なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?退職理由6「労働条件についての問題」

 本日は「なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?」の連載の第7回をお届けしましょう。前回は職員の早期退職問題の7つの原因のうち、5つ目の患者(利用者)との関係についての問題を取り上げましたが、本日は6つ目の労働条件についての問題を解説したいと思います。



[職員の早期退職問題の7つの原因]
経営理念の浸透についての問題
職場の風土についての問題
組織のあり方についての問題
自分自身のキャリアアップについての問題
患者(利用者)との関係についての問題
労働条件についての問題
給与水準についての問題




 本日はこれらのうち、退職理由6「労働条件についての問題」について解説しましょう。
[退職の理由]
 隣の芝は青く見えるようで、働き始めて3年もすると自分の働いている施設の労働条件よりも近隣施設の労働条件や福利厚生などが良く見え、退職をしてしまう職員がいます。もちろん、実際に給与水準が極端に低かったり、その他のプラスαの処遇に差が生じていれば別ですが、通常は施設間の労働条件には大差があるものではありません。


 仮に自施設の給与水準よりも近隣のA法人の給与水準がやや高かったりしても、その後の昇給率や賞与支給額を考えると必ずしも差があるとはいえないこともあります。とはいえ、労働条件については職員にとって大きな関心事であることには変わりありませんので、少なくとも近隣の施設と遜色のない程度の労働条件の設定については、常に意識を払う必要があります。


[退職に繋がる主な原因例]
時間外労働や休日労働が非常に多い
年間の休日日数が少なく疲れが完全に取れない
年次有給休暇が十分に取得できない
時間外労働をした場合に割増賃金が支給されない
組織の統一的なルールとして明文化された就業規則が整備されていない 等


[定着に向けての回避策]
 職員を退職へと導かないために、労働条件は以下の3つのポイントで再検討する必要があります。
コンプライアンスを遵守する
 時間外労働に関する割増賃金の不支給等は、職員のモチベーションを低下させるのみでなく労働基準監督署による指導対象にもなります。労働基準監督署による指導を受ければ、過去に遡って最大2年分の割増賃金の支給が求められることがあり、不用意な支出により法人経営が不安定になることも懸念されます。そういった施設では、一部の業務がそもそも労働時間か否か判断が難しいことを理由に割増賃金を不支給としていることがありますが、これは労働時間の定義を明確にすることで問題の解決を行いたいものです。
パート職員を増やすなどして正職員の負担を軽減させる
 正職員の肉体的・精神的負担軽減のためにパート職員の採用を強化するなどの策を講じる必要があります。
労働条件は世間相場に合わせる
 極端に低い労働条件にならぬよう、賃金や年間休日数などについて、近隣施設とのバランスを取る必要があります。他の施設の情報は、ハローワーク(職業安定所)や各種求人誌から手に入れることができます。


 それでは次回は、退職理由7「給与水準についての問題」について取り上げます。



関連blog記事
2008年3月2日「なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?退職理由5「患者との関係」」
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2008年2月24日「なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?退職理由4「職員自身のキャリアアップ」」
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/archives/51263015.html

2008年1月19日「なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?退職理由3「組織のあり方」」
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2008年1月4日「なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?退職理由2「職場の風土」」
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/archives/51207562.html

2007年12月30日「なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?退職理由1「経営理念の浸透」」
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2007年12月10日「なぜ看護師・介護士は3年で辞めるのか?その1」
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(服部英治


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