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時間外手当の割増率を確認しましょう!

 前回は時間外手当の計算方法のうち、対象賃金と平均所定労働時間について解説を行った大熊。今回は引き続き、残りの割増率についての説明を見てみることにしましょう。



大熊社労士大熊社労士:
 時間外手当の計算に必要な対象賃金と、平均所定労働時間について確認しましたので、最後に割増率 について説明しましょう。労働基準法では、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならないとされていますので、それを超える時間外労働をさせたときには使用者にペナルティー的な意味合いを持たせて、通常の賃金よりも多く支払うことを義務付けています。それが、いわゆる割増賃金のことです。では、その割増率はご存知ですか?
宮田部長:
 えぇ、時間外に労働させたときには25%、休日に労働させたときには35%ですね。
大熊社労士:
 そうです。そのほかに深夜労働の際には25%以上が加算されることになります。
宮田部長:
 そうそう、それもありましたね。
大熊社労士:
 御社は所定労働時間が1日につき8時間ですので、それを超えた労働時間に対して25%以上の割増率で計算された時間外手当が必要となります。次に、休日労働をさせた場合の割増率についてですが、ここで言う休日労働とは法定休日のことを指します。この法定休日に労働させたときには35%以上の割増率となります。
服部社長:
 法定休日?休日の出勤は常に35%という訳ではないのですか?
大熊社労士:
 はい、法律は法定休日とそれ以外の休日を分けて考えています。それでは法定休日の内容について説明しましょう。労働基準法では週1回は労働者に休日を与えなければならないと規定されています。この週1回にあたる休日が法定休日となります。したがって、週休2日制の御社では2日のうちいずれかの日が法定休日となり、もう1日が法定外休日となります。一般的には、日曜日を法定休日とし、土曜日を法定外休日としているところが多いでしょう。この場合、法定休日である日曜日の割増率は35%となりますが、法定外休日の土曜日の割増率は、通常の時間外労働と同じ25%の割増率で良いのです。
服部社長服部社長:
 なるほど、当社の場合は土曜日出勤については25%で良いということか。宮田部長、どうだ、当社では法定休日と法定外休日を分けて計算しているかね?
宮田部長:
 いいえ、土曜日と日曜日のいずれも35%で計算していました。
大熊社労士:
 そうですか。もちろん土曜日も35%で計算してはいけないという訳ではありません。しかし、35%で計算すると10%分多めに時間外手当を払っていることになります。それでは御社の場合、どの程度多めに支払っているかを計算してみましょう。



大熊はここで、前回の計算例を利用して計算を行った。





大熊社労士:
 対象賃金が280,000円、所定労働時間が170時間とすると、280,000円÷170時間ですから、1時間あたりの通常の賃金は1,647円になります。この金額について割増率を10%多くして支払うと、1,647円×10%=165円となり、1時間あたり165円多く払っていることになります。土曜日に8時間出勤した者が8名いたとすると、165円×8時間×8人=10,560円となり、毎月この額を多めに払っている計算になります。年間にすると126,720円になります。
服部社長:
 その程度ですか。まあ、額としてはそれほど大きなものではないし、社員にしてみれば土曜日と日曜日のいずれも休日出勤ということに変わりはない。土曜日と日曜日で差がつくのはいかがなものだろうか。宮田部長はどう思いますか?
宮田部長宮田部長:
 はい、社長と同じ意見です。当社ではそれほど支給対象者も多くありませんし、土曜日も引き続き35%割増で計算することにしたいと思います。もちろん、できるだけ休日には出勤しないように更に工夫していくつもりです。
服部社長:
 そうだな、そうすることにしよう
大熊社労士:
 それでは最後に深夜労働について、確認しておきましょう。深夜労働とは午後10時から翌朝5時までの間の時間帯に労働していることをいいます。したがって、通常の時間内労働であろうと時間外労働であろうと、共に25%の割増が加算されます。よって、通常の時間内労働で深夜にかかる場合の割増率は25%、平日の時間外労働が深夜に及ぶ場合は50%(時間外労働25%+深夜労働25%)、法定休日労働が深夜に及ぶ場合は60%(休日労働35%+深夜労働25%)となります。
宮田部長:
 この点については問題ありません。今後もそのとおりに処理をしています。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス みなさん、こんにちは、大熊です。今回は前回に引き続き、時間外手当の正しい計算方法について取り上げ、残っていた割増率についてみてみました。服部印刷では、所定労働時間が8時間でしたので、それを超えた労働時間は割増率が適用される法定外労働となりますが、所定労働時間が7時間など、法定労働時間である8時間よりも短い場合には、所定労働時間を超えても実働8時間に達するまで(法定内残業といいます)は通常の賃金を支払えば足り、実働8時間を超えた分について割増率を適用するという2段階で計算することになります。


