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定年延長後に旧定年年齢で退職金を支給する場合の退職所得控除の適用可否

退職金 退職金についてはよく「ほぼ非課税で受給できる」と言われます。退職金は税務上、退職所得として扱われ、非常に大きな所得控除が用意されているというのがその理由となります。具体的な所得控除額は、勤続年数が20年を超えるときであれば、原則として800万円+70万円×(A-20年)(Aは勤続年数)となります。よって例えば勤続30年であれば、所得控除額は1,500万円。中小企業の退職金であればこの控除額を超えることは稀でしょう。そして退職金の額が退職所得控除額を超える場合であっても、その超えた額の2分の1に相当する額に対しての課税となりますので、退職所得については税制面でかなり優遇されていることが分かります。

 言い換えれば、なんらかの事情で退職所得控除が適用されないことになってしまうと、非常に大きな負担が発生するということになります。ここで問題になるのが、定年の引き上げ時の取り扱いです。

 近年、深刻な人材難の対策として、65歳などへの定年年齢の引き上げを行うような事例が増えています。先日、国税庁に定年引上げ後、退職金を旧退職年齢である60歳の時点で支給する場合の退職所得控除適用の可否に関する疑義照会が掲載されました。

[疑義照会の内容]
 当社は、人口減少社会の到来による新規採用の困難さを打開し、安定的に雇用を確保しながら事業を前進させるために、就業規則を改定し、2019年4月1日より従業員の定年を60歳から64歳に延長することを決定しました。この定年延長に伴い、賃金規則を改定の上、従業員の入社時期にかかわらず、一律で延長前の定年(以下「旧定年」といいます。)である満60歳に達した日の属する年度末の翌月末までに退職一時金を支給することを予定しています。この退職一時金は、引き続き勤務する従業員に対して支給するものであり、本来の退職所得とはいえませんが、所得税基本通達30-2(5)《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》に定める給与に該当し、退職所得として取り扱ってよいか照会いたします。

 これに対する回答は、定年延長前から入社していた社員については、旧定年時点で退職金を支給したとしても退職所得控除の適用ができるとした一方、定年延長後に入社する従業員に対するものについては、既に定年の延長が就業規則等で決定した後に雇用されることから、雇用の開始時点で引き上げ後の定年を前提として採用されるため、所得税基本通達30-2(5)は適用されず、退職所得として取り扱われるとは限らないとしています。

 今後、定年の引き上げを検討される企業も多いのではないかと思いますので、その際には参考にしてみてください。なお、この回答内容は、熊本国税局としての見解とされていますので、実際に同様の取り扱いを行う場合には所轄の税務署や顧問税理士等に確認の上、対応されることとをお勧めします。


関連blog記事
2018年4月9日「65歳へ定年延長した企業が旧定年の60歳時点で退職金を支払う場合の税務上の取扱い」
https://roumu.com
/archives/52148577.html

参考リンク
国税庁熊本国税局「定年を延長した場合に従業員に対してその延長前の定年に達したときに支払う退職一時金の所得区分について」
http://www.nta.go.jp/about/organization/kumamoto/bunshokaito/gensenshotoku/001/index.htm
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」2018年4月1日
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm

(若林正幸)

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同一労働同一賃金に関する判決が続いているようですね

 この週末に開催されたマラソン大会に多くの知り合いが出場している大熊。雨の中、無事完走できたかなと思いながら服部印刷に向かった。


宮田部長:
 大熊先生、おはようございます!
大熊社労士:
 おはようございます。宮田部長はいつも元気で本当に素晴らしいですね。
宮田部長宮田部長:
 はい、なによりも元気が取り柄の宮田ですから!今日、元気がないとすれば福島さんですね。まもなくやってくると思いますが。

—- 福島さんが少し足を引きずって応接に入ってきた —-

大熊社労士:

 あら、ほんとだ。福島さん、おはようございます。足が痛そうですね、どうしたので…。あ、マラソンですか、もしかして?
福島さん:
 はい、そうなんです。昨日、フルマラソンを走って来まして。なんとか完走はしたのですが、雨の中、少し無理をしたので、足腰がボロボロ状態になってしまいました。
大熊社労士:
 まあ、お仕事に大きな支障があるような状況ではないと思いますが、ちょっと大変そうですね。でも、完走おめでとうございます。
福島照美福島さん:
 ありがとうございます。さて、仕事に話を移しますが、同一労働同一賃金に関する裁判のニュースをよく耳にするようになっているように感じるのですが、なにか動きがあるのですか?
大熊社労士:
 はい、ここに来て、高裁レベルの判決が相次いでいますね。中でも2月に判決が言い渡された大阪医科大学の事件とメトロコマース事件はかなり話題になっています。
宮田部長:
 それは、どのような内容なのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 いずれも労働契約法20条に関する裁判なのですが、大阪医科大学事件は有期アルバイトについて一定の賞与を支給を認めたもの。そしてメトロコマース事件は、売店業務に勤務していた有期契約社員に一定の退職金の支給を認めたというものになります。
服部社長:
 この2つの裁判については私も新聞で見て、驚きました。同一労働同一賃金は、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から施行だったと思ったのですが。
大熊社労士:
 はい、法改正の施行はその通りですが、今回は既に施行されている労働契約法20条を根拠に行われているものです。昨年6月1日に最高裁の判断が示されたハマキョウレックス事件、長澤運輸事件と同じ流れのものになります。
服部社長服部社長:
 なるほど、現行法制化でもこのような問題になっているということですね。しかし、ここに来て、急に流れが変わってきたという印象を受けているのですが。
大熊社労士:
 そうですね。昨年12月に銅市労働同一賃金ガイドライン(指針)が示されましたが、今回の2つの裁判はその流れに沿った内容になっています。あのガイドライン自体は法的拘束力を持つようなものではありませんが、もしかすると裁判所の判断に一定の影響を与えているのかも知れませんね。
福島さん:
 これらの事件について今後、どのようになっていくのでしょうか。
大熊社労士:
 労働契約法20条に関しては、これら以外にも多くの裁判が行われています。当面はこれらの判決により様々な論点についての判断が示され、それが最高裁で統一的な解釈として示されることになるでしょう。その日もそれほど遠くありませんので、まずは自社内の様々な待遇に関しての比較・まとめを行い、不合理な点の抽出と対応の基本方針を検討する作業を行っておきましょう。その上で優先順位付けを行い、対応することになるでしょう。
服部社長:
 分かりました。宮田部長、まずは各雇用区分の待遇を比較するような資料をまとめることにしましょうか。
宮田部長:
 承知しました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。同一労働同一賃金に関する具体的な動きが出てきました。今回は裁判例を取り上げましたが、ここに来て、基本給、賞与、退職金といった重要論点を扱う高裁判決が続いています。最終的には最高裁がその考え方のフレームを明示することになりますが、その判決が出てから現状把握を行うようでは対応が遅れてしまいますので、まずは現状把握と明らかに不合理な点の是正だけは先行して進めておくとよいでしょう。また企業の側でも日本通運で非正規従業員の賃金を正規並みに引き上げるという動きが出るなど、この春闘の中でも同一労働同一賃金に関する対応事例が出てきています。そうした流れに
ついても押さえておきたいものです。

(大津章敬)

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社労士が知っておきたい障害者施設の人事労務管理ポイント 東京・大阪・福岡で開催

障害者施設 日本全国には、数多くの障害者施設が存在し、そこで働く職員は10万人を超えるといわれています。多様な職種を抱え、複雑な勤務形態の中で多くの職員は現場で活躍していますが、我々社会保険労務士にとっては、それぞれの職種がどのような役割を担い、そもそも様々ある施設形態の違いすらわからないのが現状です。また、どういった点に遣り甲斐を感じて働いているのか、職員はどのようなキャリア形成を考えているのか等を知れば、更に深く障害者施設に対してのアドバイスが可能となるものの、そうしたことを学ぶ機会がなかなかありません。
 そこで、LCG(日本人事労務コンサルタントグループ)医業福祉部会では、実際に障害者施設で7年間の勤務経験を有し、社会福祉士・精神保健福祉士として活躍していた香喜心綜合事務所(寺田達也社会保険労務士事務所)の代表である寺田達也氏(社会保険労務士)を講師にお招きし、障害者施設の経営管理や人事労務管理のポイントを様々な角度からお話頂く研修を企画しました。
 障害者施設における現場経験が豊富な講師ですので、経営者の視点のみならず、障害者施設で働く職員の視点でも学びを得ることができるのではないかと思います。是非、ご参加下さい。
※社会保険労務士以外のみなさまもお申込みいただけます。


