恒久的に42万円となった出産育児一時金と医療機関の受取代理制度
健康保険の被保険者およびその被扶養者(以下「被保険者」という)が出産した場合には、原則として1児につき42万円の出産育児一時金が支給されます。この出産育児一時金については、平成21年10月1日以降の出産から38万円から42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は39万円)に引き上げられた経緯があります。また、この引上げに併せ、出産育児一時金を出産にかかる費用に充てることができるように、保険者が医療機関等に直接支払う仕組み(直接支払制度)が創設されました。これにより出産にかかるまとまった費用を事前に用意する必要がなくなり、出産する被保険者の負担は軽減されました。
このうち、出産育児一時金の額の引上げについては、平成23年3月31日までの暫定措置とされ、平成23年度以降の出産育児一時金制度については検討事項とされていましたが、平成23年3月30日の官報で「健康保険法施行令等の一部を改正する政令(平成23年3月30日政令第55号)」が公告され、健康保険法施行令の出産育児一時金の額が書き換えられるとともに、平成23年3月31日までとされた経過措置の附則条文が削除されました。これにより、平成23年4月1日以降も出産育児一時金の額は原則として42万円となりました。
この変更のほかに、新たに直接支払制度への対応が困難と考えられる小規模施設等における出産について、受取代理の仕組みが制度化されています。これは、被保険者が受け取るべき出産育児一時金を医療機関等が被保険者に代わって受け取る制度のことです。この制度を利用することで直接支払制度と同様に、被保険者が医療機関等へ支払う出産費用の負担の軽減を図ることができることになります。この受取代理制度を利用するには「出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)」に必要事項を記載し、保険者へ申請する必要があります。なお、受取代理制度を利用できる医療機関等は、厚生労働省への届出が必要であるため、この制度を利用するには、事前に出産を予定している医療機関等で確認しておく必要があります。
リーフレット「平成23年4月以降の出産育児一時金制度について」ダウンロード
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50975720.html
関連blog記事
2010年11月26日「支給額42万円の恒久化が厚労省部会で議論される出産育児一時金」
https://roumu.com
/archives/51800177.html
2010年11月12日「上限額の設定などが検討される傷病手当金と出産手当金の改正」
https://roumu.com
/archives/51798278.html
2009年9月10日「出産育児一時金 制度の見直しの概要」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50531831.html
2009年8月28日「10月より変更される出産育児一時金の支給額と支給方法」
https://roumu.com
/archives/51610637.html
2009年5月26日「出産育児一時金の引き上げが官報公告により正式発表」
https://roumu.com
/archives/51558424.html
2009年4月2日「出産育児一時金 2009年10月より原則42万円に引上げ」
https://roumu.com
/archives/51528865.html
2008年12月9日「平成21年1月1日より出産育児一時金が38万円に引き上げ」
https://roumu.com
/archives/51463116.html
参考リンク
厚生労働省「平成23年4月以降も、引き続き、支給額を42万円とします」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken09/07-2.html
協会けんぽ愛知支部「出産育児一時金の受取代理制度について」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/13,69591,94,151.html
協会けんぽ「出産に関する給付」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/8,273,25.html
法令等データベース「健康保険法施行令等の一部を改正する政令(平成23年3月30日政令第55号)新旧対照表」
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H110331S0041.pdf
(宮武貴美)
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