周囲との協調性がない社員にはどのように対応すればよいですか?

 派遣社員の採用も落ち着いた服部印刷では、入社して1ヶ月になる女性社員のことでトラブルが起こっていた。この女性社員は周囲との協調性がなく、同僚からも苦情が多数寄せられている。彼女の上司から相談を受けた宮田部長が頭を抱えているところに、大熊社労士がちょうど定期訪問に訪れた。



大熊社労士:
 宮田部長、こんにちは。
宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。ちょうどいいところに来てくださいました。実は頭の痛い問題が起こっておりまして…。
大熊社労士:
 何かあったのですか?
宮田部長:
 えぇ、1ヶ月前、業務部に中途で入社した女性社員がいるのですが、彼女のことで、業務部の同僚の多くが苦情を言ってきているのです。
大熊社労士:
 そうでしたか。具体的にどのような苦情が来ているのですか?
宮田部長宮田部長:
 はい、先輩社員の言うことを聞かない、話をしているのに返事をしない、勝手に業務を進めるなど、協調性のなさが目立つようなのです。これまで業務部でこのような問題が起こったことはほとんどなかったのですが、この女性社員の言動により、部内の雰囲気がとても悪くなっていると報告を受けています。もしこのままの状態が続くようであれば、辞めてもらうしかないというような話にまで発展してしまっているようで、困っていたのです。
大熊社労士:
 とはいえ、宮田部長は法的にはそんなに簡単に解雇できるわけではないことをご存知ですので、現場の声と法律の板ばさみになってしまっているのではないですか?
宮田部長:
 そうなんですよ。やはり法的には解雇は難しいのですよね?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、もちろん協調性のなさは普通解雇事由になりますので、解雇ができないということはありません。しかし、それが法的に正当であると認められるためには、それ相応の理由が必要になります。単に協調性がなく、職場の和を乱すという程度ではなかなか難しいでしょう。そもそも、その女性社員とこの問題について直接話し合いをしたり、指導をしたりしたことはありますか?
宮田部長:
 確認してみないと分かりませんが、たぶんまだ何もしていないと思います。
大熊社労士:
 そうですか。それではまだ解雇がどうこうという段階ではありませんね。まずは業務部の上司の方が本人と面談することから始めましょう。そこで彼女の話を聞くと同時に、こちらからも業務部の一員として求められる人材像、そして現在の問題点について伝えるとよいでしょう。
福島照美福島さん:
 そうですね。業務部は隣の部署なのですが、女性社員の比率が高く、彼女と年齢の離れているベテラン社員が多く在籍しています。中には口調の厳しい先輩社員の方もいて、言い過ぎではないかと心配になる場面もときどき目にしています。
宮田部長:
 確かにそうだね。彼女にも言いたいことがあるかもしれない。それでは彼女の上司にさっそく面談や指導を行うように伝えることにしましょう。大熊先生、他に気をつけたほうがよいことはありますか?
大熊社労士:
 はい、まずは改善に向けた注意や指導を行うことが重要です。それで問題が解消すれば一件落着となりますが、残念ながら改善が見られない場合の対応も考えておくべきでしょうね。もし今後も本人の協調性のなさが改善されず、業務上支障をきたすようであれば、随時、始末書や顛末書を提出させて、会社として指導を行った記録を残すようにしてください。最悪、解雇せざるを得なくなった場合には、解雇の理由として改善指導をしたかが重要になってきます。
宮田部長:
 わかりました。まずは状況が改善することを願いながら、指導をしていくこととします。ありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は周囲との協調性がない社員への対応について取り上げました。同じミスを繰り返す、業務命令に従わないなど、最近は職場にさまざまな問題社員が増えています。まずは本人への指導・面接等を行って経過を観察する必要がありますが、それでも改善されない場合、残念ながら解雇ということもありえます。しかし、解雇は原則として「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効」となるため、慎重に判断する必要があります。こうした問題行動が見られる際には、以下のポイントを押さえて、対応することが重要です。
□当該社員の問題行動に対して、随時適切な指導を行っているか。
□そもそも社内のルールや基準が明確になっているか。
□問題行動が続く場合には、始末書や顛末書を取るなど、指導記録を残しておく。
□場合によっては配置転換を実施する。
□指導を行う際にはそれがハラスメントと取られないように注意する。
□就業規則を整備し、懲戒や解雇に関する規定を明確化しておく。


[関連法規]
労働契約法 第16条(解雇)
 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。



関連blog記事
2008年9月30日「小冊子「労働トラブル増加時代の職場規律の改善ポイント」無料ダウンロード開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51418203.html
2008年2月25日「問題社員への対応以前に社内ルールが周知・徹底されていますか?」
https://roumu.com/archives/64832365.html
2008年2月18日「ダラダラ残業をしている社員にはどう対応すれば良いですか?」
https://roumu.com/archives/64814259.html
2008年2月14日「従業員ハンドブックの取り組みが中部経済新聞に取り上げられました」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51254565.html
2008年2月11日「社員が残業命令を無視して帰宅してしまいました!」
https://roumu.com/archives/64807506.html
2008年02月04日「勤務時間外にアルバイトしている社員の対応はどうすれば良いでしょうか?」
https://roumu.com/archives/64802957.html
2007年2月12日「内定者が鼻ピアスをして来ました!」
https://roumu.com/archives/52248098.html


(佐藤浩子)


当社ホームページ「労務ドットコム」および「労務ドットコムの名南経営による人事労務管理最新情報」「Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog」にもアクセスをお待ちしています。