医業福祉部会主催セミナー 第39回
社労士が知っておきたい障害者施設の人事労務管理ポイント
~職員のキャリア形成や確保・定着の着眼点等~
講師:寺田達也氏 香喜心綜合事務所(寺田達也社会保険労務士事務所) 代表


(1)多様化する障害者施設の形態と特徴
(2)障害者施設における様々な職種の役割
(3)障害者施設の職員のキャリア形成
(4)人材確保・定着のための有効策
(5)障害者施設に多くみられる人事労務トラブルと対策
(6)障害者施設における社会保険労務士の関わり方 等
[日時]
東京会場
2019年6月3日(月)午後1時30分~午後4時30分
 名南経営コンサルティング東京事務所 セミナールーム(神保町)[2019年3月移転]
大阪会場
2019年6月6日(木)午後1時30分~午後4時30分
 名南経営コンサルティング大阪事務所 セミナールーム(中之島)
福岡会場
2019年6月10日(月)午後1時30分~午後4時30分
 名南経営コンサルティング福岡事務所 セミナールーム(博多)

[講師プロフィール]
寺田達也氏
香喜心綜合事務所(寺田達也社会保険労務士事務所) 代表
特定社会保険労務士・精神保健福祉士・社会福祉士。1973年生まれ。文教大学国際学部国際学科卒業 神奈川県川崎市内の知的障害者施設の支援員を経て、2007年横浜の税理士事務所に入社。 2012年5月、税理士事務所に所属しながら、社会保険労務士事務所を開業。現在は独立して事務所を構える。専門は福祉施設、医療機関の人事労務管理、採用支援等で、現場経験を活かした顧客指導は好評である。著書に「職場の難問Q&A 医療・介護編(医学通信社)」等がある。

[受講料(税別)]
一般 20,000円
LCG特別会員 4,000円 正会員 8,000円 準会員 12,000円

[お申し込み]
 本セミナーの申し込みは以下よりお願いします。なお、LCGメンバーのみなさんは、専用サイトMyKomonよりお申し込みをお願いします。
https://www.lcgjapan.com/seminar/sr-igyou39/

(大津章敬)

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従業員の過半数代表者の選任は適正にできていますか?

 膨らみはじめた桃の花のつぼみを見ながら、大熊は「春も近いな」と感じていた。


宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。2月は逃げるなんていいますが、本当にあっと言う間に過ぎましたね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。私も働き方改革が施行される関係で、いつもよりも多くのご相談をいただいてきました。やはりたいへんでしたね。
福島さん:
 やはりそうなのですね。実は私からも・・・
大熊社労士:
あ!もちろん、お気軽にお聞きください!
福島さん:
 ありがとうございます。3月になったので、来年度の36協定を作ったので念のために見てもらいたいと思っていました。お願いできますか。
大熊社労士:
 もちろんです。ふむふむ、ここもOKだな。
宮田部長:
 福島さん、書式って前のものを使っていたんだよね?
福島さん:
 はい。当社は中小企業なのでこれまでと同じ様式です。内容も部長とお話したように、今年度と同じ内容にしました。もちろん、残業削減は重点テーマになりますが、まだまだ特別条項をなくすようなレベルには進めませんよね。
宮田部長:
 そうだね。これから1年、先を見通しても何が起こるかわからないしね。
大熊社労士:
 よし、っと。内容は問題ありませんよ。
福島さん:
 ありがとうございます。
大熊社労士:
 ところで、従業員の代表はどなたにされる予定ですか?
宮田部長:
 んー、製造部の林くんかな。彼であれば問題ないだろうし。
福島さん:
 そうですね。
大熊社労士:
 ちょっと待ってくださいね。その林さんはどうやって選ばれたのですか?

