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(大津章敬)

男女の賃金格差と職務配置

 厚生労働省のサイトを見ていたところ、「男女間の賃金格差解消のために」という特設ページが設置されていました。いくつかのPDFファイルから構成されているのですが、それを見ると「男女間賃金格差の発生原因は多種多様ですが、最大の要因は男女間の職階の差であり、勤続年数の差も影響しています。また経営団体トップや労働組合幹部に対するアンケートや企業ヒアリングによれば、業務の難易度、業務の与え方に男女間で相違があることが指摘されています。」という記述が見られました。そして「男女間の賃金格差はその原因のところでみたように、賃金制度そのものの問題と言うよりは人事評価を含めた賃金制度の運用の面や、職場における業務の与え方の積み重ねや配置の在り方等賃金制度以外の雇用管理面における問題から生じていると考えられます。」と続けています。


 人事コンサルタントとして多くの企業の人事制度改革を手掛けていますが、やはり未だに多くの企業で男女間の賃金格差が見られます。これは賃金制度のセミナーでもよくお話しする内容ですが、製造業で賃金制度の分析を行い、固定給のプロット図を作成するとほとんどの場合、一定の傾向が見られます(傾向が出ない小企業は除く)。それは現業職の男性の固定給は30万円が上限、女性は20万円強が上限、管理職や営業職など非現業職は概ね地域のモデル賃金に沿って運用されるというものです。これは絶対ではありませんが、かなりの高確率でこのような傾向が見られます。


 賃金制度を見直す際には当然、この格差の理由を性別に求める訳にはいきませんので、現場を見学させてもらい、男女の仕事の状況を確認するのですが、確かに仕事の内容が異なっていることがほとんどで、単に男女で格差をつけているということは今どきはあまりないようです。しかし、私がいつも現場見学をしている最中に工場長などにお聞きするのは「この仕事は男性ばかりですが、女性ではできないのですか?」ということ。確かに重量物を扱うなどの仕事は女性には難しいのかもしれませんが、そういった仕事以外にもなんとなく昔から男性が行ってきて、女性に担当させていないという仕事が現場にはかなりあります。まずはこういった仕事の配置からゼロベースで見直しすることが求められるのでしょう。男女の賃金格差も大きな問題ですが、それ以上に今後は労働者人口の減少で、従来男性が行っていた仕事にも積極的に女性や高齢者などを配置していかなければ業務が成り立たない時代に突入していきます。


 若い男性社員が採用できないと嘆く前に、本当にその仕事は男性しかできないのか見直す必要がありそうです。


(大津章敬)


2007年問題を前にベテラン社員からの技能の伝承を如何に進めるか

 2007年から2010年にかけて団塊世代の定年退職がピークを迎える2007年問題が話題になっています。この団塊の世代の大量退職により、企業においては深刻な労働力不足に陥ると警鐘が鳴らされていますが、それと同じレベルで捉えなければならないのが、次の世代へ如何にベテラン社員の暗黙知を含む技能の伝承を進めるかという問題でしょう。事実、内閣府が企業に対して行ったアンケート調査では調査に回答した企業のうち、約46%の企業が「技術・技能の伝承」が「かなり困難化する」「多少困難化する」と回答しています。


 平成18年4月1日より、65歳までの高齢者雇用確保措置が義務付けられますが、高齢者の労働力を活用するうえで、ベテラン社員の長年の経験による技術・技能や知識は貴重なものであり、その伝承は高齢者に対して一番期待される役割ではないでしょうか。実際に高齢者を雇用し技能・技術の伝承が成功した例として、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が発行する雑誌「エルダー」2004年10月号で紹介された奈良県のある会社は、高齢者と若者を組み合わせた班編成で土木技術に関する技術・知識の伝承に効果を上げています。この会社では高齢者にも土木施工管理技士、建築施工管理技士、建築士などの資格取得を推進、その結果資格を取得した人も現れ、会社全体のレベルアップになり、また高齢者の体力への負担を減らすため設備を改善した結果、全体の安全対策の向上にもなったということです。


