雇用保険の失業手当は離職後、いつからもらえるのですか?

 服部印刷での雇用保険の失業手当受給に関する説明も4回目となり、離職理由と基本手当を受給できるまでの期間の関係についての話になっている。


大熊社労士:
 こんにちは。9月に入ったというのに、全国各地では夏の最高気温を更新しているようですね。
福島さん:
 本当にそうですね。会社の麦茶も驚くほどのスピードでなくなるので作るのも大変です!
大熊社労士:
 さて、今日は離職してから基本手当がもらえるまでの期間の話でしたね。1年半程前に改正が行われたところも関係してくる内容ですよ。
福島照美福島さん:
 雇用保険は毎年改正があるようなイメージですね。数年前に雇用保険料率が変更になる、ならないで給与計算ですごく困ったことを思い出しましたよ。
大熊社労士:
 そうですね、そんなこともありましたね。確かにここ数年は毎年のように改正が行われ、取扱いが変わっていますので、十分な注意が必要となっていますよ。さて、それでは始めましょうか。
宮田部長:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 まず、社員が退職すると、離職票を持って自らハローワークに出向くというお話はしましたよね。基本手当をもらうためには、ハローワークに出向いて、求職の申込みをすることになります。
福島さん:
 以前教えていただいた「失業」の状態にあることを示すのですね。
大熊社労士:
 そうですね。こうしてハローワークに出向き、求職の申込みを行った日を「受給資格決定日」と呼び、基本手当を受ける際の起点として考えます。ここから7日間はどんな人でも基本手当を受けることはできません。これを「待期」といいます。
福島さん:
 一律にもらえない期間があるのですね。
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。そして、ここからが離職理由により異なってきます。具体的には、離職理由により3つに区分されます。まず、1つ目は定年退職や、倒産・人員整理などの会社の都合により退職したというケースです。このような方については、7日間の待期が経過した日の翌日から基本手当の支給対象となります。そして、2つ目が自己の都合により退職したというケースです。これは7日間の待期が経過した後、さらに3ヶ月間は基本手当が支給されません。この基本手当が支給停止となることを「給付制限」と呼んでいます。
福島さん:
 前回、先生がおっしゃっていた「日数の問題もありますが、離職してから基本手当がもらえるまでの期間が違う」というのはこの部分ですね。
宮田部長宮田部長:
 そうか、解雇という会社の都合による退職という理由であれば、自己都合より基本手当が3ヶ月早くもらえる、しかもたくさんもらえる、ということなんだ。そりゃ、転職先が決まっていないような退職者にはすごく大きな問題になるなぁ。
大熊社労士:
 そうなんですよ。当然なのですが、失業したら給料はもらえないわけですので、やはりすぐにでもお金が欲しいとなりますよね。この給付制限の有無は失業者にとっては大きな問題でしょう。
宮田部長:
 確かにね。でも、自分から辞めるって言ってるんだから、当面の生活費くらいは事前に用意しておくべきですよ。
大熊社労士:
 おっしゃるとおりです。雇用保険は国が用意するセーフティーネットではありますが、自己都合退職の方まで手厚く保護する必要はないと思っています。さて、話が少しズレていますので元に戻しましょう。最後の3つ目は、自己の都合により退職したのではあるけれども、その退職にやむを得ない事情があるとハローワークが判断したケースです。この場合は、1つ目に挙げた会社の都合により退職したケースと同様に考えられますよ。
宮田部長:
 へぇ。でも、自己都合なのにやむを得ないとはどういうことが想定されているのですか?
大熊社労士:
 はい、例えば勤務時に残業がものすごく多かったケースや、採用条件と提示されたものと実際の労働条件が極端に異なっていたというようなケースが想定されています。先ほど少しお話しましたが、この判断はハローワークが行うことになりますので、退職者がハローワークに出向き、求職の申込みをした際に調整されることとなります。
福島さん:
 ということは、離職票はあくまでも自己都合ということでよいのですね。
大熊社労士:
 そうですね。ただ、退職者がハローワークに出向いた後に事実確認の連絡や資料提出が求められたりしますので、そのときには協力する必要がありますね。
福島さん:
 はい、では、そのようなことがあれば速やかに協力することにしますね。
宮田部長:
 ところで大熊先生、前回、特定受給なんとかとかいう言葉が出ていましたが、これは今回のお話のどこにかかわってくるんですか?
大熊社労士大熊社労士:
 まさにいまからお話しようとしていたことです。ありがとうございます。これから出てくる用語としては「特定受給資格者」と「特定理由離職者」があります。まずは「特定受給資格者」ですが、これは前回お話に出ていた基本手当がたくさんもらえる人たちのことです。
宮田部長:
 あの、細かい日数の表があったやつですね。
大熊社労士:
 あはは、そうです。倒産・解雇等により、再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた人たちは、その表で日数を判断することになりますね。先ほど例で挙げた残業が多いことが理由で自己都合退職をした人もこの特定受給資格者になることがありますよ。
福島さん:
 何か細かい基準のようなものがあるのですか?
大熊社労士:
 そうですね、ちょうど7月に判断基準を載せたパンフレットが厚生労働省から出たところですよ。こちらのブログに載せておきましたので、確認してみてくださいね。ちなみにこのブログには「特定理由離職者」の説明も載っています。
宮田部長:
 ややこしい名称ですね。「特定受給資格者」と「特定理由離職者」ですか。
大熊社労士:
 確かにこの2つは混同してしまいそうな名称ですね。今回併せて説明しようと思っていましたが、少し話しが長くなりそうですよね、「特定理由離職者」については次回に回しましょうか。
福島さん:
 そうですね。それまでしっかり復習しておきます。大熊先生、今日もありがとうございました。

 

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。失業の給付はこのように離職理由により受給日数も支給時期も変わってくることになります。そのため、退職者から自己都合退職であるにも関わらず「解雇扱いにして欲しい」という申し出を受けることがありますが、企業としては事実をありのままに記載することが重要です。離職理由を偽装することで、不正受給に加担することがないように注意しましょう。


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(宮武貴美)

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