宮田部長宮田部長:
 彼は管理職にはなっていないし、勤続は長いし、従業員のみんなからも信望が厚いし。だからと言って会社に「物申す!」という感じでもないし。従業員の代表といったら彼が適任かなと。
福島さん:
 あ!もちろん、ちゃんと全従業員に選んでもらうという手続きはちゃんとしますけどね。
大熊社労士:
 了解です。ただ、その手続き、しっかりとやってくださいね。
宮田部長:
 ん?どういうことですか?
大熊社労士:
 実は今回の働き方改革の関係で、従業員代表の選任について少し変更がありました。と言っても選任方法が変わったわけではありません。
福島さん:
 どこが変わったのでしょうか。
大熊社労士:
 はい。今回関連する部分の改正は、36協定等を締結するときに選出する従業員の過半数代表者をについて、「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」というのが、労働基準法施行規則に明記されました(第6条の2)。
宮田部長:
 そっか、「林くんがなるかなぁ」というのは私たちの勝手な思いでいいのかも知れないけど、本来は従業員が選ぶものだから、当然、私が林くんを指名するようなことがあってはいけないということですね。
大熊社労士:
 そうですね。これまでは、会社側が指名するといった不適切な取扱いがみられていた要です。通達レベルで注意がうながざれ、指導もされてきたのですが、今回は規則に盛り込まれていますので、その効果はこれまでとまったく異なります。
福島照美福島さん:
 確かにそうですよね。私も、うっかり「林さん今年もよろしくお願いします。」と言いそうになってしまいそうですので注意します。
大熊社労士:
 そうですね。細かな点ですが、でも、仮に過半数代表者の選出が違法だということになると、36協定の締結自体が無効と言われかねません。朝礼などで、選出のための場を作ることは会社として重要なことですが、選出自体は従業員に任せるようにしなければなりません。
宮田部長:
 形式的にやってきたものも、本来の意味を従業員に知らせていく必要があるのでしょうね。
大熊社労士:
 本当にそう思います。36協定はどのようなものかを説明することで、「残業をさせられている」という意識
や「残業を制限されている」という意識を少しでもなくしていくことも必要だと思います。
宮田部長:
 承知しました。適正にできるように注意しますね。ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス  こんにちは、大熊です。従業員の過半数代表者となる従業員がなかなか立候補で現れないという悩みを持つ企業もあります。しかし、過半数代表者の選出についてより厳格に見られるようになっているため、今後は過半数代表者がどういうものかも含め、従業員に説明し、また、会社が選出する(できる)ものではないことを伝えていく必要があるのでしょう。なお、36協定届を提出したときに選出方法が適切かも確認されるようです。


関連blog記事
2019年1月8日「働き方改革関連法 改正労働基準法・改正労働安全衛生法等のQ&Aが掲載された通達が発出!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52164368.html

参考リンク
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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年次有給休暇取得計画表(個人の年間取得予定を把握)

shoshiki810 これは年休の時季指定を行い従業員から希望日を提出してもらった後に、年休の取得計画を本人に知らせるための様式(画像はクリックして拡大)になります。
重要度:
官公庁への届出:なし

[ダウンロード]
WORD
Word形式 shoshiki810.doc(32KB)
pdfPDF形式 shoshiki810.pdf(3KB)


[ワンポイントアドバイス]

 年休の取得計画を作成したもの、やむを得ない事情により変更する場合が出てくるでしょう。その場合、どのような手続きが必要であり、また会社がその情報を把握していくのか、社内ルールを決めておきましょう。

参考リンク
厚生労働省「「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

(福間みゆき)

年休取得義務化で就業規則の変更は必要なのでしょうか?