 高齢者の雇用制度はそれぞれの企業に合わせて作らなければなりませんが、高齢者は就業意識、能力、健康など個人差が大きく、その人それぞれのライフプランもあり、雇用の仕組み自体が柔軟でなければ高齢者を労働力としてうまく活用することができません。独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構ではワークシェアリングや設備・作業の改善などを行い、高齢者の活用に意欲的に取り組む企業の実例が公開されていますので、参考にされてはいかがでしょうか。


(土方憲子)

マクドナルドが新労働時間管理方法に関するニュースリリースを発表

 先日、当blogでもお伝えしたマクドナルドに対する労働基準監督署の是正勧告およびその対応の件ですが、日本マクドナルドホールディングスより、「アルバイトスタッフ・社員の給与ならびに新勤務時間管理方法の導入について」というニュースリリースが発表されていますのでご紹介したいと思います。内容としては、従来はアルバイトスタッフの賃金および社員の所定外手当について、その算定基準となる日々の勤務時間を30分単位で丸めて計算してた方式を改め、1分単位(実時間)で勤務時間を算出する方式を導入することになったというものです。
http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2005/release-050801.html

 

 これまでも多くの有名企業で同様の時間外手当の未払事件があり、新聞紙上を賑わせましたが、今回は各労働日の端数処理という、多くの事業所で普通に行われている処理についての指摘だけに、その実務に与える影響はこれまでと比較にならない程、大きなものとなるでしょう。事実、このニュースが報道されて以来、当社にも多くの問い合わせが入っていますが、まずは1分単位での労働時間の把握・計算という原則論で制度運用した場合の影響(業務量の増加、コストの増加、コンプライアンス)について検証されることをお勧めしています。タイムカードやパソコンによる給与計算システムが普及している現状においては、業務負担という点でかつてのように端数処理を行う必要性は少なくなっているはずです。また30分未満切捨てというような取り扱いが行われている事業所では現場サイドで、時間の調整(30分に満たない端数時間発生時のタイムカード打刻時刻調整など)が事実上行われていることが少なくありません。こういった状況を勘案すれば、今回のマクドナルドのような実時間での管理も十分に可能ではないかと考えています。

 

 非常に良い機会だと思いますので、労働時間管理方法の見直し検討をお勧めしたいと思います。

 

(大津章敬)

急増するIC(Independent Contractor)

 最近、よくIC(インディペンデント・コントラクター)という言葉を耳にするようになりました。まだまだ言葉自体は世間一般に浸透していませんが、このような労働提供形態は年々増加しており、今後も急激な拡大が予想されています。そこで今回はこのICについて解説したいと思います。

 

■IC=Independent Contractor とは?
 一般には「独立請負人」「独立業務請負人」と訳されています。どこの企業にも属さず(雇われず)、いままで培ってきた経験や能力を生かし、特に専門性の高い仕事を企業(注文主)と業務単位で有期の契約を結んで仕事をしている独立した個人のことをいいます。

 

■ICとアルバイトの違いは?
 ICは請負であり、ある一定の成果をあげた場合に成功報酬として対価を得ます。また、成果を出すまでの過程は重視されず、企業も口を挟むことがありません。つまりICは仕事の完成や業務の遂行を一任されるのです。これに対しアルバイトは、労働契約の中で企業に労働力を提供し、その対価として賃金を得ます。また労働力を提供するにも企業の指揮命令下にあり、労働契約の趣旨と内容に従った労働を行う義務(労働義務)を負います。
 

■請負契約の労働者性判断
 ただし「請負」は労働者性を問われることがよくあります。ここでは請負の定義を明確にする意味で、「請負」に該当するかどうかのチェックポイントを挙げます。該当しない項目があると請負と認められない可能性があります。

