[ワンポイント講座]雇用保険未加入が判明した場合の手続きと修正申告
2008年12月9日のブログ記事「政府の新雇用対策に掲げられた雇用保険制度の改正方針」でも取り上げたように、厳しい雇用情勢を踏まえ、非正規労働者や離職者へのセーフティーネット強化を目的として、雇用保険制度の改正が検討されています。これに対し、法律上当然に雇用保険へ加入しなくてはならないにもかかわらず、未加入であるがゆえに、失業給付が受給できないこと等が問題視されています。そこで今回は、雇用保険に未加入であることが判明した場合の実務処理について、以下の2つに分けて考えてみましょう。
雇用保険の遡り加入手続き
そもそも雇用保険は、一定の要件を満たした場合に当然被保険者となるため、未加入が判明した場合は、原則としてこの要件を満たしたときに遡って資格取得の手続きをしなければなりません。ただし雇用保険法には時効の規定があり、遡りの限度は届出をした日より最大2年間となります。この届出の際には、通常の資格取得手続きにおける添付書類以外に、遡りが必要な期間分の賃金台帳とタイムカード等の写しが必要です。なお、3月9日のブログ記事「6ヶ月以上遡って雇用保険に加入する際には遅延理由書の添付が必要に」でお伝えしたとおり、6ヶ月以上訴求して加入する際には遅延理由書(任意書式)を添付しなければならなくなりました。
労働保険の修正申告
雇用保険の未加入者があった場合には、の遡り手続きの他に、労働保険の修正申告が必要な場合があります。そもそも労働保険は、原則として労災保険と雇用保険から成り立っていますが、今回のように雇用保険に未加入であったということは、労災保険料のみを納付しており、雇用保険料は未納付となっています。したがって遡って加入した期間分の雇用保険料を納付することが新たに必要です。ただしすべての場合において修正申告が必要になるわけではありません。労働保険料は年度単位で保険料額を確定・納付しているため、遡った期間が年度を跨いだ際に申告することになります。年度更新の手続きとしては、遡った期間について前年度分の賃金を正しく集計し直し、納付済みの労働保険料と再集計した労働保険料の差額を納付します。この際の添付書類は、当初提出した申告書・賃金集計表のコピーと、再集計後の申告書・賃金集計表です。なお、遡った期間が年度を跨がない場合は、次の年度更新時に未加入だった者についてもあわせて確定申告することになるため、修正申告は必要ありません。
非正規労働者を中心に、これから年度末にかけてさらなる多くの離職者の発生が懸念されており、雇用保険の失業等給付はこれまで以上に重要なものとなっています。この機会に未加入者の是正は当然のこととして、加入漏れがないか確認することが求められます。
[関連法規]
雇用保険法 第74条(時効)
失業等給付の支給を受け、又はその返還を受ける権利及び第10条の4第1項又は第2項の規定により納付をすべきことを命ぜられた金額を徴収する権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する。
関連blog記事
2009年3月9日「6ヶ月以上遡って雇用保険に加入する際には遅延理由書の添付が必要に」
https://roumu.com
/archives/51515812.html
2009年3月9日「遅延理由書(雇用保険資格取得届)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55233114.html
2009年3月7日「平成21年1月に激増した雇用調整助成金の申請」
https://roumu.com
/archives/51512930.html
2009年2月28日「[ワンポイント講座]出向先で役員となった従業員の労災保険・雇用保険の取扱い」
https://roumu.com
/archives/51510404.html
2009年2月21日「[ワンポイント講座]小規模事業所の法人代表者が業務上で怪我をした場合の給付の特例」
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/archives/51506938.html
2009年2月20日「[速報]4月からの労災保険料率決定 保険料率表のダウンロード開始」
https://roumu.com
/archives/51506533.html
2009年1月21日「改正雇用保険法案が昨日閣議決定 雇用保険適用範囲が拡大へ」
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/archives/51489035.html
2009年1月9日「平成21年度より申告・納付時期が変更となる労働保険の年度更新」
https://roumu.com
/archives/51482172.html
2008年12月9日「政府の新雇用対策に掲げられた雇用保険制度の改正方針」
https://roumu.com
/archives/51465429.html
(佐藤浩子)
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