 3月が近づき、かなり暖かい日が多くなってきたなと思いながら、春の気配を感じながら大熊は服部印刷への足を急いだ。


福島さん:
 大熊先生、おはようございます。かなり暖かくなりましたね。
大熊社労士大熊社労士:

 そうですね。もう春もすぐ近くまでやってきていますね。
福島さん:
 今日は、4月からの年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得義務化で確認しておきたいことがあります。
大熊社労士:
 ん?どのようなことですか?
福島さん:
 年休の取得義務化にあたり、会社は従業員に年休を取得させることになりますよね。そのときに、就業規則の変更って必要ないのかな?と思っていまして。
大熊社労士:
 あれ?私って就業規則のお話って何も出していませんでしたか!?
宮田部長:
 んー、聞いた覚えがないなぁ・・・。
福島さん:
 いえいえ、実は以前、こちらのリーフレットをいただいたときに、「就業規則の規定例も載っていますから」と大熊先生がおっしゃっていて、そのときに、あー、変更しなくてはと思っていたのですが、4月が近づき、制度が開始し、ふと忘れているかも!と気づいたのです。
大熊社労士:
 そうでしたか。説明が不足していてすみません。就業規則の変更ですが、結論から申し上げると多分。、変更が必要です。
宮田部長:
 「多分」・・・ですか?
大熊社労士:
 はい、多分(笑)。ちょうど手元に、リーフレットがあるので確認してみましょうか。ここです、7ページです。
宮田部長:
 この「Point6」ですね。
大熊社労士:
 規定例はおっしゃるとおり「Point6」なのですが、先に「Point7」を見ましょうか。表の2行目をご覧ください。違反内容の欄に「使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合」とありますよね。
宮田部長:
 ・・・え!30万円以下の罰金!?
大熊社労士:
 はい。Point6にも記載がありますが、年休のように「休暇に関する事項」は就業規則の絶対的必要記載事項となっています。つまり、必ず記載しなければならない事項です。ですから、会社が取得時季を指定して従業員に年休を取得させるときには、必ず記載しなければなりません。
 先ほど「多分」と申し上げたのは、全員が自分で年休の取得時季を指定して、年5日以上を取ることが確実な会社や、計画的付与で年5日以上を確実に取ることになる会社は、もしかするといらないかも知れないと思ったからです。
福島照美福島さん:
 確かに年休の取得率が全従業員、高いような会社は会社の時季指定がないからいいということですね。
大熊社労士:
 はい。ただ、そうは思いつつもPoint6をの規定例をご覧いただくとわかるのですが、会社の時季指定や計画的付与で取得した分は、会社が時季指定する年休から除くことになっています。結果的には取得できていない従業員について会社が取得時季を指定するよという規定になっています。
福島さん:
 以前、お聞きしたように逆に従業員自身が取得時季を指定し、5日以上取得したときには、会社は取得時季を指定できないというものですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。年休の取得率が高い企業であっても、業務の繁忙でもしかすると取れなくなってしまうかも知れない。計画的年休の運用がどうなるか分からない。ということで、もしかしたら会社が取得時季を指定するような状況は発生しないかもしれませんが、逆に発生する可能性も考慮して、就業規則を変更し、規定を盛り込むことをお勧めします。
宮田部長:
 なるほど。そして、そのときには、Pointo6の規定例を参考にする、ということですね。
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。少し硬い表現になっているので、現状の就業規則の書き方に沿って表現を変えることなどもご検討くださいね。
宮田部長:
 承知しました。アドバイスも含め、社長に申し伝えることにします。就業規則の修正案を考えてみますので、チェックしてくださいね。
大熊社労士:
 はい、もちろん!お待ちしています。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス 
 こんにちは、大熊です。働き方改革関連法の一部施行まで、残り1ヶ月強となりました。年休の取得義務化については、就業規則の変更が必要になります。3月中とは言わないものの、遅くとも、会社が取得時季を指定する前までには規定を盛り込む必要がありますので、早めに対応するようにしましょう。


関連blog記事
2019年1月14日「年休取得義務化 前年からの繰越日数についてはどのように取り扱えばよいのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/65805920.html
2019年2月1日「年休取得義務化に対応した年休管理台帳がダウンロードできます」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52165580.html
2017年9月18日「働き方改革推進のための法改正が具体的に動き始めました」
https://roumu.com/archives/65785098.html