□受託者(請負人)が受託業務に関する作業スケジュールの作成及び調整を自ら行っている。
□受託者が、受託業務に関する仕事の割り当て及び調整を自ら行っている。
□受託者が、受託業務に関する仕事の仕方、完成の方法、業務処理の方法を自ら定めている。
□受託者が業務の処理に関する技術的な教育又は指導を自ら行っている。
□受託者が、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等について、自ら決定している。
□受託者は、注文主から直接服務規律についての注意、指導を受けることはない。
□受託者について、注文主の朝礼やミーティングへの参加が義務付けられていない。
□受託業務の遂行にあたり、必要となった通勤費、旅費について、受託者がその都度注文主に請求することとなっていない。
□受託業務の遂行にあたり、必要となった資材、材料、原料、部品等について、無償で使用していない。
□受託業務の処理について、受託者側に契約違反があった場合の損害賠償規定がある。
□受託者が注文主又は第三者に対して損害を与えた場合の損害賠償規定がある。
□受託業務について、次のいずれかに該当すること
①業務処理のための機械、設備、器材、材料、資材を受託者が自らの責任と負担で調達し、機械、資材等が注文主から借り入れ又は購入したものについては、別個の双務契約が締結されており、受託者が保守及び修理を行う、ないしは保守等に要する経費を負担している。
②受託者自らの企画又は専門的技術、専門的経験により処理している。
□完成すべき仕事の内容、目的とする成果物、処理すべき業務の内容が明確になっている。

(参照 労働者派遣・請負を適正に行うために「自主点検表」  :愛知労働局職業安定部需給調整事業課)
 

■ICのメリット・デメリット

 ICは組織に縛られず、また就業場所や時間の制限をあまり受けることなく、自らの得意分野、専門分野の知識、ノウハウを活かして報酬を得たい、と考える人にはあった働き方といえます。しかし、会社に雇われる労働者ではないため、個人として契約が取れないと収入がなくなりますし、労働基準法の適用もありません。もちろん社会保険に加入できないので、自ら保険・年金に加入しなければならないといったリスクも存在します。

 一方、企業側にしてみれば、気軽に専門性の高い人材を確保でき、必要なときに仕事が依頼できる、コスト的にも正社員に比べれば安くあがる等の利点もあり、また使用者と労働者の関係ではないため法律上の使用者責任を問われることもありません。

 アメリカではビジネス界で活躍しているICは900万人に上ると言われています。今後日本でも、会社勤めをして専門的能力を身に付けた後に脱サラし、ICへの道を進むサラリーマンが増えてくることでしょう。事実、日本でもICとして活躍されている人は徐々に増えてきています。これからも様々な企業で、「新規プロジェクトの立ち上げ」や「マーケティング」、「社内研修」などでICの活用される場面が多く見られることでしょう。

 

 こうした環境を背景として、今後は個人(IC)と企業とをマッチングさせる仲介業が増えることになるでしょうし、そうなればICが活躍する機会も増え、その活躍によって業績を伸ばしてくる会社も現れてくると予想されます。

労働者性判断と当事者意思

 表面上、「一人親方」や「外注」などの身分であっても、一律に労働基準法や労災保険法上の労働者でないと結論付けることは難しいと言うことをご存知の方も多いかと思います。先日、外注作業員の労災適用について問い合わせがあり調べていたところ、判例内に興味を引く内容を見つけました。

 

 労働基準法上の『労働者』性の判断については、『横浜南労基署長(旭紙業)事件』という車持込み運転手の労働者性について争われた代表的な判例があります。

 

 この判例では、「(運転手は)業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事し」、「(会社は)業務の運行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的・場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかである」点、また、「報酬の支払方法、公租公課の負担等」の点からも、この運転手を労働者に該当するものではないと結論付けています。

 