 なお、この割増率についてはまもなくスタートする通常国会での議論が待たれる労働時間法制改革の一つの焦点にもなっています。「労働者の健康を確保する観点」から一定時間を超える時間外労働を行った労働者に対する割増率の引上げが検討されていますが、各種報道によれば、80時間超の時間外労働について50%の割増率を適用するという方針を厚生労働省が打ち出したとされています。しかし、ホワイトカラーエグゼンプションが社会的な批判を浴びる中、政府与党は選挙へのマイナスの影響を懸念し、労働時間法制を中心とした労働基準法改正の通常国会提出を見送るという話も聞こえています。このように非常に状況が混沌としていますが、タイミングの問題こそあれ、この改革は間違いなく進められていくことになると思いますので、また法律が成立しましたら、改めて解説したいと思います。それでは今日はこんなところで。


[関連条文]
労働基準法第32条(労働時間)
 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。


労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3 使用者が、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
4 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。



参考リンク
広島労働局「時間外・休日及び深夜の割増賃金」
http://www.hiroroudoukyoku.go.jp/contens/kijyun/contens/checkpoint/checkpoint18.html
厚生労働省「今後の労働契約法制の在り方について」及び「今後の労働時間法制の在り方について」についての労働政策審議会からの答申について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/h1227-4.html


(鷹取敏昭)


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履歴書

履歴書 就職希望者と会社を結ぶ最初の書類である履歴書。連絡先や学歴・職歴はもちろんのこと、その他、就職希望者が会社側にアピールし、会社側が情報収集できる書類です。一般的な履歴書は様式をJISが定めていましたが、近年では様式にこだわることなく、パソコンを利用し、自前で作成することも多くみられるようになりました。これに伴い、自筆からパソコンでの作成に代わりつつあります。

[ダウンロード]
WORDWord形式 rirekisho.doc(61KB)
PDFPDF形式 rirekisho.doc.pdf(16KB)

[ワンポイントアドバイス]
就職希望者側の注意点
 履歴書は会社にとって採用選考の基礎資料です。その印象ひとつで次のステップに進めるか否かが決められることもあります。写真の貼り忘れや印鑑の押し忘れはもってのほか。社会人としての常識を見られていると捉えて記載する必要があるでしょう。
会社側の注意点
 最も注意しなければならないことは、個人情報保護といえるでしょう。特に不採用者の履歴書については、その情報が流出することのなきよう細心の注意を払う必要があります。あらかじめ募集する際に、提出させた履歴書の取り扱いを明示しておくべきです。必ずしも返却する必要はありませんが、この場合は、会社側が責任を持って情報の管理・破棄を行う必要があります。

[参考リンク]
内閣府「個人情報の保護」
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/index_sub002.html

(宮武貴美)

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辞令(配置転換)

辞令(配置転換) 配置転換により所属が変更になる際に社員に交付する辞令の書式。
[ダウンロード]
WORDWord形式 haiten_jirei.doc(20KB)
PDFPDF形式 haiten_jirei.pdf(7KB)

[ワンポイントアドバイス]
 我が国では、使用者に比較的広範な配置転換に関する人事権が認められているため、労働契約で職務内容や勤務地を限定しているような場合を除き、使用者の裁量で従業員の配置転換を行うことができます。しかし、その内容は合理的なものでなければなく、例えば、「業務上の必要性がない」「合理的理由がない」「労働条件が著しく低下する」「私生活に著しい不利益を生ずる」といった場合には、権利の濫用としてその配置転換命令が無効とされることがあります。ご注意下さい。

[関連リンク]
厚生労働省「配置転換、出向、転籍に関する判例・裁判例」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/05/s0524-2b.html
茨城労働局「労働者の被る不利益が大きい配置転換命令は無効」
http://www.ibarakiroudoukyoku.go.jp/soumu/qa/haichi/haichi01.html

