朝礼の時間は労働時間に当たるのですか?

 服部印刷では、社内の情報共有をより一層図ることを目的として、全体朝礼の実施を計画していた。そこで宮田は朝礼を始業時刻前に行う場合にその時間の取扱いをどのようにしたらよいのか、大熊社労士に相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今日は労働時間について相談に乗っていただきたいのですが。
大熊社労士:
 いいですよ。具体的にはどのようなお話でしょうか?
宮田部長宮田部長:
 はい、実は当社では来月から全体朝礼を月初に行おうと考えています。会社のいろいろな情報がみんなに行き渡らないということがありまして、それでは朝礼をしようという話になったのです。当社の始業時刻は9時ですが、9時からスタートしていては業務に支障が出る恐れがあるので、8時半からスタートしようと思っているのですが、問題はありませんか?
大熊社労士:
 全従業員について、30分前に必ず出社するようにされるのですね。その場合は、会社が出社するように義務づけをしていますので、労働時間として取り扱う必要があります。そもそも労働基準法で言う「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮監督のもとにある時間」のことを指しており、労働時間であるか否かは、実態をみて指揮監督のもとにあるかどうかの基準で判断をすることになっています。
宮田部長:
 指揮監督ですか。
大熊社労士大熊社労士:
 はい。例えば、製造業の工程作業で、前の作業が遅れているために待っているような時間、手待時間については、一時的に作業をしていなくても、前の作業が進んで自分のところに製品が来れば、直ちに作業を行うことになります。そのため、これは使用者の指揮監督のもとにある時間と考えられることから、労働時間となります。
福島さん:
 では、自主的な勉強会はどのように考えたら良いでしょうか。
大熊社労士:
 これも実態をみて判断することになり、それに参加しなければ業務に支障が生じたり、出欠を取るなどして参加が強制されていれば、労働時間として取り扱う必要があります。一方、自由参加であれば、労働時間とはならないとお考え下さい。
福島さん:
 なるほど、参加の義務付けや強制という点がポイントになるのですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。
宮田部長:
 そうかぁ。でも今回の目的からすれば自由参加では意味がないからな。どうしよう。
大熊社労士:
 そうですね。現実的には事前に資料配布を行うなどして、朝礼の時間を短くした上で、所定労働時間内に行うことなども検討されるのが良いかもしれません。この他に注意しなければならないものとしては、安全衛生教育の時間があります。
福島照美福島さん:
 安全衛生という点で言えば、当社では衛生委員会の会議を終業時刻後に行っているのですが、この時間についてはどのように考えれば良いのでしょうか?
大熊社労士:
 衛生委員会についても通達(昭和47年9月18日 基発第602号)が出されており、衛生委員会の会議の時間については、労働時間として取り扱う必要があります。会社として職場の安全衛生を確保していくためにも重要な会議ですから、労働時間となります。
宮田部長:
 わかりました。今後については、できれば就業時間内に行うように設定し、できなければ時間外労働として取り扱うようにしていきます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は労働時間の範囲について取り上げてみましたが、以下では出張の移動時間の取扱いについて補足しておきましょう。例えば月曜日の朝から遠方で会議があり、参加するために前日の日曜日に移動するようなケースがありますが、この日曜日に移動する時間については、労働時間として取り扱わなければならないのでしょうか。出張の移動時間については、毎日の通勤時間と同一の性質のものであると考えられることから、労働時間とはなりません。ただし、骨董品を運ぶなど、移動中も商品の監視をしなければならないような状態であれば、移動時間であっても監視業務が命じられていますので、それは労働時間として取り扱う必要があります。労働時間の判断については、どこからが労働時間なのかという点が問題となりますので、過重労働を防止していく上でも、労働時間を適正に把握していくことが求められます。



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(福間みゆき)


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