問題社員への対応以前に社内ルールが周知・徹底されていますか?

 勤務時間外のアルバイトや残業拒否、ダラダラ残業への対応方法を学んだ服部社長と宮田部長だが、社員にその他の問題行動が生じたときの対応に不安を感じたため、基本的な対応方法を大熊社労士に質問した。



服部社長服部社長:
 勤務時間外にアルバイトをしている社員や残業を拒否する社員、ダラダラ残業する社員への対応方法を教えていただきました。これ以外にも、大熊先生はいろいろな会社で問題を起こす社員への対応アドバイスをされているのでしょうね。
大熊社労士:
 そうですね、これまで様々な相談対応をさせていただきました。例えば、仕事中に私用メールを頻繁に使う社員、遅刻や欠勤の多い社員、協調性のない社員、突然金髪にしてきた社員、行方不明になり連絡が取れなくなる社員、社内で暴力を振るう社員、上司に罵声を浴びせる社員など、本当にいろいろな問題社員がいました…。
宮田部長:
 もし万一、そのような問題社員がわが社で出てきたときには、すぐ大熊先生に相談しますのでよろしくお願いします。
服部社長:
 宮田部長、大熊さんに頼るばかりではなく、ある程度は自ら対応できるようになっておいてもらいたいね!
大熊社労士:
 私を頼りにしていただいていることはありがたく思っていますが、問題が起こったときには、やはり最初の対応を適切に行うことがとても大事です。問題が起こったその場に私がいる訳ではありませんし、私が御社からの連絡を受けて状況を確認し、アドバイスを出すとしてもやはり時間がかかりますので、その間の対応は御社の方でやってもらわないといけません。
宮田部長宮田部長:
 えぇ、分かっています。こういうトラブルはなんでもかんでもまず総務部長のところに集まってきますから。しかし、いままでこれといって問題となることはなかったのですが、最近は多くの企業でトラブルが増加していると聞くと、この先少し不安です。どうすればよいでしょうか?
大熊社労士:
 はい、まず問題行動を発見したときには、慌てず落ち着いて対応することが何よりも大切です。ケースによっては腹が立ったり、頭に来ることも多いと思いますが、そこで冷静さを失って不用意な発言をしてしまうと、後々事態がこじれることになります。問題行動が起こったとしても、たいていの場合、1分1秒を争って即座に決断をしなければならないことは少ないと思われますから、状況や事態をしっかりと把握するようにしてください。いろいろな情報から、なぜ問題行動を起こしたのかが分かってくれば、自然と冷静になってくると思います。
服部社長:
 他に問題を起こした社員への対応で、気をつけておかなければならないことは何でしょう?
大熊社労士:
 平等に対応することです。例えば、とても優秀な社員が連絡もなく2日連続で無断欠勤をしたとしましょう。上司としては優秀な社員だからと問題を大きくしたくない、穏便に済ませたいと思うこともあるでしょうが、しかし、それを許してしまうと他の社員に示しがつかなくなり、その後に同様のことが起こった場合に注意や処分ができなくなります。ルールに違反しているのであれば、その問題行動の都度、注意や指導、処分をするべきでしょう。これは、優秀な社員の将来のためでもあります。
服部社長:
 確かに。優秀な社員だからといって何でも許されると思われては、その社員自身の規律が緩み、次第にルーズな面がいろいろなところで出てきて、同じような問題行動が他の社員に広がることは予想できるよね。それは避けたいところだ。
大熊社労士大熊社労士:
 ところで、そもそも会社から社員に職場のルールがきちんと示されているかというと、そうでもない場合が結構あります。会社としては、それぐらいは分かっているだろうと思っていても、社員の方はルールや基準を十分理解しておらず、両者の認識が食い違っていることから問題となることが少なくありません。
宮田部長:
 具体的にはどういうことでしょうか?
大熊社労士:
 例えば、会社のパソコンを使い仕事中に、私用でWEB閲覧をしているケースで、会社側はそれはやってはいけないことと考えているが、社員側はほとんどの社員が同様のことをしており、当然許されることだと思っているようなときです。このような場合、会社のパソコンを使う上でのルールをきちんと定め、周知していないということがほとんどです。入社時教育などにおいてルールとして、きちんと説明し理解させることが必要です。また、情報管理に関する社内研修会も随時実施することも必要でしょう。
宮田部長:
 就業規則に書いていれば良いのではないですか?
従業員ハンドブック大熊社労士:
 もちろん、就業規則の服務心得等にルールとしてきちんと書いておく必要がありますが、それ以上に常日頃から上司がルールに基づいてきちんと指導教育していくことが重要です。そのためには、就業規則の中で、特に社員に理解しておいてもらいたい内容を抜粋し、さらにそれを噛み砕いてわかりやすくした「従業員ハンドブック」や「職場のルールブック」のようなものを作成することもお勧めしています。ちょうどこんな感じですね。
服部社長:
 それを利用して、上司が職場の基本ルールを部下に教え、指導教育していけばよいということですね。わかりました、わが社でも作成したいと思います。大熊先生、お手伝いください。
大熊社労士:
 もちろんです。では、次回訪問までに素案を作成してまいります。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は問題社員への基本的な対応方法について取り上げてみました。問題社員へ対応はその状況のほか、会社のルール整備の状態、職場の規律の度合いなどによって変わってきますが、基本はルール違反があったときに放置・放任しないで速やかに対応することが大切です。しかし、そもそもそのルールがしっかりと社員に示されていないことも多いため、問題行動がなくならなかったり、違反に対する注意指導で返ってトラブルになることもあります。したがって、職場のルールをわかりやすく、きちんと伝え理解させておくことがとても重要です。加えて、職場をまとめる管理者にも労務管理に関する基礎的な知識を学ばせておくことも必要です。これらのツールとして活用できるのが、「従業員ハンドブック」や「職場のルールブック」だと思いますので、ぜひ皆様の会社でも作成されてはいかがでしょうか。



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2006年11月03日「【労務管理は管理職の役割】残業命令の条件」
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2006年5月7日「会社の望む仕事以外で残業する従業員への対処」
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(鷹取敏昭)


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