 労働者性については「使用従属関係の有無」により判断され、一般的に以下の項目が基準として挙げられています。
 ①業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容
 ②時間的・場所的拘束性の有無・程度
 ③業務用機材の負担関係
 ④報酬の支払条件・方法
 ⑤仕事の依頼・業務従事の指示に対する許諾の自由
 ⑥労務提供の代替性の有無
 ⑦公租公課の公的負担関係
さらに、補完要素として
 ⑧機械・器具の負担関係
 ⑨事業者性の有無・程度を示す事情や従属性の程度
などが、加わることがあります。

 

 興味を引かれた点とは、この事件の第二審における東京高裁の判決内にありました。それは、労働者か否かの判断が相当困難な場合に、「できるだけ当事者の意図を尊重する方向で判断すべきである」との部分です。もちろん、「法令に違反していたり、一方ないしは双方の当事者(殊に、働く側の者)の真意に沿うと認められない事情がある場合は格別、そうでない限り」との条件付きではありますが、当事者意思の入り込む余地を認める判断があるとは驚きでした。
 
 働き方の多様化が指摘される昨今、旧来の「一人親方」や「外注」以外にも雇用契約上、様々な形態が増えてくることが予想されます。その中には現在の労働者性の判断には収まりきらないらないものが出てくることも考えられます。この「当事者意思」という論点は、客観性に乏しく、「基準」としては十分な機能を果たせるか疑問が残りますが、今後、無視できない視点であることも感じました。

 

(労働契約チーム)

ダブルワーカーの労働時間算定と割増賃金

 従来、従業員の兼業を認める会社はほとんどありませんでしたが、ここ数年、残業規制の強化やワークシェアリングの進展などに伴い、それを認める事例が徐々に増加しています。このようなダブルワークをしている労働者については、労働時間の計算や社会保険の加入、事業所間移動における事故発生時の労災適用など多くの問題がありますが、今回は労働時間のカウント方法について、その法的取り扱いを見ることにしましょう。


 労働基準法第38条は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定していますが、これは、同一事業主に属する異なった事業場において労働する場合だけではなく、事業主を異にする事業場において労働する場合も含んでいることを意味します。(昭和23.5.14、基発769号)よって、労働時間の通算の結果、時間外労働に該当する場合には割増賃金を支払わなくてはいけないということになるのです。
 
 この場合、どちらの事業主が割増賃金を支払わなくてはならないのでしょうか?いくつかの例を挙げて解説しましょう。(甲事業主・乙事業主ともその労働者が兼業していることを知っており、また乙事業主が甲事業主の後で労働契約を結んでいるとします。)
A.甲事業場(4時間)の後、乙事業場(5時間)で勤務する場合
   ⇒乙事業所で1時間の時間外労働による割増賃金の発生
B.甲事業場(5時間)の後、乙事業場(4時間)で勤務する場合
   ⇒乙事業所で1時間の時間外労働による割増賃金の発生
C.甲事業場(4時間)の後、乙事業場(4時間)で勤務する契約であるが、たまたま甲事業場で5時間勤務してしまった場合
   ⇒甲事業場で1時間の時間外労働による割増賃金の発生
 
 実務上良く見られるのが、甲事業場で常勤として8時間勤務した後に、乙事業場にアルバイトとして勤務するするケースでしょう。この場合は乙事業所のついてはそのすべてが法定労働時間超になりますので、割増賃金の対象となります。愛知県の場合は現在、最低賃金は683円/時ですので、最低でもその25%増の854円以上の時給で雇用契約を結ぶ必要があるということになります。


 現実、このような取り扱いが行われていることは稀だとは思いますが、今後、社員の兼業を積極的に認める企業は年々増加することでしょう。その際にはこうした法律の原則的な取り扱いについて押さえて、実務を行うことが求められます。


(労働時間チーム)

高齢者雇用に関する助成金(継続雇用定着促進助成金)

 平成18年4月より施行される60歳以降の年齢への雇用年齢引き上げ義務化が大きな話題となっております。そこで今回はいち早く継続雇用制殿導入などを行った事業主のための助成金制度(継続雇用定着促進助成金)をご紹介したいと思います。


