出張のため休日に出発する場合は、休日労働として割増賃金の支払いが必要ですか?

 服部印刷では県外に営業先があり、担当者から顧客訪問のため休日に出発する場合、その日は勤務日になるではないかという質問が宮田部長に寄せられた。そこで宮田は、休日に出発しなければならない場合の取扱いについて、大熊社労士に相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。
大熊社労士:
 年末調整の時期となりましたが、資料の回収は順調に進んでいますか?
宮田部長宮田部長:
 いえ、それがなかなかでして…。保険などの資料を提出していない者がおり、ちょうど催促しているところです。さて今日は出張の際の賃金の取扱いについて相談させてください。当社の営業エリアは東海圏が中心ですが、ここ最近、遠方の営業先が増えており、遠いところとしては福岡があります。
大熊社労士:
 そうですか、ここから行くとなると、3~4時間はかかりますね。
宮田部長:
 実はですね、先日、福岡の営業先を担当している者から相談がありまして、商談のため月曜日の朝にアポイントが入っており、日曜日(会社休日)に移動しなければならないとき、その日曜日は勤務日になるのではないかと言ってきたのです。こういったケースは初めてなのですが、この場合、出勤となり割増賃金の支払いが必要なのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 なるほど。ありそうなケースですね。結論からお話すれば、今回のケースでは割増賃金の支払いは必要ありません。これは意外に思われるかも知れませんですが、この日曜日には移動を行っただけですので、賃金の支払いは不要なのです。詳しく説明しましょう。そもそも労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令のもとに置かれている時間のことを指し、実際に労務の提供をしていなくても、使用者の指揮命令のもとにあると評価できる時間、例えば手待時間についても労働時間となります。
宮田部長:
 出張のための移動時間も、使用者の指揮命令下にあるのではないでしょうか?
大熊社労士:
 確かに移動時間は、業務を行う上で必要な時間ですが、移動している間は本を読んだり、居眠りをしていてもよい自由な時間です。
福島照美福島さん:
 使用者の指揮命令下にあるのではないので、日曜日に移動した場合については、それは労働時間にはならず、つまり出勤扱いとはしなくても問題ないということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。しかし、休日に移動しなければならないという負担がありますので、企業によっては日当を支給することでそのバランスを調整しているのです。
宮田部長:
 日当となると出張旅費の関係ですね。当社ではもともと日当の設定がありませんでしたが、支給を検討してみるものよさそうですね。社長の考えも聞いてみます。
大熊社労士:
 以前に検討した取扱いが現状と合わなくなっていたり、実際の取扱いが規程と異なっていたりすることがありますので、出張旅費規程についても就業規則を見直すタイミングでチェックして見られるのがよいですね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は休日に出発する場合の割増賃金の取扱いについて取り上げてみましたが、ここで法定休日に勤務した場合の割増賃金率について補足しておきましょう。法定休日労働については3割5分以上の割増賃金を支払う必要がありますが、法定休日に8時間を超えて勤務した場合の割増率はどのようになるのでしょうか。この場合の取扱いについては通達(昭和22年11月21日 基発第366号、昭和33年2月13日 基発第90号、平成6年3月31日 基発第181号、平成11年3月31日 基発第168号)が出されており、8時間を超えていたとしても深夜業に該当しない限り3割5分以上の割増賃金を支払っていれば問題ないとされています。また、来年4月に改正労働基準法が施行され、月の時間外労働時間が60時間を超えた場合、5割以上の割増賃金の支払いが必要となります(※中小企業については当分の間猶予)。そのため会社としては、割増賃金の取扱いを整理しておくことが望まれます。



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(福間みゆき)


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