(大津章敬・渡邊てるゑ

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社会保険料決定・変更通知書

社会保険料決定・変更通知書 社員の社会保険料個人負担額が決定・変更になったことを通知するための書式。
[ダウンロード]
WORDWord形式 shahoryou_tuchi.doc(26KB)
PDFPDF形式 shahoryou_tuchi.pdf(8KB)

[ワンポイントアドバイス]
 社会保険料の決定および変更には、入社時などの資格取得時決定、算定基礎届に基づく毎年1回の定時決定、昇給や降給があった場合に発生する随時決定(月額変更届)、料率変更、介護保険該当年齢到達などがありますが、この書類はこうした事由により保険料が変更になる場合にそれを社員に通知するための文書です。こうした場合に予め通知を行っておくことで、社員からの問い合わせなどを減少させることができるでしょう。

[参考リンク]
社会保険庁「健康保険・厚生年金保険適用関係届書・申請書一覧」
http://www.sia.go.jp/sinsei/iryo/index.htm

(大津章敬・渡邊てるゑ

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退職金計算書

退職金計算書 社員の退職時に、退職金規程に基づき、その退職金支給額を計算し、通知するための書式。
[ダウンロード]
WORDWord形式 taishokukin_keisansho.doc(26KB)
PDFPDF形式 taishokukin_keisansho.pdf(8KB)

[ワンポイントアドバイス]
 この書式では、我が国でもっとも一般的な最終給与比例方式(退職時の退職金算定基礎額に、勤続年数と退職事由に応じた係数を乗じて算出する方式)を前提としていますので、定額制やポイント制などの場合にはカスタマイズが必要となります。また、企業年金や中退共などの外部積立を行っている場合には、その支給についても記載しておくことが望まれます。

(大津章敬・渡邊てるゑ

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給与辞令

給与辞令 給与改定時に、その改定内容を社員に通知する給与辞令の書式。
[ダウンロード]
WORDWord形式 kyuyo_jirei.doc(26KB)
PDFPDF形式 kyuyo_jirei.pdf(8KB)

[ワンポイントアドバイス]
 給与辞令は、人事総務の機能があまり充実していない中小企業ではあまり交付されず、給与明細書でそれを代用することが多いように思いますが、いずれにしても給与改定というタイミングは、社員に対しその評価と今後期待する役割を伝える良い機会となります。給与改定の際には是非、給与辞令などを用意し、社員との少し改まったコミュニケーションを取っていただきたいと思います。

(大津章敬・渡邊てるゑ

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これが正しい時間外手当の計算方法なんです!

 前回、時間外手当を月30時間でカットしているという取り扱いにより、服部印刷では過去2年間で約4,000万円の時間外手当の不払い(サービス残業)が発生していたことが発覚。そこで今回、大熊は時間外手当の基礎の基礎について説明することにした。



大熊社労士大熊社労士:
 過去の不払い分の時間外手当についてどう精算するかという対応についても考える必要がありますが、今後の適正な管理のために、まずは時間外手当の基礎の基礎を押さえておくことにしましょう。
服部社長:
 ありがとうございます。よろしくお願いします。
大熊社労士:
 はい、それではまずは時間外手当の計算方法について確認しましょう。





 大熊は立ち上がり、ホワイトボードに次の計算式を書いた。

これが正しい時間外手当の計算方法なんです!





大熊社労士:

 時間外手当の基本的な計算式はこのようになります。この計算式を分解すると、対象賃金、平均所定労働時間、割増率の3つの部分に分かれます。これを順番に見ていくことにしましょう。まず対象賃金ですが、宮田部長。社員のみなさんの固定給はどのような支給項目になっていますか?
宮田部長宮田部長:
 はい、えぇっと、まずは基本給と、諸手当は役職手当、印刷手当、営業手当、家族手当、調整手当、それに通勤手当がありますね。
大熊社労士:
 ありがとうございます。ちなみにこれらの他に歩合のような変動給はございますか?
宮田部長:
 いえ、ありません。
大熊社労士:
 ありがとうございます。ということは御社の適正な時間外手当対象賃金は基本給、役職手当、印刷手当、営業手当、調整手当を合算したものになりますね。時間外手当の対象賃金は原則としては基本給のみならず固定給をすべて合算した金額となります。ただし、ここから除外できるものが労働基準法および同施行規則で定められており、具体的には家族手当、住宅手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、1ヶ月を超える期間毎に計算される変動給等の7つの手当については対象外となります。また御社では支給がありませんが、歩合の変動給も計算方法は若干特殊になりますが、対象賃金に加える必要があるのです。
服部社長:
 そうですか、私は基本給だけで良いと思い込んでいました。宮田部長、この点については大丈夫なのか?
宮田部長:
 えぇ、この点については問題ありません。
大熊社労士:
 そうですか、安心しました。それでは次は平均所定労働時間です。ここは1年間を平均した月の所定労働時間を適用することが通常です。宮田部長、1日の所定労働時間は8時間だったと思いますが、年間休日数は何日になりますか?
宮田部長:
 ちょっと待ってください。カレンダーを見て、数えますね。えーっと、1月が9日、2月が8日…..、合計すると年間で110日ですね。
大熊社労士:
 ありがとうございます。年間休日が110日ということは、年間の所定労働日数は365日-110日で255日になります。これに1日の所定労働時間である8時間をかけると年間の総所定労働時間は2,040時間。これを12ヶ月で割ると、月当たりの平均所定労働時間が算出されますが…….、(電卓を叩きながら)170時間ですね。
服部社長:
 なるほど、そのように計算するのですね。宮田部長、当社でもこのように計算しているのか?
宮田部長:
 いえ、当社では現在184時間で計算しています。
服部社長:
 184時間?
宮田部長:
 ええ、以前は通常月の出勤日が23日でしたから、23日×8時間で184時間としてきたのです。
服部社長服部社長:
 ということは、正しい計算にすると時間外手当を計算する際の分母が小さくなる訳だから、結果として時間外単価が高くなるということだな。これは参ったな。また支出が増えるよ
大熊社労士:
 そのとおりです。御社のように時間外手当計算時の所定労働時間が週40時間制以前の時間数のままになっている例は少なくありません。中には200時間で割っているような例が、今でもたまに見られますね。さて、御社では平均所定労働時間を184時間で時間外手当を計算されていたということですので、これを適正化した場合にはどの程度の差異が出るのかを検証してみましょう。
服部社長:
 お願いします。
大熊社労士:
 はい、それではここでも時間外手当の対象賃金を仮に280,000円として計算してみましょう。現在の184時間の設定で行くと、2800,000円÷184時間×1.25ですから、小数点以下を切り上げると、時間外手当の単価は1,903円になります。これに対し、本来の時間数である170時間でいくと、280,000円÷170時間×1.25は、2,059円ですね。差額は1時間当たり156円になります。これが対象者40人で月間30時間とすると、156円×40人×30時間=187,200円。この対象賃金の是正だけで、月に187,200円の不払いが発生しているようです。
服部社長:
 約19万円かぁ。宮田部長、これは仕方ないな。来月からすぐに是正しよう。
宮田部長:
 そうですね。申し訳ありません。
大熊社労士:
 それでは時間外手当計算の最後、割増率です。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス みなさん、こんにちは、大熊です。今回は時間外手当の正しい計算方法について取り上げました。計算式は対象賃金÷平均所定労働時間×割増率という簡単なものですが、それぞれいろいろなルールがあることをご理解頂けたのではないかと思います。の割増率については、今後の法改正の動向などもありますので、次回、詳しくお伝えします。今回お伝えしたかったのは、対象賃金および平均所定労働時間には、その適正な計算方法があり、多くの会社が無意識のうちに間違った処理をしているということです。服部印刷では、対象賃金については正しい処理がなされていましたが、実際にはここが基本給だけで計算されているような企業も少なくありません。また住宅手当を時間外対象賃金から外す場合には、「割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱う」といった詳細なルールがありますので、十分な確認が求められます。それでは今日はこんなところで。


[関連条文]
労働基準法第115条(時効)
 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
労働基準法第37条第1項(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
労働基準法施行規則第21条
 法第37条第4項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第3項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
一 別居手当
二 子女教育手当
三 住宅手当
四 臨時に支払われた賃金
五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金