■ 継続雇用定着促進助成金
1.継続雇用制度奨励金(第Ⅰ種)
 継続雇用制度の導入または改善を行う事業主に対して助成する制度です。次のいずれにも該当する雇用保険の適用事業主に支給されます。
①下記②の継続雇用制度導入日から1年以上前において労働協約または就業規則により60歳以上の定年が定められていること。
②労働協約または就業規則により、(イ)または(ロ)に該当する継続雇用制度を設けたこと。
 (イ)定年延長等。(a)または(b)
   (a)定年を61歳以上に引き上げ、引き上げ前の定年を越える年齢の者を当該引き上げ後の定年に達するまで雇用する制度を設けたこと。
   (b)定年延長と実態上同一の制度改善を行ったこと。
 (ロ)継続雇用制度または在籍出向制度により、65歳以上の年齢まで雇用する制度を設けたこと。
③上記②の継続雇用制度の導入前の過去における定年または継続雇用制度による最高の退職年齢を超えるものであること。
④上記②の継続雇用制度を導入した日において、常用被保険者のうち、1年以上継続して雇用されている55歳以上65歳未満の常用労働者が1人以上雇用されていること。


2.多数継続雇用助成金(第Ⅱ種)
 第Ⅰ種支給事業主のうち、高年齢者の雇用割合が15%を超える事業主に対して助成する制度です。


 さらに、平成16年4月1日以降は、65歳以上の定年導入と同時に高齢短時間正社員制度を導入した事業主には上記「1.継続雇用制度奨励金(第Ⅰ種)」に支給加算が行なわれることとなっています。今後も様々な改正が予想されますので、注目していく必要があるでしょう。


参考:http://www.jeed.or.jp/elderly/employer/subsidy/subsidy1.html


(伊藤里奈)

退職金単行本プレビュー第5回「適格退職年金解約のスケジュール確認」

 本日は9月に発売予定の退職金単行本プレビューの5回目(最終回)です。適年コンサルの中でもっとも重要なパートの1つが生命保険会社など幹事会社との折衝およびスケジューリングになります。最近は幹事会社自身が中退共などへの切り替えの支援を行っていますが、社会保険労務士など外部の専門家がここに入ることによって、その企業にとって客観的な解決方法を提示し、最適な制度改革を行うことができると考えています。今回はその折衝のパートをご紹介しましょう。(退職年金規程の解約時按分基準の変更というテクニカルな取り扱いを行っている部分になります。)




