どのような場合に防火管理者を選任しなければならないのですか?

 服部印刷では、衛生管理者の選任するなど安全衛生管理体制については対応できているが、他に法令で選任しなければならないことに見落としがないか、宮田部長は大熊社労士に相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。前回、ご相談しました安全運転管理者ですが、やはり私が対応することになりました。
大熊社労士:
 そうですか。
宮田部長宮田部長:
 これで安全運転管理者については対応が完了しますが、これと同様に選任が必要な事項で見落としがないか心配をしているのですが、大丈夫でしょうか?
大熊社労士:
 そうですね。衛生管理者の選任等については、以前お話しましたので、問題ありませんね。また、印刷の溶剤を取扱う際に有機溶剤作業主任者を選任しなければならないなど、業界特有のものがあるかも知れませんね。そちらは製造部長に確認をお願いできませんか?
宮田部長:
 分かりました。
大熊社労士:
 それ以外ですと、防火管理者というものがあります。
宮田部長:
 防火管理者ですか?火元責任者というのは聞いたことがありますが。
大熊社労士:
 はい、それでは防火管理者について解説しましょう。防火管理者は消防法によって選任が義務づけられており、甲種防火管理者と乙種防火管理者の2つがあります。それぞれについて対象となる事業場の概要は、以下のとおりです。
甲種防火管理者
・特定防火対象物では収容人数30人以上で延べ面積300平方メートル以上の事業所
・非特定防火対象物では収容人数50人以上で延べ面積500平方メートル以上の事業所
乙種防火管理者
・特定防火対象物では収容人数30人以上で延べ面積300平方メートル未満の事業所
・非特定防火対象物では収容人数50人以上で延べ面積500平方メートル未満の事業所
宮田部長:
 特定防火対象物と非特定防火対象物というのは何ですか?
大熊社労士大熊社労士:
 特定防火対象物とは、劇場や百貨店、旅館、ホテル、病院など、不特定多数の人が出入りする建物のことで、非特定防火対象物とは、図書館や工場、駐車場、倉庫など特定防火対象物以外のものを言います。
宮田部長:
 ということは当社は、非特定防火対象物になりますね。その場合、現在従業員が30名であるため防火責任者を選任する必要はないということですね。一安心です。今後のためにも、どのような人が防火責任者を担えばよいのでしょうか?
大熊社労士:
 防火管理者は防火管理に関する知識や技能を持ち、防火管理上必要な業務を適正に遂行することができる管理的、または監督的な地位の人が相応しいですね。
宮田部長:
 選任する必要が出てきたら、製造部長にお願いすることにします。
大熊社労士:
 防火管理者になるために講習に参加する必要があります。その講習は消防機関が実施しており、甲種では2日、乙種では1日となっています。次に、火元責任者についても補足しておきますが、オフィスの入り口にネームプレートが掲げられていることがありますね。
宮田部長:
 そういえば、他の企業を訪問した際、見たことがありますね。
大熊社労士:
 火元責任者は法令で選任が義務づけられているものではなく、防火管理者の補助をする人として消防署の指導によって置かれています。
宮田部長:
 義務ではなかったのですね。当社としては、事業所の防火管理をしていくために、まずは防火管理者を置いて、安全で安心して働いてもらえるように対応していきます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は防火管理者について取り上げてみました。防火管理者については、上記のとおり講習を受ける必要がありますが、平成15年6月に消防法が改正され、比較的大規模な建物の防火管理者については、甲種防火管理新規講習修了後、5年以内ごとに再講習を受講することになっています。具体的には、不特定多数の人が出入する収容人員が300人以上の建物において、現在防火管理者として選任されている者のうち、甲種防火管理講習を修了することにより防火管理者の資格を取得した者が対象となります。なお、収容人員が少ない事業所(避難困難施設[特定用途]10人未満、避難困難施設を除く特定用途30人未満、非特定用途50人未満)の防火管理者に選任されている者は、受講義務はありません。会社としては、防火管理者の選任の対象となっている場合は、すみやかに講習を受講してもらい選任することが求められます。なお、防火管理者を選任・解任した場合は届出が必要となっていますので、手続については最寄りの消防署に確認ください。



関連blog記事
2009年10月19日「社有車を5台以上使用する場合は安全運転管理者を選任しなければならないのですか?」
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2008年3月24日「衛生委員会ではどのようなことを行えば良いのでしょうか?」
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2008年3月17日「産業医にはどのような役割があるのですか?」
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2008年3月10日「衛生管理者が長期で休んでしまったら、どうすれば良いのでしょうか?」
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2008年3月3日「従業員50名以上になったときに求められる安全衛生管理体制とは?」
https://roumu.com/archives/64834156.html


参考リンク
東京消防庁「防火管理の基礎知識」
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/office_adv/kisochishiki/index.html
名古屋市「防火管理者選任(解任)届出書」
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/todokede/shinsei/bousai/bouka/nagoya00004909.html


(福間みゆき)


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