育児休業中の社員から年次有給休暇の取得申出があった場合の対応

 育児休業制度に関するトピックを紹介する不定期連載。第2回目の今回は、育児休業中の社員から年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得申出があった場合の対応を考えてみましょう。



【質問】
 当社では、毎年4月1日を年休の基準日として社員全員分の年休を管理しています。先日、育児休業中の社員(4月16日復帰予定)から連絡があり、3月31日で消滅してしまう年休について取得したいとの申出がありました。確かに育児休業中は賃金が支払われませんので、消滅してしまう年休だけでも取得したいという気持ちは分かるのですが、これを与える必要はあるのでしょうか?


【回答】
 今回のケースでは、年休取得の申出は育児休業申出後であることから、この申出に応え、年休を与える必要はありません。年休の目的は労働義務がある日に対し、賃金等の補償をしつつもその日の労働義務を免除することにあります。育児休業期間についてはそもそも労働義務がない訳ですから、年休を与える必要はありません。ただし、育児休業申出前の段階で、育児休業期間中の日について時季指定や計画付与が行われた場合には、年休を取得したものと考えられ、賃金の支払義務が生じます。


【まとめ】
 育児をする社員にとって年休は非常にありがたいものです。だからこそトラブルになりやすい問題といえるでしょう。可能な限り、育児休業を取得する社員にはこうした取扱いについて事前に伝えておきたいものです。


[参考通達]
平成3年12月20日 基発第712号 ※一部抜粋
6 年次有給休暇
 年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はないこと。また、育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協力に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じるものであること。



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Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog「育児介護関連」
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参考リンク
財団法人21世紀職業事業財団「仕事と育児・介護との両立の支援」
http://www.jiwe.or.jp/ryoritsu/01_assist.html
独立行政法人労働政策研究・研修機構「ワーク・ライフ・バランス」
http://www.jil.go.jp/tokusyu/worklife/index.htm


(宮武貴美)


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