なります。通常、病気休職などにより給与が支払われないような場合であっても保険料は発生しますが、育児休業期間中に限っては被保険者分だけでなく、事業主分も含めて保険料は免除されます。
宮田部長:
 事業主分も免除されるのは会社としても助かりますね。保険料免除の期間は、子が1歳に達するまで。特に必要と認められる場合は1歳6ヶ月までですね。
大熊社労士大熊社労士:
 基本はそうですが、これに加えて会社の規程に基づいて3歳に達するまでの子を養育するために育児休業に準ずる休業を取っている者については、3歳まで保険料が免除されます。事例はまだそれほど多くないとは思いますが、この点が雇用保険とは違いますね。ちなみに保険料の免除に関して、産前産後期間は育児休業期間ではありませんので保険料は免除されません。この点を混同しないよう注意しておいてくださいね。
宮田部長:
 そう、出産に関することと、育児に関することは別でしたね。ついうっかり同じように考えがちですので気をつけておきます。
大熊社労士:
 免除される期間は、育児休業を開始した月から、育児休業が終了した月の前月までです。ただし、育児休業の終了日が月末の場合は、その月についても保険料が免除されることになります。また、満40歳以上65歳未満の者が育児休業を開始した場合は、介護保険料も免除となります。
宮田部長:
 40歳以上で出産される方もいますからね。
大熊社労士:
 その他に、奥さんが40歳未満でもご主人がかなり年上のカップルも世間には多くいらっしゃいます。そのご主人さんが、育児休業を取る場合なども考えられますね。まだ男性が育児休業を取得するという例は少ないとは思いますが、ご主人さんが育児休業を取る場合は奥さんの場合と違って、子の誕生から取ることが可能となりますので覚えておいてください。
宮田部長:
 産前産後休業から育児休業に関して基本がわかってきました。ありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は育児休業の雇用保険・社会保険の取り扱いについて取り上げてみました。育児休業にあたって保険給付を受けたり、保険料を免除してもらうためには手続きが必要です。それぞれの手続きには提出期限が設けられていますので注意してください。例えば、雇用保険から支給される育児休業基本給付金は2ヶ月ごとに申請手続きを行わなければなりませんが、その期間は指定されますので育児休業者が出た場合には何を、いつ、どこに提出しなければならないか、担当者は予めスケジュールを立てておくとよいでしょう。初めて行う手続きでは、特にわからないことが多いと思いますので余裕をもって顧問の社会保険労務士やハローワーク(公共職業安定所)、社会保険事務所などへ問い合わせを行ってください。



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参考リンク
ハローワーク「育児休業給付について」
http://www.hellowork.go.jp/html/info_1_h3d.html#b-1
厚生労働省「男性の育児のための休暇取得の在り方」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/01/h0122-3e.html
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=1334


(鷹取敏昭)


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