大熊コンサル:
「それでは順番に今後の流れを確認しながら、スケジュールを確定していきましょう。適年から中退共への引継を行うためには、最終的に新日本生命様より「証明書」という書類を発行して頂き、それを添付して中退共の加入手続きを行うことになります。9月より新退職金制度を施行予定ですので、当面のゴールを9月10日に(16)の証明書受領が完了しているというところに設定したいと思います。」
生保佐藤:
「分かりました。」
大熊コンサル:
「それに向けてのスケジュールですが、まず[(1)適年解約の意思表示]は本日、この場でさせて頂いているので既に完了しています。次に[(2)中退共加入書類取り寄せ]ですが、こちらについては申請書類を事前に中退共のホームページで取り寄せておきましたので、こちらに記入をして、後ほどFAXしておいて頂けますか?」
宮田部長:
「分かりました。」
大熊コンサル:
「(3)適年解約必要書類の受領ですが、この点についてはこれまでお話していないことがありますので、ここで補足します。以前、退職金診断報告会を行った際に積立不足の金額についてお話しましたが、実はあの表(○ページ資料2参照)を詳細に見ていきますと、適格退職年金からの解約返戻金が、退職金規程の要支給額を上回る社員がいるのです。」
服部社長:
「あれだけ大きな積立不足があったにも関わらず、要支給額を上回る社員がいるのですか?」
大熊コンサル:
「ええ、例えば社員番号48番の北村さんですが、基準日現在の退職金支給額は会社都合で212,800円、自己都合で106,400円ですが、適格退職年金の解約返戻金は309,922円とこれらの金額を上回ってしまっています。これは解約時に限って発生する不都合なのですが、退職金規程と退職年金規程のちょっとしたズレに原因があります。退職年金規程を見ると、第○条に解約返戻金の分配についての定めがあり、それによれば適格退職年金を解約するときには、その解約返戻金を責任準備金に比例して配分すると規定されています。責任準備金とは、各社員に将来退職年金を支払うために現在積み立てておく必要がある金額ですが、これは退職金規程の金額と同一ではありません。そのため、特に勤続年数が短い社員について、こういった逆転現象が発生してしまうのです。」
服部社長:
「なるほど。大きな積立不足がある社員がいる一方で、逆転してしまっている社員がいるというのは望ましくはないですね。これについてはどうしようもないのでしょうか。」
大熊コンサル:
「対策はあります。ただこれは新日本生命様に相談に乗って頂く必要があります。」
生保佐藤:
「退職年金規程の変更ですね?」
大熊コンサル:
「そうです。この問題は、先ほどの退職年金規程の条文を変更することで解決されます。但し、その場合には、この規程変更に関する被保険者全員の同意をもらう必要があります。佐藤さん、この対応は可能でしょうか?」
生保佐藤:
「ええ、それほど頻繁に行われる取り扱いではありませんが、被保険者全員の同意があるのであれば、可能です。それでは本社に相談した上で、この取り扱いに必要な書式を用意させて頂きます。」
大熊コンサル:
「ありがとうございます。それでは、その書式も含め適年解約に必要な書類はいつ頃までにご用意頂けますか?」
生保佐藤:
「それでは5月末ということでいかがでしょうか。」
大熊コンサル:
「わかりました。よろしくお願いします。次は社内的なことですが、最終的には今回の退職金制度変更について、社員のみなさんからの個別同意を得たいと考えています。そのステップとして、まずは全社員に発表する前に、幹部社員への説明を行い、意見を求めたいと思いますが、近日中にみなさんが集まる場はございませんでしょうか?」
宮田部長:
「毎週月曜日の朝に管理職全員参加の経営会議を行っています。そこで説明するということでどうでしょうか。」
服部社長:「そうだな。それでは来週の月曜日の会議で説明することにしよう。」




 ということで、9月発売予定の単行本の原稿のうち、そのメインとなる小説部分を5回に亘ってご紹介しました。内容としてはこのあとももちろん続くのですが、あとは発売後、実際の書籍でお読み頂ければと思っています。この単行本については正式タイトルや発売日が決定次第、当blogやroumu.comでお伝えします。発売になりましたら、是非お手にとって頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

(大津章敬)

退職金単行本プレビュー第1回「退職金制度診断」

 先週の日曜日、9月に発売予定の退職金単行本(タイトル未定:日本法令)の原稿が書きあがったという記事を掲載しました。本単行本では服部印刷という仮想の企業での退職金制度改定を小説形式で取り上げ、退職金制度改定を実際に行う際の検討ポイントや手順を解説しています。本日から全5回(予定)に亘り、この単行本のメインとなる小説部分をプレビューとして当blog上でご紹介したいと思います。


