飲食店店長労務管理超基礎【第8回】飲食店店長ならばトラブル防止のために制服に関するルールを明確にする

 飲食店においては、従業員に制服を貸与し、着用させることが多いと思いますが、制服に関するルールを明確にしている飲食店はそれほど多くはありません。しかし、このルールを明確にしておかないと、衛生管理の点や金銭の負担に関して、思わぬトラブルが発生する危険性があります。そこで今回は飲食店店長が制服の管理を行う際に注意すべきポイントについて解説いたします。

 飲食店の商品は食事の提供ですが、その提供においては衛生面への配慮やお客様へのサービスレベルの管理も大きなポイントとなります。最低でも従業員には清潔な制服を、正しく着用させる必要がありますので、就業規則等においては清潔な制服の着用を義務付け、マニュアルで制服の正しい着用方法を可視化すべきでしょう。何度注意しても清潔で正しく制服を着用しない従業員を注意できるように懲戒規定を整備しておくことも求められます。しかし規程やマニュアルを整備しただけで正しい制服着用が徹底できるわけではありません。正しく制服を着用させるためには、店長の日々の指導はもちろん、ミーティング時や勤務開始時にお互いに制服をチェックすることも効果的です。また店外での制服着用についても注意が必要です。制服での外出を認めているお店もありますが、制服での通勤や外出は衛生管理の点から規制すべきでしょう。

 制服管理におけるもう一つの大きな論点が、制服に関する従業員の金銭的な負担の問題です。一般企業では従業員がスーツを購入し、自らクリーニングをするものですが、飲食店従業員の中にはときどき、制服のクリーニング代は当然お店が負担すべきと考える者がいます。特に日々のクリーニング代や退職時のクリーニング代についてはトラブルになることが多いため、制服に関する様々な費用をお店が負担するのか、従業員が負担するのかを明確にし、入社時に説明しておくべきでしょう。なお、従業員に費用を負担させることなく制服を支給したとしても、制服は実費弁償的なものであるため社会保険や労働保険上は賃金とはされません。しかし逆に従業員に制服代を負担させ、給与からの控除によって制服代を徴収する場合には会社と従業員の代表との間でその旨を同意した労使協定を結んでおく必要がありますのでご注意ください。

 ほとんどの飲食店で従業員に制服を着用させているにも関わらず、制服に関するルールを明確にしている店は多くはありません。飲食店店長であれば、制服に関する規程やマニュアルを整備し、衛生事故や従業員とのトラブルを防止する必要があるでしょう。


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(中島敏雄)

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