労政審報告書骨子案に見る中小企業の60時間超の割増50%の適用などの方向性
先週以降、第122回労働政策審議会労働条件分科会において公表された「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)」の中から、2016年4月に予定される労働時間法制改革の方向性についてお伝えしています。今日はとりあえずの最終回ということで、中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の見直しについて取り上げます。
実務上の影響が非常に大きいと予想されるこの件については、報告書骨子案では以下のように記載されています。
中小企業において特に長時間労働者比率が高い業種を中心に、関係行政機関や業界団体等との連携の下、長時間労働の抑制に向けた環境整備を進める。
上記の環境整備を図りつつ、中小企業労働者の長時間労働を抑制し、その健康確保等を図る観点から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする労働基準法第37 条第1項ただし書きの規定について、中小企業事業主にも適用する。
中小企業の経営環境の現状に照らし、上記改正の施行時期は平成●年とする。
現在、中小企業について猶予されている60時間超の割増率については、今回、猶予が廃止され、中小企業にも適用されることとなりそうです。施行時期は2016年4月以降と言われており、ここは若干の調整が入るかも知れません。
また、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で常時10人未満の労働者を使用する事業場について週44時間の取り扱いが認められている特例措置対象事業場についても、その範囲の縮小を図る方向で検討を続け、法案成立後、改めて審議会で検討の上、所要の省令改正を行うことが適当とされています。中小企業においては労働時間制度について様々な例外が設けられてきましたが、今回の改正でそれらは徐々に廃止されていくことになりそうです。
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参考リンク
厚生労働省「第122回労働政策審議会労働条件分科会資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000071225.html
徳島労働局「特例措置対象事業場」
http://tokushima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/hourei_seido/tokurei01.html
(大津章敬)
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