参考リンク
東京労働局「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成17年度)」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2006/20061005-shiharai/20061005-shiharai.html
厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果―平成17年度は約233億円」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1002-1.html
厚生労働省「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1002-1c.html
広島労働局「時間外・休日及び深夜の割増賃金」
http://www.hiroroudoukyoku.go.jp/contens/kijyun/contens/checkpoint/checkpoint18.html


(大津章敬)


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休職期間満了のお知らせ

休職期間満了のお知らせ 私傷病により休職している社員に対し、その休職満了が近付いており、それまでに復職できなければ就業規則の定めにより自然退職となることを通知する書類。

[ダウンロード]
WORDWord形式 kyushoku_manryou.doc(22KB)
PDFPDF形式 kyushoku_manryou.pdf(9KB)

[ワンポイントアドバイス]
 休職とは、私傷病などの事由に該当して長期休業する場合、一定の期間その雇用を保証する制度のことを言います。この取り扱いは法律で定められたものではありませんので、各社で就業規則においてその対象事由や期間、賃金の取り扱いなどを定めることになります。さて、この休職ですが、その期間満了までに私傷病などが完治し、復職できれば良いのですが、そうでない場合には、休職期間満了をもって自然退職(自動退職)とされていることが通常です。この点は雇用に関わる問題だけに非常に重要ですから、実際に休職対象者が発生した場合には、この定めおよび復職の際の手続を伝えたうえで、期間満了の際には今回ご紹介したような書類を交付することが良いでしょう。

 なお、休職制度はメンタルヘルス問題の拡大によって、その重要性が年々増しています。よって就業規則の条文をご確認頂き、不十分な記載がないかといった点についてチェックすることが望まれます。

[関連リンク]
厚生労働省「労働契約に伴う権利義務関係、休職に関する実態について」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/10/s1014-9b.html

(大津章敬・渡邊てるゑ

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サービス残業で4,000万円?!

 服部印刷の服部社長と1年振りに面談し、人事労務顧問を受託することとなった大熊社労士。今日はさっそく服部の相談を受けることとなった。


服部社長服部社長:
 早速ですが、ここ数年、サービス残業の問題をよく耳にするのですが、お恥ずかしいことに、実は当社でも残業カットを行っているのです。
大熊社労士:
 そうでしたか。具体的にはどのような取り扱いをされていらっしゃるのでしょうか?
服部社長:
 宮田部長、説明してもらえないか?
宮田部長宮田部長:
 はい、分かりました。当社の正社員は50名いますが、うち5名が管理監督者、もう5名が営業職ですので時間外手当を支給しておりません。残りの40名が時間外手当の対象となりますが、実は月30時間でカットしているのです。
大熊社労士:
 う~ん、まあ世間ではよく聞く話ではありますが、これは問題ですね。それで実際には月に何時間くらいの残業があるのですか?
宮田部長:
 そうですね、1日2時間強は残っていますから、まあざっと月50時間くらいでしょうか。
大熊社労士大熊社労士:
 ということは、ざっくり月に20時間のサービス残業ということですね。
宮田部長:
 はい、そうなります。
服部社長:
 大熊さん、これはどうなんでしょう。問題だとは分かっていますが、もし労働基準監督署等に指摘を受けるとどうなるのでしょうか。
大熊社労士:
 服部社長も新聞でいろいろな大企業が労働基準監督署の是正勧告を受け、それこそ数十億の未払い賃金を精算したという記事をご覧になられていると思いますが、賃金債権の時効は労働基準法第115条で2年間と定められています。よって、最悪の場合、2年前まで遡って精算する必要があります。
宮田部長:
 2年間ですか。とするとだいたいどれくらいの金額になるのでしょうか?
大熊社労士:
 管理監督者や営業の社員の問題もありそうですが、それはとりあえず置いておいて、40名の社員について簡単に計算してみましょう。平均の給与が280,000円、月の平均所定労働時間が168時間で、毎月20時間のサービス残業があったとします。この場合、一人あたりの1ヶ月の未払額は、280,000円÷168時間×1.25×20時間=41,667円になります。対象は40名ですから、1ヶ月あたりの未払額は41,667円×40人=1,666,680円。この2年分ですので、1,666,680円×24ヶ月=40,000,320円。約4,000万円になりますね。



