[中国労働契約法]遂に発表された労働契約法実施条例

 2008年1月より施行された労働契約法の細則として、実施条例が9月に発表されました。もともと、2007年中にも発表されるはずだった、この実施条例ですが、紆余曲折を経て、遂に発表されました。ここまで時間がかかった要因として、中国を取り巻く企業の環境変化が挙げられると思われます。その変化要因とは、「労働契約法が労働者サイドに寄ったものであったこと」、「2008年に入り、中国経済を支える輸出型企業の業績悪化が鮮明になったこと」、「2008年5月に出した草案で意見を募集したところ、企業側から強硬な反対意思があがったこと」などがあげられます。


 結果、今回発表された実施条例は、評価が非常に難しいものとなっています。労働契約法が全98条からなるのに対し、実施条例は38条となり、細則というには具体的な規定は数が少なくなっています。つまり、曖昧さを残した玉虫色の規定ともいえます。おそらく今後の通達等で随時補足されていくことになるのでしょう。下記に、いくつか明らかになっている条項を列挙します。



労働契約が未締結となっている場合の取り扱い(第5条、第6条)
 労働者が書面での契約を締結しない場合、1ヶ月以内に解除通知を出せば、経済補償の支払は不要。しかし、1ヶ月を超えて解除通知を行なう場合には経済補償の支払が必要となる。


就業年数の起算日(第9条)
 労働者を実際に雇用した日から起算することとなり、施行日前の就業年数も含まれる。


就業年数の引継(第10条)
 従業員が本人の原因によらず、雇用単位を異動することとなった場合、従前の雇用単位での就業年数は、新規の雇用単位での就業年数に加算される。しかし、異動の際に、従前の雇用単位での就業年数に基づき、経済補償を支払った場合は、加算されない。


無固定期間労働契約の締結(第11条)
 労働者が労働契約法14条第2項の規定に従い、無固定期間労働契約の締結を提案したときは、雇用単位は締結を拒否できない。したがって、労働契約の2回目の更新をする際に、労働者から提案されたときは拒否できない。このように考えると、実質的には1度目の更新の時に雇用単位側での判断が必要となる。


試用期間の賃金(第15条)
 試用期間の賃金について、「同一持ち場の最低賃金」又は「労働契約で約定した賃金」の80%、かつ所在地の最低賃金を下回ってはならないことが明記された。


労働契約期間の延長(第17条)
 教育訓練等を受けさせ、その服務期間を設定した場合、労働契約期間がその服務期間内に終了しても、服務期間の終了時まで労働契約期間が延長される。


請負契約の経済補償(第22条)
 一定の業務完了を期限とする労働契約の場合、終了時にはその期間に応じた経済補償を支払う必要がある。


賠償金と経済補償(第25条)
 労働契約法の規定に違反して、労働契約を解除・終了させた場合に必要となる賠償金(労働契約法第87条)の支払を行なった場合、経済補償金の支払は不要。


経済補償の基準給与(第27条)
 経済補償の基準給与には「時間当たり賃金、出来高賃金、賞与、手当、補助手当等の貨幣性収入」が含まれることが明記されている。



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(上海名南企業管理咨詢有限公司 近藤充)