ダラダラ残業をしている社員にはどう対応すれば良いですか?
残業拒否への対応について学んだ服部社長だが、知り合いの社長がその対極にあるダラダラ残業について悩んでいることを思い出した。そこで大熊社労士に、その対応方法について相談してみることにした。
服部社長:
先日は残業拒否への対応を教えてもらいましたが、数日前にわが社とほぼ同規模の同業会社の社長と話をしていたところ、残業時間が多くて困っているという話を聞きました。残業は少ない社員でも月60時間、多い社員だと100時間もあるらしいのです。さらに年間を通してほぼ同じ時間数ということらしいので、比べてみるとわが社の約2倍となります。
大熊社労士:
ほぉ、結構な時間数ですね。仕事が特殊なのですか?
服部社長:
そうではなく、どうも話を聞いていると所定の労働時間中ダラダラと仕事をして、仕事を残し、わざと残業をしている様子もあるらしいのです。
大熊社労士:
なるほど、残業代を稼ごうとしているのでしょうね。
服部社長:
残業代もバカにならないほど支払っており、人件費が次第に経営に悪影響を及ぼしていていると、そこの社長はお話されていました。
大熊社労士:
そうでしょうね。残業時間分は割増して賃金を払っていますから、経営側は大変です。ましてそれで売上が伸びれば良いのでしょうが、売上が変わらず人件費だけが伸びるとなると深刻ですね。
宮田部長:
話を聞いていて思ったのですが、ダラダラ残業をそのままにしておくと効率的に仕事を行った真面目な社員よりも、ダラダラ残業社員の方が給料が高くなってしまい、真面目な社員のモチベーションがダウンしないでしょうか。
大熊社労士:
恐ろしいのはそこです。この状態は真面目に頑張っている社員が損をする、バカをみることになり、そのうちに真面目な社員もやる気を失ってダラダラと残業をし始めるという最悪のシナリオに繋がりかねません。また会社としても、ダラダラとした残業であっても労働時間は長くなることに変わりありませんので、過重労働の問題や健康診断の追加実施など、安全配慮面でのリスクや負担が増えることになります。
宮田部長:
ダラダラの残業だと緊張感がないはずなのに、過労死や健康面での安全配慮ですか?腑に落ちませんね!?
大熊社労士:
確かに気持ちは分かりますが、客観的な時間数という面からみれば長時間労働であることに変わりはありませんので、一定程度のリスクは発生するでしょう。また、ダラダラ残業の他にもお付き合い残業というものもあります。自分の業務は終了しているのに、残業している同僚を待つために形だけ残業をしているように装うことで、これも見逃すことはできません。
服部社長:
業務が終了しているのであれば、早々に退社させるべきだと思いますが、なぜできないのでしょうね?
大熊社労士:
ダラダラ残業やお付き合い残業が普段から許されてしまっていることに問題があるでしょう。
宮田部長:
そういう職場風土になってしまい、ダラダラ残業やお付き合い残業が当たり前、慣れきってしまっているということでしょうか。
大熊社労士:
そうでしょうね、歯止めが利かなくなってしまっているように思います。
服部社長:
管理職にもっと責任をもってやってもらわなければならないように思いますが、違いますか?
大熊社労士:
確かに管理職の責任は大きいでしょう。残業内容をまったくチェックしていない。残業を社員の判断に完全に委ねてしまっている。ダラダラ残業を注意しない。残業に対するコスト意識がないなど、かなり大きな問題ですので対策を打たなければならないでしょう。しかし、管理職だけに任せず、人事担当者や経営者も一緒になって対策を講じなければダメだと思います。上からの残業を減らせ減らせというかけ声だけだと、残業に慣れきっている職場では馬耳東風で結局何も変らないということになってしまう可能性が高いからです。そういうことは多くの職場で実際に見られています。
服部社長:
なるほど、そうかもしれないね。残業は賃金に直接影響があるだけに、現場だけで対応させるのは無理があるもしれない。会社の考え方を明確にして、現場の管理職のサポートをしてやることが大切ですね。大熊さん、ありがとうございました。早速、ダラダラ残業で悩んでいるその社長にこの話を教えてあげることにします。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は、ダラダラ残業をしている社員への対応について取り上げてみました。一番やってはいけないことは、残業を放任することです。残業について届出をさせている会社は多いと思いますが、上司はただ単に承認印をついているだけで、必要性の有無や残業内容はほとんど見もしない、というところも多いのではないでしょうか。これでは放任状態と同じです。こうなれば社員はやりたい放題になってしまい、歯止めが利かなくなります。そのような放任状態になってしまった職場にメスを入れようとするとかなり大掛かりな手術が必要です。そのため現場の管理職だけではなく、人事責任者や経営者も加わって本格的な手段を講じていくことが必要でしょう。例えば、業務量と人員配置が適正か、管理者に求めるべきものが明確か、管理職教育は行っているか、管理職の業務が過大ではないか、管理職と人事担当者との情報交換や意見交換は行われているか、そして会社や職場の規律はあるか、など総合的に考え、会社全体としての対策をとるべきでしょう。
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2006年11月03日「【労務管理は管理職の役割】残業命令の条件」
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2006年5月07日「会社の望む仕事以外で残業する従業員への対処」
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2007年2月8日「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)」
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2007年2月7日「時間外・休日勤務申請承認書」
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参考リンク
福岡労働局「時間外労働 休日労働 に関する協定届:記載例」
http://www.fukuoka.plb.go.jp/29joken/joken01_09.html
(鷹取敏昭)
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