 それでは第1回の本日は退職金制度診断報告会の中から、適格退職年金の状態について取り上げている部分をご紹介しましょう。



大熊コンサル:
「次に退職金の支払いのために新日本生命様と契約されている適格退職年金の状況について簡単に解説します。[解説1]先日、宮田部長様にお願いし、新日本生命様から『解約返戻金予定額明細』という資料をお取り寄せ頂きました。これは、仮に今の時点で適格退職年金を解約した場合、社員のみなさん1人1人に支給される解約返戻金の金額をまとめた資料になります。今回の分析シートの中にそのデータを入力しておきましたが、まずは全体像から把握しましょう。現時点での適格退職年金の積立金は総額で58,947,172円になります。この金額は現時点のものであり、今後の掛金の払い込みや退職者への支払いなどによって、この金額は常に増減しますが、仮にこの5800万円という積立金で今後の定年退職者の支払いを行おうとすれば、この積立金は今後5年間の6人の定年退職者の退職金(58,878,700円)で完全に枯渇してしまいます。
■図表 今後5年間の定年退職金支払予想■
 平成 定年退職者 定年退職金予想額
 17年   0人        円
 18年   1人    7,934,800円
 19年   3人   31,417,600円
 20年   1人   99,236,400円
 21年   1人   10,289,900円
 合計   6人   58,878,700円


 これを聞いた服部の表情が蒼ざめた。隣に座っている宮田も同様である。
服部社長:
「5年後には枯渇?!宮田部長、どういうことなんだ?」
宮田部長:
「これまで適格退職年金については保険会社の担当者に任せ切りで、状況をほとんど把握していませんでした。こんな状況になっているとは….。しかし、この適格退職年金の契約は社員の定年退職・中途退職の別に関わらず、その全額が支給されるという内容になっていたはずですが。大熊さん、どういうことなのでしょうか?」
大熊コンサル:
「はい、これが最近良く言われる積立不足の問題です。積立不足の原因はいくつかあるのですが、もっとも大きいのが予定利率の問題です。予定利率というのは、掛金や給付額の算定の基礎となる利率ですが、御社ではこれを年5.5%と設定しています。つまり毎年5.5%の運用がなされるという前提で掛金が決まっている訳です。しかし、実際の運用利率を決算報告書で確認したところ、現在は年0.75%の運用となっていました。年5.5%で運用されるつもりが、年0.75%でしか運用できていない訳ですから、少なくともその差額部分については積立不足となってしまいます。更に、今の状態で適格退職年金を継続するとすれば、その差額は膨らみ続ける、つまり積立不足が拡大することになります。その他にも要因はあるでしょうが、この結果が積立金の少なさに繋がり、あと5年でそれが枯渇するという大きな原因になっています。」
服部社長:
「いまどき年5.5%の運用という現実離れした設定をしていること自体が問題ということですね。宮田部長、当社ではなぜこれまでこの予定利率を見直して来なかったのか?」
宮田部長:
「言われてみれば2年位前に保険会社の担当者から利率の見直しが何とかという話があったのですが、それを行うと毎月の掛金が倍くらいになるというので見送ったことがありました。」
服部社長:
「そういえば、そんな相談を受けた気がするな。事情が良く分からないままに、掛金が上がるのは困るので、据え置くように指示した覚えがある。」
大熊コンサル:
「他社もほとんど御社と同じ状況です。適格退職年金では5年毎に財政再計算といって掛金の見直しを行うのですが、その際に予定利率を変更することができます。しかし、中小企業では、掛金が大幅に増加することを嫌って、5.5%で据え置かれている事例がほとんどでしょう。御社の適格退職年金の決算報告書の貸借対照表を見ると、責任準備金、つまり将来の年金給付を賄うために現時点で必要な積立金は88,275,206円となっています。これに対し、実際に貯まっているお金が保険積立金で、その額は58,947,172円です。よってこの差額である29,328,034円が、積立不足となるのです。もっともこれは年金制度の計算上の数字ですので、退職金規程に基づく社員への債務という視点とは若干異なっています。しかしそのような細かい話はともかくとして、まず現時点では現在適格退職年金という外部積立に貯まっているお金が6,000万円弱しかないという点を押さえて頂ければ結構です。



 話としてはこの後、適年の資産状況の説明から積立不足の話に展開していくことになります。今回はこのような小説形式を採用することで、コンサルティング現場でのやり取りを再現し、実際に検討しなければならないポイントを具体的に解説しています。明日もこの続きをご紹介することとします。お楽しみに。


(大津章敬)