退職後に受給する傷病手当金のポイントと実務上の注意点
これまで数回に亘り、平成19年4月改正の健康保険について、その改正ポイントを取り上げてきました。今回の制度改正においては、任意継続被保険者に対する傷病手当金が廃止となりましたが、継続給付について改正は行われていません。継続給付の要件を満たしている者については、平成19年4月以降についても傷病手当金の受給が可能です。今回は実務上、混乱しやすい傷病手当金の継続給付について、事例を含め考えてみましょう。
[質問]
先日、健康診断で肺がんにかかっている社員がいることが分かりました。本人と相談したところ、治療に専念をしたいということで、一旦、退職したいとの申出がありました。退職日は6月30日と決定したのですが、6月中旬に施術を行う予定があり、手術後は安静が必要なため欠勤する予定とのことです。今年(平成19年)の4月から任意継続被保険者に対する傷病手当金の支給が廃止になったと聞きましたが、この社員が任意継続被保険者の申請を行っても退職後は傷病手当金が支給されないのですか?
[回答]
今回廃止された給付は、任意継続被保険者になった後に労務不能となった場合の傷病手当金の支給です。この方の場合、退職後に受けられる可能性がある傷病手当金の継続給付制度については改正が行われていませんので、以下の条件を満たしていれば退職後も給付を受けることができます。
資格喪失日の前日(6月30日)までに1年以上被保険者期間がある
資格喪失時に傷病手当金の支給を受けているか、受ける条件を満たしている
傷病手当金は、任意継続被保険者の申請を行うか否かに関わらず、条件を満たした上で請求を行うことで受給することができます。したがって、事前にこの方の資格取得日を確認し被保険者期間を調べ、受給できるか被保険者期間の要件を満たしていることを確認の上、退職後の手続方法および給付額を調べておくとよいでしょう。
[まとめ]
私傷病で退職をする今回のようなケースでは、退職日まで労務不能状態であるにも関わらず、無理を押して引継のために出勤するようなケースが時折見られます。この継続給付制度では、資格喪失時に傷病手当金が受けられるか否かの状態が重要となります。社員の好意を持って出勤するという行動が退職後の給付を受けられないと結果につながる可能性もあるため、今回の改正の機会に制度の詳細を整理する必要があるかも知れません。
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参考リンク
社会保険庁「健康保険任意継続被保険者のしおり」
http://www.sia.go.jp/infom/pamph/dl/kempo4.pdf
愛知社会保険事務局「社会保険あいち5月号」
http://www.sia.go.jp/~aichi/kouhousi/s1905.pdf
(宮武貴美)
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