派遣社員を受け入れるときの36協定はどのように考えたらよいのですか?

 以前、労働者派遣について大熊社労士からレクチャーを受けていた服部印刷であったが、早ければ今月から派遣社員を受け入れることになった。そこで、実際に派遣社員を受け入れる際の注意点にについて改めて大熊社労士に質問している。



服部社長服部社長:
 お蔭さまで業績も順調なため、派遣社員を1名採用することにしました。いろいろな派遣会社と相談してみましたが、名古屋市内に支店のある派遣会社に決め、いまは派遣社員が決まってくれるのを待っている状態です。
大熊社労士:
 業績順調で喜ばしいことですね。派遣社員については、最近何かと話題になっていますが、法令に基づいて活用されるようお願いしますね。
服部社長:
 分かりました。それで早速確認なのですが、派遣社員との雇用契約は派遣元会社が行うということで間違いありませんよね。
大熊社労士:
 はい、派遣社員との雇用契約は派遣元の会社が行いますので、派遣先である御社には原則として雇用契約上の責任はありません。
宮田部長:
 派遣社員の労働条件として、わが社が知っておかなければならないことはありますか?
大熊社労士大熊社労士:
 御社は派遣元会社と労働者派遣契約に基づいて派遣社員を労働させることになりますので、その範囲で義務を負うことになります。しかし、一部の事項については派遣先、つまり御社が責任を負うべきことが労働者派遣法に定められています。具体的には、労働時間、変形労働時間制の適用、休憩、休日、時間外及び休日の労働、深夜業、育児時間、生理日の休暇などの事項です。例えば、休憩を取らせないことは、社員の場合でも違法となるように、派遣社員でも問題となりますので、これらについては派遣社員にも労働基準法に則った対応をしてください。もし、これらについて違反すると、派遣先である御社としても労働基準法違反として責任が問われます。
宮田部長宮田部長:
 わかりました、気をつけておきます。以外のことは派遣会社が責任を負うと考えてよいでしょうか?
大熊社労士:
 はい、以外の雇用契約の締結や労働条件の設定、雇用契約の解除などの雇用契約関係については、派遣元の会社が労働基準法上の責任を負うことになります。
服部社長:
 派遣社員に時間外労働や休日労働をさせても構わないのですよね?一応、派遣元の会社からは構わないと話を聞いています。
大熊社労士:
 時間外労働については、派遣元の会社の時間外・休日労働協定(36協定)が適用されます。派遣先で36協定を締結していても、派遣元で36協定が締結されていなければ、時間外労働や休日労働をさせることはできません。また、派遣元会社で36協定が締結されていたとしても、協定で定められた時間数以上の時間外・休日労働を派遣先でさせることもできませんので、注意してください。
宮田部長:
 36協定の時間数の確認をしておいた方がよいですね。
大熊社労士:
 そうしてください。また、変形労働時間制を派遣社員に適用させる場合も同様の考え方になります。派遣元会社の就業規則等でその定めをしていなければ、派遣先では変形労働時間制を利用することはできませんので、このこともご承知ください。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。派遣労働者を受け入れるときの派遣先事業主の責任について取り上げてみました。派遣労働者は、派遣元事業主との間で雇用契約を締結しますので、派遣先には原則として雇用契約上の責任は生じません。派遣先は、労働者派遣契約に基づいて派遣労働者を労働させることになりますので、その範囲で義務を負えばよいということになります。しかし、実際に派遣労働者を働かせる場合には、派遣先にも労働基準法上の責任が生じる場合があります。それは本文でも書きましたように、労働時間、休憩、休日等に関することで、雇用契約の締結や労働条件の設定、雇用契約の解除などの雇用契約に関することについては、派遣元事業主が労働基準法上の責任を負うことになります。派遣元事業主がすべての責任を負うのではなく、派遣元と派遣先とが役割を分担しながら適切に派遣労働者を活用していくということになります。


 なお、派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用については以下のblog記事をご参照下さい。
2008年3月28日「派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用(労働安全衛生法編)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51287066.html
2008年3月22日「派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用(労働基準法編)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51285988.html


[関連法規]
労働者派遣法 第44条(労働基準法の適用に関する特例)
 労働基準法第9条に規定する事業(以下この節において単に「事業」という。)の事業主(以下この条において単に「事業主」という。)に雇用され、他の事業主の事業における派遣就業のために当該事業に派遣されている同条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業に使用される者及び家事使用人を除く。)であつて、当該他の事業主(以下この条において「派遣先の事業主」という。)に雇用されていないもの(以下この節において「派遣中の労働者」という。)の派遣就業に関しては、当該派遣中の労働者が派遣されている事業(以下この節において「派遣先の事業」という。)もまた、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、同法第3条、第5条及び第69条の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。
2 派遣中の労働者の派遣就業に関しては、派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、労働基準法第7条、第32条、第32条の2第1項、第32条の3、第32条の4第1項から第3項まで、第33条から第35条まで、第36条第1項、第40条、第41条、第60条から第63条まで、第64条の2、第64条の3及び第66条から第68条までの規定並びに当該規定に基づいて発する命令の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。(以下略)



関連blog記事
2008年6月30日「派遣が始まる前に派遣労働者に面接をしてはいけないのですか?」
https://roumu.com/archives/64926519.html
2008年6月23日「派遣期間の制限を超えた場合は、どのようになるのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/64925125.html
2008年6月16日「派遣期間の制限は派遣社員や派遣会社が変わった場合、どのようになるのですか?」
https://roumu.com/archives/64910644.html
2008年6月9日「派遣労働者の受入には期限があるのですか?」
https://roumu.com/archives/64910632.html
2008年6月2日「派遣と請負とは何が違うのですか?」
https://roumu.com/archives/64910574.html
2008年3月28日「派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用(労働安全衛生法編)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51287066.html
2008年3月22日「派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用(労働基準法編)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51285988.html
2008年3月17日「産業医選任義務の従業員数50名に派遣労働者は含めるのか」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51279846.html
2008年3月15日「派遣先責任者選任義務の範囲」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51278351.html
2007年10月20日「8年間で企業における派遣労働者の割合が倍増!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51128275.html
2008年5月28日「派遣先管理台帳(平成20年4月改正版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55060672.html


参考リンク
厚生労働省「労働者派遣事業・職業紹介事業等」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai.html
東京労働局「労働者派遣事業関係」
http://www.roudoukyoku.go.jp/seido/haken/conttop.html
Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog「労働者派遣関連書式」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/cat_50241670.html


(鷹取敏昭)


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