参考リンク
厚生労働省「「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

(宮武貴美)
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年次有給休暇取得計画届提出のお願い

shoshiki809 これは年休の時季指定を行う際に、従業員から希望日を提出してもらうための様式(画像はクリックして拡大)になります。
重要度:
官公庁への届出:なし

[ダウンロード]
WORD
Word形式 shoshiki809.doc(35KB)
pdfPDF形式 shoshiki809.pdf(26KB)


[ワンポイントアドバイス]

 会社が時季指定を行う際には、就業規則への規定が必要になります。規定漏れがないようにしましょう。

参考リンク
厚生労働省「「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

(福間みゆき)

大学生の就職先選択の決め手1位は「自らの成長が期待できる」

会社選択 大卒新卒社員の採用に苦戦している企業が多いのではないかと思います。より効果的な採用活動を行うためにはいまの学生の会社選びの基準を理解しておくことが重要です。そこで今回は、リクルートキャリアが2018年12月1日時点で民間企業への就職が確定している大学生に対して実施した、「就職先を確定する際に決め手になった項目」についての調査結果を取り上げましょう。

 男女別の回答は以下のようになっており、「自らの成長が期待できる」が1位となっています。
47.1% 自らの成長が期待できる
37.8% 福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している
37.0% 希望する地域で働ける
29.5% 会社や業界の安定性がある
27.5% 会社・団体で働く人が自分に合っている
22.2% 会社・団体の理念やビジョンが共感できる
20.2% 会社や業界の成長性がある
19.4% 年収が高い
16.1% ゼミや研究等、学校で学んできたことが生かせる
16.0% 教育・トレーニング環境や研修制度が充実している
15.1% 会社・団体の知名度がある
15.0% フレックス制度、在宅勤務、テレワーク、育児休暇等、
14.3% 働き方に関する制度が充実している
10.2% 会社・団体の規模が大きい
 9.4% 裁量権のある仕事ができる
 9.4% 課題活動(サークル、アルバイト)や学校以外で学んできたこと・経験を活かせる
 1.7% 会社・団体の規模が小さい
 1.1% 副業ができる

 また、この結果の男女別のトップ3は以下の通りとなっており、女性に限定すると「希望する地域で働ける」が1位となっていることが分かります。
[男性]
49.0% 自らの成長が期待できる
32.8% 福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している
28.9% 希望する地域で働ける
[女性]
46.4% 希望する地域で働ける
44.8% 自らの成長が期待できる
43.6% 福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している

 今後の採用広報においてはこうした結果も意識し、ホームページの制作やセミナーのコンテンツなども検討されるとよいのではないでしょうか。


参考リンク
リクルートキャリア「就職プロセス調査」
https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2019/190131-01/

(大津章敬)

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自己申告による労働時間の把握が厳格化されるのですか?

 2月も中旬となり、働き方改革関連法の施行が近づいてきた。


大熊社労士:
 おはようございます。
服部社長服部社長:
 大熊さん、おはようございます。ここに来て、梅の花も咲き始めるなど、少しづつ春めいてきましたね。ということは働き方改革関連法の施行も間近ということになりますね。
大熊社労士:
 そうですね。御社では年休取得義務化の対応など、しっかり対応されているので問題ないと思いますが、先週も同一労働同一賃金に関して、非正規従業員について賞与の支給を命じる高裁判決などもあり、更なる対応を検討しなければならない状態となってきました。
服部社長:
 非正規従業員に対して賞与の支給ですか。当社の場合はほとんど正社員なのでその問題はあまり大きくはないのですが、非正規が多い会社では大変な問題となりそうですね。
大熊社労士大熊社労士:
 本当にそうですね。さてさて、今日は昨年末に発出された働き方改革に関連する通達で注目の内容がありますので、お話ししたいと思います。
宮田部長:
 それはどんな内容なのですか?また4月までに対応しなければならない事項が増えるとちょっと大変なんですけど…。
大熊社労士:
 残念ながら4月の法改正に関する内容です。通達の名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について(基発1228第16号 平成30年12月28日)」となります。
宮田部長:
 ひやぁー、難しそうです。
大熊社労士:
 要は労働安全衛生法に関する通達なのですが、私が注目したのは、労働時間の状況の把握(新安衛法第66条の8の3並びに新安衛則第52条の7の3第1項及び第2項関係)の問12「労働時間の状況の把握方法について、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合とは、どのようなものか。」という内容です。
福島さん:
 具体的にはどのような内容なのでしょうか?
大熊社労士:
 今回の安衛法の改正では、すべての労働者について、原則としてタイムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録、事業者の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻等を把握しなければならないとされました。その際、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」には自己申告制が例外的に認められるとされています。
福島さん:
 ということはこの問12は、自己申告制が認められる場合という風に理解すればよろしいのでしょうか?
大熊社労士:
 福島さん、すごい。そのとおりです。それでは通達におけるその答を見ていきましょう。段落として3つのパートに分かれており、まず最初の段落では、一般論が述べられています。