社長室に沈黙が流れた….。




服部社長:
 4,000万円ですか
大熊社労士:
 ええ、ざっくりではありますが、4,000万円です。驚かれましたか?
宮田部長:
 驚いたなんてもんじゃないですよ、ねぇ、社長。
服部社長:
 あぁ、空いた口が塞がらないとはこのことだよ。4,000万円といったら、昨年の当社の利益とほとんど変わらないじゃないか。みんなで頑張って作り上げた利益が一発で吹っ飛んでしまう。
大熊社労士:
 これが現実なのです。こう考えると従業員数万人の大企業で、数十億円のサービス残業があったというのも納得がいくのではないでしょうか。
服部社長:
 そうですね。当社としても対策を急がなければ….。



>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス みなさん、こんにちは、大熊です。未払い時間外手当の金額を聞いて、服部社長は本当にびっくりしていましたね。もっとも月30時間での残業カットを行ってきたのであれば仕方ありません。今回は本当に概算を出しただけですが、読者のみなさんにもサービス残業の金銭的影響の大きさは感じて頂けたのではないかと思います。このようにサービス残業の未払い賃金を精算する際には、最大2年間遡りますので、予想以上にその額が膨れ上がることになります。この対策としては、まず何と言っても時間外労働に関する意識を高め、生産性の向上などを通じて、時間外労働を圧縮することが重要です。もっとも残業というのは、単に社員の頑張りが足らないというような単純な問題ではなく、その会社の業務フロー全体、場合によっては営業構造(顧客との関係から営業が無理な納期の仕事を受注してしまい、現場が飛び込みの仕事に振り回されるなど)にまでその原因を求めることができる構造的なものです。社員の意識付けも重要ですが、構造的な問題の対応を行わなければ、更なるサービス残業の温床をとなる危険性があります。また企業によっては、そもそもの労働時間制度が実態にあっておらず、無用な時間外労働を発生させていることもあるかも知れません。実質的な時短活動を行うと同時に、就業規則の見直しも必要となるかも知れません。このあたりのことについては、また日を改めてお話したいと思います。それでは今日はこんなところで。


[関連条文]
労働基準法第115条(時効)
 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
労働基準法第37条第1項(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。



参考リンク
東京労働局「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成17年度)」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2006/20061005-shiharai/20061005-shiharai.html
厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果―平成17年度は約233億円」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1002-1.html
厚生労働省「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1002-1c.html


(大津章敬)


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1年単位の変形労働時間制に関する協定届

1年単位の変形労働時間制に関する協定届 1年単位の変形労働時間制を採用するためには、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届け出る必要がありますが、この書式はその際に用いる協定届です。1年以内の一定の期間を平均し、1週間あたりの労働時間が40時間を超えないように定め、会社が所轄労働基準監督署長に協定を届け出ることにより、協定の定めにより特定された週、日において法定労働時間を超えて労働させることができるようになります。
重要度:★★★
官公庁への届出:必要(所轄労働基準監督署)
法定保存期間:協定期間

[ダウンロード]
WORDWord形式 year_henkei_todoke.doc(35KB)
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[ワンポイントアドバイス]
 1年変形労働時間制は、暦や年度の単位あるいは決算月の区切りで採用されることが多く、2007年を迎えるにあたって、年間カレンダーを設定し新たに届出るという会社もあるでしょう。作成上の注意事項としては、労働日および労働日ごとの労働時間が、次の3つの要件を満たすように定めることが求められます。
労働日数の限度
   対象期間が1年間の場合には280日。対象期間が3ヶ月を超え1年未満である場合(小数点以下は切捨)には、1年あたりの労働日数の限度×対象期間の暦日数/365日。
1日および1週間の所定労働時間の限度
   1日10時間、1週間52時間
   ※対象期間が3ヶ月を超える場合は、週48時間を超える週の回数等に制限があります。
連続して労働させる日数の限度
   6日
   ※特定期間については12日

 実務上は、割増賃金の計算に注意が必要です。勤務した期間が対象期間より短い従業員については、その勤務した期間を平均して1週間当たり40時間を超えた部分についての割増賃金の支払が義務づけられています。また、1年変形労働時間制を採用する場合には、通常、就業規則等を変更し、届出ることが必要になります。

[根拠条文]
労働基準法第32条の4
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらず、その協定で第2号の対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第1項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
(以下省略)

(福間みゆき)

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