「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること。


福島さん:
 「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」とは、まずは直行直帰などの場合が想定されているということですね。
大熊社労士:
 そうです。その上で問題となるのが次の段落。ここでは、直行直帰などにより事業場外で勤務する場合の取り扱いが述べられています。


ただし、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。


宮田部長宮田部長:
 これってすごく厳しい内容ではないですか?いまどき、普通にスマホやパソコンを持っていて、社外からもモバイルでグループウェアに接続して報告書を登録するなんていうのは当たり前に行われていますよね?
大熊社労士:
 そうなんです。そのような場合には「自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない」とされているのです。現実的にどの程度の指導が行われるのかはまだ分かりませんが、営業職などの外勤者の労働時間の把握についても、アクセスログなどに基づいて行うことが求められる可能性は高いのではないかと考えています。そして内勤者について述べられているのが、最後の段落です。


また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、認められない。


福島照美福島さん:
 あらら、この内容ですと、事務職のほとんどで自己申告は認められないとなりそうですね。当社の場合はタイムカードで把握しているので問題はないですけど。
大熊社労士:
 そうですね。小規模な事業所などではタイムレコーダーの導入にもコストがかかるということで、自己申告での労働時間把握が行われていることが多いですが、このあたりにも指導が入ることになるかも知れません。
服部社長:
 なるほど。時代の変化を感じさせる通達ですね。
大熊社労士:
 同感です。このように労働時間管理は、IT化やモバイル化によって変化していくのでしょうね。4月以降、労働基準監督署がどのような姿勢で指導するのかはまだ分からないところはありますが、自己申告のみで対応しているケースではそろそろ見直しが求められそうです。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今日は昨年末に発出された労働安全衛生法の通達から、自己申告による労働時間把握に関する内容を取り上げました。過重労働対策を進めるためには労働時間の状況の把握がこれまで以上に重要になるのは間違いありません。自己申告制で把握している企業はもちろんのこと、それ以外の企業でも、労働時間の実態との乖離がないかなど確認と是正を行うようにしていきましょう。


関連blog記事
2019年1月8日「働き方改革関連法 改正労働基準法・改正労働安全衛生法等のQ&Aが掲載された通達が発出!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52164368.html

参考リンク
厚生労働省「「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

(大津章敬)

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年次有給休暇の計画的付与に関する協定(個人別付与方式:厚生労働省提供版)

shoshiki807 これは、個人別付与方式で年次有給休暇を計画的付与する場合の労使協定例(画像はクリックして拡大)です。

重要度:
官公庁への届出:不要
法定保存期間:特になし(協定期間)

[ダウンロード]
WORDWord形式 shoshiki807.docx(14KB)
pdfPDF形式 shoshiki807.pdf(3KB)
[ワンポイントアドバイス]
 計画年休の導入には、就業規則による規定と労使協定の締結が必要になります。この計画的付与制度により取得した年次有給休暇も、5日取得義務化の5日としてカウントされます。


参考リンク
厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
https://www.lcgjapan.com/pdf/20181225nenkyu.pdf

(渡たかせ)

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